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― Metamorphose ―

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詩集 瑠璃色の翅 ②

詩集 瑠璃色の翅 ②_a0216818_20091105.png


 【 流れ星 】

あ、
見上げた夜空に
流れ星が落ちていく
急いで願いごとを
心に描こうとしたら
瞬く間に消えていってしまった

ああ、
なんと儚い
あの彗星は何光年もかけて
宇宙を旅してきたのに
消える時は
あっという間だった

どんなに、
偉大なものでも
消え去る時には一瞬で
いっぺんの後悔も残さずに
存在のすべてを消去していく
そう潔くも哀しい

時として、
自然は人間たちに
大きな試練を与える
大地が揺らぎ海が牙を剥き襲った
多くの人命が奪われていった
地球にとって人間は
単なる消耗品でしかない

たとえば、
百人の人に非難されたとしても
無条件で自分を信じる者が
一人でもいれば
意思を曲げてはいけない
百人の敵より一人の味方の
愛に応えるべきだろう

結局、
自分を救えるのは
自分自身を信じる力だけ
それで十分
他人を救えると思う傲慢さが
人を傷つけてしまうから

だから、
一瞬で消える
流れ星に祈ったりはしない
自分の弱さを隠すために
人工の神に縋ったりもしない
私の神さまは私の中に

どうか、
自分を信じる力を――与えてください



 【 暗渠 】

地下に埋設された暗渠(あんきょ)の中には
一条の光も届かない
真っ暗闇の水路を
とうとうと水は流れていく

行くあても知らず
後ろから後ろから 押しだされて
暗渠の中を盲目的に進む水
ここから抜けだしたいと
水は叫ぶ
もっと光をください!

その暗渠は
かつては町を流れる小川であった

春になれば
川べりに植えられた桜の枝が散らす
薄桃色の花びらを浮かべて
ゆるやか流れていた

夏がくると
灼熱の太陽がギラギラ眩しい
水遊びをする子どもたちの歓声が聴こえ
小さな足と無邪気に戯れる

秋がくれば
幸せそうに肩を寄せ合う恋人たちが
川面にそっと笹舟を浮かべて
自分たちのゆく末を占っていた

冬になると
鉛色の天上から降ってくる
雪の妖精たちが優しく愛撫して
水の中に静かに溶けていった

小川にはメダカやタニシ
そんなものたちが
流れの中に息づいていたのだ

いつの間にか
地下に埋葬された小さな川
人々が歩く生活道路の下を
水が流れていることなんて
とっくの昔に忘れ去られていた

地上の汚物を呑み込んで
地下に押し流してくれている
暗渠の存在に誰も感謝などしない

反駁する余地もなく
卑しめられた暗渠の黒い水
それでも 閉塞した世界から
早く抜けだしたいと
光を求めて 求めて
水路の中を流れてゆく
やがて海へと押しだされた水
結局 そこしか出口がないのだ

光りが見えた瞬間に
暗渠の水は海水に交じった
それは解放ではなく
「融合」という名の消滅だった――



 【 オフェーリア 】

ナイフみたいな新月が
スカイの上で尖っていた

夜の帳は善も悪もなく
すべては欺瞞に充ちてくる

くしゃくしゃに丸めた紙切れ
書かれていた言葉は

 『 さ よ な ら 』

たった一言の決別だった
嗚呼 黒猫が横切っていくから

口に咥えたハートが
ぽろりと落ちて

闇の天蓋(てんがい)ふたりを包み
そのまま 魚のように眠る

ひたひたと 水に浸かっていく
白いオフェーリアの夢をみた

詩集 瑠璃色の翅 ②_a0216818_11443719.jpg

 【 デジャ・ヴ 】

水溜りに映った 贋物の太陽
掌を伸ばせば 掴めると思った空色の毛布
わたしのHPはどんどん下がってく
生温い脱力感で 目を瞑る

極楽鳥の歌 極彩色の夢 
オルゴールのネジを巻いたら 
それが合図 ふたりの心は奏で合う
リズムはアダージョ ゆるやかに繊細に

溺れた愛の深さに 心が溶けていく
それは甘いキスで 目覚めた昼下がり
あなたの胸でみた白昼夢
デジャ・ヴ反復するロンド



 【 pulse 】

ひらひらと
群青の夜空に舞う
暗闇の蝶――蛾。
揺蕩うように 揺らめくように
滲んだ月に 白い影が踊る

「今宵の闇は深く
 あなたの声も聴こえない」

女は
蒼い月影のランプで手元を照らし
光るノートにコトバを打ち込もうとする
それは形容詞たちに
命を吹き込む作業だった

夢幻の辞書の捲れば
そこにはまだ知らない
真理があるはず

コトバは祈りではない

数多の波動 この身に受けて
パルス 脈拍 身体を巡る血液が
律動的に変化する フォルティッシモ

ちらちらと
誘蛾燈(ゆうがとう)の灯りが煌めく
暗闇の蝶――蛾。
儚くも 激しくも
焔に翅を焼かれ 墜ちていく

「深層に投げ込まれた
 あなたの言葉が牙を剥く」

彼女は
星屑の鏡に己を映し
内なる宇宙と会話する
そこにはコトバにならなかった
インスパイアが漂っていた

深く瞑想すれば
きっと見えてくるはず
創作に終わりはない

新たな1頁を書きこもう

月の瞬き 群青の空を照らす
パルス 符号 進化する思想たち
ニュートリノは光より早く!

詩集 瑠璃色の翅 ②_a0216818_11451168.jpg



創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-06-20 11:20 | 詩集 瑠璃色の翅

by 泡沫恋歌