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カテゴリ:メルヘン( 28 )

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2013年の1月から、若者向けの携帯小説サイト
魔法のiらんどで作品を書き始めました。
猫カフェ『にゃんこの館』は、そこで連載しています。

携帯小説なので一文が短く、行間が広くなってます。
その為に文字フォントを大きくして掲載しました。


     【 魔法のiらんど 】

    


 Youtubeでご覧になれます

猫カフェ 『にゃんこの館』
〔前編〕
猫カフェ 『にゃんこの館』
〔後編〕





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 【 派遣にゃんこ ② 】

ある日、お手伝いさんが猫の砂を替えに部屋に入ってきた。

うっかりドアを閉めるのを忘れた隙にイワンは飛び出した。
広い屋敷の中を走り抜けた、あっちこっち出口を探しまわった。


一階の開け放した窓の網戸を破って、
やっと外に出ることができた。

――が、そこからが問題だった。

屋敷の庭に出たが、周りは高い塀が張り巡らされていた。

猫カフェ『にゃんこの館』へ帰りたくとも、
どっちへ行けばいいのか皆目見当がつかなかった。

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――ああ、家猫の哀しさよ。

すぐに見つかるのも悔しいので、
イワンは庭の植え込みの中にじっと隠れていた。

「ロアン! いつ帰ったの?」

背後から声が飛んできた。
振り向くと、背中はキジトラでお腹は真っ白な
牝猫がのぞき込んでいます。

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「俺の名前はイワンだ。あんた誰?」

「あら、ロアンじゃないの? そっくりだから間違えたわ」
牝猫はイワンを上から下までジロジロ見て、

「そうね。ガキっぽいからアンタはロアンじゃない」

フン! とイワンは鼻を鳴らした。

「アタシの名前はユメよ」

その牝猫は半野良のユメというオバサン猫でした。
時々、お屋敷の庭に侵入して、

ここの飼い猫ロアンという十七歳になる
おじいさん猫と遊んでいたということでした。

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「そのロアンって、行方不明の猫のことか?」

「そうよ。ここにロアンが居るわけないわ。
だって……アタシにお別れの挨拶をして、
一匹で旅立ったんだもの」

「へぇー、そいつ脱走したんだ?」

「そんなんじゃないわ! 
ロアンは大好きな飼い主の願いを叶えるために
危険な旅をしているの」

ユメは怒ったように言い返した。

「危険な旅って……?」

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「アンタは家猫だから知らないだろうけど、
外の世界には車って怪物が走っているのよ。

いたずらっ子にいじめられたり、
他所の縄張りに入ったらボス猫に追いかけられたり、
ホントに命懸けなんだから……」

そんなことは何も知らない世間知らずのイワンでした。

けれど、冒険に憧れるイワンはユメにそう言われて
よけいに外に飛び出してみたくなってきたのです。

「俺、仲間の所へ帰りたいんだ。出口を教えろ!」

「ダメ、ダメ! 車に轢かれて死んじゃうのがオチだよ」


『見つかったぞぉ―――!!』


大声で叫ぶ声が聴こえた。

あれ? 俺はここにいるよ。
不思議に思った二匹は声のする方に走って行ったら、
一匹のロシアンブルーが倒れていました。

「ロアン!?」

ユメが名前を叫んだ。

その猫は体中傷だらけで痩せ細って、
虫の息だったが、コクリと頷き気を失った。

その口に何か咥えられていた、それは桜貝だった。

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「ロアン、海に行ったんだね。
飼い主が死ぬ前に見たいと言ってた、遠い海に行ってこれたんだね。
こんなに……ボロボロになって、あんたは偉いよ」

ユメはロアンの側で号泣した。
イワンはそのまま捕獲された。


その夜、老人と愛猫は一緒に天国に召されました。

病気で行けない飼い主に代わって、海を見てきた猫は、
きっと天国で海の話をおじいさんにしていることでしょう。

大好きなおじいさんに抱かれたロアンの
嬉しそうな顔が目に浮かぶようです。

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そして、お役御免になったイワンも
みんなの待つ、猫カフェ『にゃんこの館』へ還された。


久しぶりに帰ってきたイワンの元に
スタッフのにゃんこたちが集まってきました。

いたずらっ子イワンがいなかったせいで
猫カフェ『にゃんこの館』』は、

静か過ぎて……

まるで火が消えたみたいだったのです。

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仲良しの牝猫ハルカが小さな声で、

「イワンが居ないと寂しかった……」

と言ったので、嬉しくて、テレ臭くて、
思わず、猫パンチしてしまったら、

10倍返しでボコボコにされた。

相手がいないとケンカもできなぁー。
あはは……


狭くて、騒がしくて、猫がいっぱいいるけど
みんなと一緒に食べるご飯は美味しい!

