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石田君と僕らの日常 ⑧

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モノクロ・セピア色の壁紙サイズ画像・写真集♪ 様よりお借りしました。http://matome.naver.jp/odai/2127553413698372401


   default.8 【 スイーツまみれの石田君 】

 スイーツといえば、こいつ。僕の友人の石田君だ。
 何しろ無類の甘党で和菓子、洋菓子、どちらも大好物なのだ。たとえば主食がおはぎ、おかずがケーキ、汁はおしる粉、デザートはプリン、そんな食事が毎日続いてもヘーキなくらいスイーツまみれの男、それが石田君だから――。
 ケーキバイキングに石田君がいく度、ツレとしていつも同行させられるのが、この僕である。
 彼の「奢ってやる」という甘言につい乗せられて付いていってしまうのだが、ケーキが並ぶテーブルを睨んでバトルする女の子たちに混じって、ケーキ争奪戦に参戦するのはさすがに男として恥かしい。
 ケーキを前に興奮した女の子たちに、肘鉄を喰らわされ、突き飛ばされしながら、やっとケーキをゲットするのだ。
 ……だが石田君がケーキを取りにいくと、なぜか女の子たちは道を開けてくれる。
 まるでモーゼのように石田君の行く手を遮らないように、人が壁となって一本の道ができている。その中を悠然と歩み、聖者の風貌でシフォンケーキに手を伸ばす石田君は神々しいほどに美しい!
 何しろ石田君は、身長185センチ、細身で眉目秀麗、ストレートの長い髪を時々鬱陶しそうに掻きあげる仕草はまさに絵になるイケメンだ。それに比べて彼より20センチも背の低い僕は童顔で時々中学生に間違われる。
 ああ悔しいが、こんなところにも見た目の偏差値があるのだ!
 ケーキを食べる手を止めて、じっと石田君に見惚れている女の子もいる。カッコイイ男子がケーキを食べている、そのギャップに彼女たちは萌えるらしい。
 もし僕だったら「甘いの好きなの? お子ちゃまね」と鼻で笑われるだけなのに……。結局、世の中はイケメン中心に動いているのか? なにをやってもイケメンは絵になるから、イケメンってことだけで特別扱いなのかっ!
  ギリギリギリ……(歯ぎしりの音)

 そんな石田君にも二つの弱点がある。
 ひとつは偏頭痛、一週間の半分は頭痛に苦しんでいる。
 雨が降りそうな天気では気圧が下がって特にひどい、あまりの激痛に嘔吐することもあるらしい。そのせいで、いっつもムスッと不機嫌な顔の石田君だが、スイーツを前にした時だけは相好を崩す。
 ある時、偏頭痛に苦しむ石田君を見兼ねて、
「その偏頭痛の原因はスイーツの食べ過ぎにあるんじゃないの?」
 質問した僕に対して、石田君は「ない」とたった二文字で切り返した。
 たとえ、偏頭痛の原因がスイーツの食べ過ぎだったとしても、彼は絶対にスイーツを食べることをやめないだろう。
「砂糖の取り過ぎで虫歯にならない?」
「俺は一本も虫歯が無い!」
 白い歯を見せてニッと笑う石田君が、イケメン過ぎて……わけもなく腹が立った!

 弱点その二、女嫌い!
 とにかく女の子には全く興味を示さない男である。
 女の子たちに声を掛けられても、見事なガン無視。キャーキャー騒がれても「うるさい! あっちに行けっ!」と身も蓋もない塩対応だ。
「どうして、そんなに女の子が嫌いなのさ?」
 僕の質問に対して、「めんどくさい」と六文字で簡単に説明した。
「それよりも、セブンの新作スイーツの方が俺には興味がある。洋梨を使ったタルトに生クリームたっぷりの……」
 訊いてもいないのに、スイーツの講釈を垂れる石田君なのだ。どうやら脳みそもスイーツまみれになってるみたい。

 そんなある日、大学構内で石田君が珍しく女の子と二人で話しているところを見てしまった。
 しかも、その女の子から風呂敷に包んだプレゼントを受け取って、あの石田君がニコニコしているではないか。
 ま、まさか!? 女嫌いの石田君を笑顔にできるなんて……いったい彼女は何者なんだ!?
 あの石田君のハートを射止める女の子がいたなんて……これはただ事ではないぞっ!
 学生食堂にいた石田君を見つけて、さっそく話しかけた。
「さっき、女の子と話してたでしょう」
「ああ」
「石田君も隅に置けないなぁー、で、好きなの?」
「うん」
 平然と答えた。
「えっ、ええーっ? どんなところが?」
「真っ白で、ぽっちゃりして、柔らかいところが……」
「白くて、ふっくらして、柔らかい? ま、まさかオッパイが!?」
 清廉潔白だと信じていた石田君が、女の子とそんな関係だったとは……ある意味、女嫌いの石田君に安堵の念を抱いていただけに、僕にとってショックだった。
 まさか女の子とあんなことや、こんなことを……やっていたなんて……女嫌いの振りをして騙された! 石田君の嘘つきめぇ~
 いきなり185センチの男から、僕の髪の毛をワシャワシャされた。
「わ、わ、なにするんだ!?」
「おまえ、なに想像してんの?」
「だから、あの女の子とエ、エッ……チ?」
 笑いながら、石田君が風呂敷包みの中身を見せた。
 そこには真っ白でぽっちゃりした柔らかそうな大福もちがギッシリ詰まっていた。
「あの子は和菓子屋の娘で頼んでいた大福もちを受け取っただけ」
 あははっ……やっぱり、そういうことか。
 女嫌いの石田君がスイーツ以外に興味を示す筈がない……か。うんうん、それなら納得だよ。ああ、僕の思い描く石田像がブレなくて安心した。
「おまえがいるのに、女の子なんか相手にするもんか」
 「なにそれ? その言動怖いんですが!?」
 僕はBLなんか興味ないから! ノーマルヒューマンだからっ!!
「まあ、大福でも食え!」
 呆れた僕の口に大福もちが押し込まれた。
 じんわりと餡子の甘さが口の中に広がる、ホッとするこの美味しさ! なんだかスイーツな気分になった。
 結局のところ、石田君のハートを射止めたのは、この大福もちだった。




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   創作小説・詩
by utakatarennka | 2017-05-06 20:56 | 現代小説