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ダダイズム・中原中也の詩

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フリー画像素材 Free Images 1.0 by:inspire*dream*create* 様よりお借りしました。http://www.gatag.net/


今日は私の大好きな詩人中原中也の作品を紹介します。
中学の国語の教科書で初めて、中原中也の「北の海」を読んだのが中也との出会いでした。

その後、自分で中也の詩集を買って読みましたが、難しい言葉や表現が多くて
ほとんど理解できませんでしたが、「汚れつちまつた悲しみに……」や「骨」などは
その中で、とても印象的な詩でした。


 『汚れつちまつた悲しみに……』

汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる

汚れつちまつた悲しみは
たとへば狐の革裘(かはごろも)
汚れつちまつた悲しみは
小雪のかかつてちぢこまる

汚れつちまつた悲しみは
なにのぞむなくねがふなく
汚れつちまつた悲しみは
倦怠(けだい)のうちに死を夢む

汚れつちまつた悲しみに
いたいたしくも怖気(おぢけ)づき
汚れつちまつた悲しみに
なすところもなく日は暮れる……

   ― 中原中也詩集 「山羊の歌」より ―


  町田康×中原中也『汚れっちまった悲しみに』



 『 生ひ立ちの歌 』

I

    幼年時
私の上に降る雪は
真綿(まわた)のやうでありました

    少年時
私の上に降る雪は
霙(みぞれ)のやうでありました

    十七―十九
私の上に降る雪は
霰(あられ)のやうに散りました

    二十―二十二
私の上に降る雪は
雹(ひよう)であるかと思はれた

    二十三
私の上に降る雪は
ひどい吹雪とみえました

    二十四
私の上に降る雪は
いとしめやかになりました……

II

私の上に降る雪は
花びらのやうに降つてきます
薪(たきぎ)の燃える音もして
凍るみ空の黝(くろ)む頃

私の上に降る雪は
いとなよびかになつかしく
手を差伸べて降りました

私の上に降る雪は
熱い額に落ちもくる
涙のやうでありました

私の上に降る雪に
いとねんごろに感謝して、神様に
長生したいと祈りました

私の上に降る雪は
いと貞潔でありました


   ― 中原中也詩集 「山羊の歌」より ―


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中原中也(銀座・有賀写真館で撮影)

中原中也 (1907-1937) の生涯略歴

中原中也(なかはら ちゅうや)、1907年4月29日、山口県山口市湯田温泉に医師の子として生まれる。
1915年、 弟の亜郎が病死する。弟の死を歌ったのが最初の詩作だと、中也は後に書いている。
1923年、京都に出て長谷川泰子と知り合う。この頃からダダイストの詩を作り、1925年、泰子と共に上京する。
小林秀雄と交流、その後、小林秀雄に泰子を取られてしまい「悔しい男」になる。
それをバネ?に詩作に没頭。遠縁にあたる上野孝子と1933年に結婚して、翌年に長男文也が生まれる。
1936年、文也死去。子供の死にショックを受け、精神が不安定になる。
1937年10月22日、結核性脳膜炎のために死去。享年30歳。
中原中也は夭折したが350篇以上もの詩を残し、一部は、中也自身が編纂した詩集『山羊の歌』、『在りし日の歌』に収録されている。
訳詩では『ランボオ詩集』を出すなど、フランス人作家の翻訳もしている(他に少量だがアンドレ・ジイドほか)。
東京外国語学校(現在の東京外国語大学)専修科仏語部修了。

 『 骨 』

ホラホラ、これが僕の骨だ、
生きてゐた時の苦労にみちた
あのけがらはしい肉を破つて、
しらじらと雨に洗はれ、
ヌックと出た、骨の尖(さき)。

それは光沢もない、
ただいたづらにしらじらと、
雨を吸収する、
風に吹かれる、
幾分空を反映する。

生きてゐた時に、
これが食堂の雑踏の中に、
坐つてゐたこともある、
みつばのおしたしを食つたこともある、
と思へばなんとも可笑(をか)しい。

ホラホラ、これが僕の骨――
見てゐるのは僕? 可笑しなことだ。
霊魂はあとに残つて、
また骨の処にやつて来て、
見てゐるのかしら?

故郷(ふるさと)の小川のへりに、
半ばは枯れた草に立つて、
見てゐるのは、――僕?
恰度(ちやうど)立札ほどの高さに、
骨はしらじらととんがつてゐる。

   ― 中原中也詩集 「在りし日の歌」 ―


 『 北の海 』

海にゐるのは、
あれは人魚ではないのです。
海にゐるのは、
あれは、浪ばかり。

曇つた北海の空の下、
浪はところどころ歯をむいて、
空を呪(のろ)つてゐるのです。
いつはてるとも知れない呪。

海にゐるのは、
あれは人魚ではないのです。
海にゐるのは、
あれは、浪ばかり。

   ― 中原中也詩集 「在りし日の歌」 ―


 『 また来ん春…… 』

また来ん春と人は云ふ
しかし私は辛いのだ
春が来たつて何になろ
あの子が返つて来るぢやない

おもへば今年の五月には
おまへを抱いて動物園
象を見せても猫(にやあ)といひ
鳥を見せても猫(にやあ)だつた

最後に見せた鹿だけは
角によつぽど惹かれてか
何とも云はず 眺めてた

ほんにおまへもあの時は
此の世の光のたゞ中に
立つて眺めてゐたつけが……

   ― 中原中也詩集 「在りし日の歌」 ―




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by utakatarennka | 2013-10-07 06:58 | 創作自習室