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2017年 11月 07日 ( 1 )

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   第103話 Q :ネトゲに出会いを求めるのは間違っているのか?

週末になると僕のスマホにLINEが送られてくる。

ロキ:『お腹すいたー!
    ご飯おごって~!!』

僕のことをお財布携帯だと思ってる奴がいるのだ。

ヒミコ:『給料もらったばかりだから
     焼肉食べ放題くわせてやる』
ロキ:『やった―――!!
    焼き肉イェーイ!!』

そして待ち合わせて、焼肉店へ行くのだ。
「マトモなご飯食べるの久しぶりだよん」
僕にばかり肉を焼かせて、口いっぱいに肉を頬張り、あいつは食べるのに必死だった。
「じゃあ、一週間ぶりのたんぱく質か?」
「うんうん」
先週も僕の奢りで回転ずしを食べた。どういうわけか、週末の飯は僕の奢りと決まってしまっている。
金がない時、あいつはポップコーンの大袋を買って、それを三日に分けて食べるという、悲惨な食生活を送っている。
「なあ、ちったーマトモな食事もしろよ。おまえだって働いてるんだろう?」
「今週はガチャを回し過ぎてお金がない」
「そういえば、新しいアイテムガチャ出たもんなあー。課金もほどほどにしとけ」
あいつは重課金者だ。ネトゲの餌食にされてることに、いい加減気づいて欲しいと僕は思っているのだが……。
「働いた金をリアルで使う気ないもん」
本人はネト充生活を捨てる気などさらさらない。
リアルを捨てて、バーチャルに生きる、あいつのことが危なっかしくて、放って置けない僕がいる。

Q :ネトゲに出会いを求めるのは間違っているだろうか?
 
あいつと知り合ったのは、とあるSNSのソーシャルゲームだった。
ネトゲ初心者の僕はダンジョンで敵にボコボコにやられていた。そこを何度も助けてくれたのが勇者ロキだった。
高いレベルとハイスペックの装備、ネトゲではまさに憧れの勇者だった。あいつのギルドに入れてもらい、僕はヒーラーとして後方支援にあたっていた。
その内、ネトゲの世界で親しくなった僕らは結婚した! といっても、ネトゲの夫婦でいわゆる“ネトゲの嫁”に、この僕がなったわけだが――。
実は僕のHNはヒミコ、女性アバターのネカマなのだ。あいつは勇者ロキという男性アバターだったので、リアルのオフ会までお互いの性別を勘違いしていた。
なんと、勇者ロキは女性だった! 男女逆転は当たり前? これがネットの怖ろしいところだ。
ネットでは夫婦だが、リアルでは違う。僕らは恋人同士でもないし……ただのお財布携帯な、この僕だ。
週末に待ち合わせて飯を食って、ネカフェで行って、ネトゲするのがお決まりのコースだった。
こういうパターンにも、なんだか飽きてきた。
「なあ、たまにはデートらしいことしない?」
「えっ?」
網に貼り付いた肉をはがしながら、あいつが驚いたようにこっちを見た。
「デ、デートとかしたことないし……」
急に頬を赤らめて答える。ネットの人にはリアルでの耐性がないのだろう。
「ふたりでさ、待ち合わせて、映画を観て、食事をして……その後はホテルでラブラブな時間を過ごすとか……」
「却下!!」
僕の提案をあいつに却下された。
「なんでだよ?」
「だって、ヒミコとはネトゲのダンジョンでいつもデートしてるもん」
「……といっても、リアルでもカップルらしくしたい」

Q :ネトゲに出会いを求めるのは間違っているのか? 

オフ会で初めてロキを見たとき、可愛いいと思った。化粧っ気もないし、服装も地味だったけど、ちゃんとすればそれなりにイケルと思ったんだ。それでLINEのアドレスを訊いて、週末だけだけど、こうやって会うこともできた。
僕としてはネトゲの世界だけでは物足りない、リアルでも一歩先に進みたいのだ。
しかしリアルで会うようになってから半年、まったく進展がなく、あいつのことを何もしらない。知ってることといえば、LINEアドレスとフリーターをしながら、独り暮らしをしていること、年齢は僕より三つ上ということくらい、リアルでもHNで呼び合う仲なのだ。
「おまえは僕のことが嫌い?」
「ううん。そんなことない!」
「ネトゲの方が大事なくせに……。僕が残業でインできない時もおまえ一人でボス部屋で戦ってるじゃないか?」
「勇者ロキはネトゲの嫁ヒミコを守るために強くならなければならないのだ。そのためのミッションなのだ!」
「ネトゲの嫁っていっても、リアルの僕は男だよ」
「ヒミコは一番大事な勇者ロキの嫁だもん!」
あいつの頭ん中は100%ネット脳だった。
「そ、それより、ガチャでレアなエフェクト取れたからプレゼントするね」
「僕のためにいっぱいガチャ回したのか?」
「だって、ヒミコとロキでお揃いのアバターにしたかったんだもん」
働いた金でウエブマネーを買い、惜し気もなくガチャを回すあいつ……毎月、何万円使っているのやら? ウエブマネーだって元は現金なんだ、週末に食事を奢るのぐらい、こっちの方がずっと安いくらいだ。
あいつはネトゲやってる時が一番幸せだといってたなあー。
高校時代にイジメられて、就活にも失敗した、あいつの心の拠りどころはネトゲだけ、たぶん、現実を受け入れたくないのだろう。
僕だって、残業の多い、男ばかりの職場で出会いなんてない。もちろん週末にデートする相手もいなかった。
若者たちにとって、リアルの社会では、低賃金、長時間の労働、雇用は安定せず、結婚しても妻子を養っていける自信が持てない。
金もない、時間もない、将来への希望もない。ネトゲがなかったら、僕らの逃げ場なんて何処にもなかった。
僕らはバーチャルで出会い、お互いを求め合った、もうそれだけで十分なんだ。
――ここまで話して分かったことだが、これが僕らの愛の形だということ。

Q :ネトゲに出会いを求めるのは間違っているのか? 

A :いや、別にいいんじゃないの。
ダンジョンだって、ふたりで行けばデートなんだし――。
それであいつが幸せならば、もう少し、こんな関係を続けていってもいいなあと思った。
ネト充からリア充になるための、これが僕のミッションなのだ。



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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-11-07 15:54 | 夢想家のショートストーリー集