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やっぱり、ここが俺の居場所なんだと
イワンはつくづくそう思った。

独りぼっちになって、初めて分かった
仲間たちとの深い絆だった。




猫カフェ『にゃんこの館』、ここが俺のマイホームだ―――!!


― おしまい ―





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創作小説・詩
by utakatarennka | 2015-01-10 12:06 | メルヘン
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2013年の1月から、若者向けの携帯小説サイト
魔法のiらんどで作品を書き始めました。
猫カフェ『にゃんこの館』は、そこで連載しています。

携帯小説なので一文が短く、行間が広くなってます。
その為に文字フォントを大きくして掲載しました。


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猫カフェ 『にゃんこの館』
〔前編〕
猫カフェ 『にゃんこの館』
〔後編〕





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 【 派遣にゃんこ ① 】

三丁目にある猫カフェ『にゃんこの館』に派遣の仕事が回ってきた。
その白羽の矢はなんとロシアンブルーのイワンに刺さった。

あるお金持ちの屋敷で飼われていた
ロシアンブルーが行方不明になっている。

飼い主の老人は重病で余命幾ばくもない、
愛猫がいなくなったことに気づいたら、
おそらくショックで亡くなってしまうかもしれない。

心配した家族がお祖父さんのために
愛猫の身代りを演じて欲しい。

いわゆる影武者(影猫)として、
同じロシアンブルーで毛並もそっくりな
イワンにその役が回ってきたのだ。

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――その話に、イワンは大喜びだった!

物心ついた時から
猫カフェ『にゃんこの館』しか知らなかったので、
外の世界に憧れていた。
これから自分の身に起きるかもしれない事件を
あれこれ想像して、冒険心でわくわくでした。


ついに、黒い高級車が猫カフェ『にゃんこの館』に迎えにきた。

仲間の猫たちに別れを告げ、イワンは意気揚々と
ペットキャリーに入って、何処ともなく連れて行かれた。

イワンが着いた所は大きなお屋敷だった。

ガラス張りの広い猫部屋に入れられた。
そこにはキャットタワーやキャットベッド、猫トイレ、
豪華なキャットフードが置いてあった。

今までみたいに『にゃんこの館』の仲間たちと争わなくても、
ぜんぶイワンの一人の物、まるで[王様]にでもなった気分だ。

初めの数日間は快適な暮らしだと思った。
広いお部屋でのうのうとして居られるし、ご飯は毎日、高級猫缶ばかり、
みんな気を使って
チヤホヤしてくれるしのでイワンは大満足だった。

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けれど慣れてくると、段々と退屈になってきた。

見える風景は隣の部屋でベッドに横たわる老人の姿、
何本も体にチューブを通されて今にも死にそうだった。
痛々しいその姿で病人が、時々、イワンの方を見て
弱々しく微笑むが……陰気臭くて気が滅入ってくる。

ここにはケンカする相手もいないし、
イタズラを仕掛ける相手もいない。


ああ、ツマンナイ! ここは俺の居場所じゃないんだ!!

みんなと別れて、独りぼっちになることが
こんなにツライことだと思わなかった。

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ホームシックにかかったイワンは、
猫カフェ『にゃんこの館』へ無性に帰りたくなった。

そして逃げ出すチャンスをうかがっていた。




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創作小説・詩
by utakatarennka | 2015-01-09 10:20 | メルヘン
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2013年の1月から、若者向けの携帯小説サイト
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猫カフェ 『にゃんこの館』
〔前編〕
猫カフェ 『にゃんこの館』
〔後編〕





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 【 仔猫ころころ ② 】

仔猫たちが里親に引き取られる件は、
フロアーマネージャーのミーコさんを通して、
スタッフ全員の周知となりました。

天使のような仔猫たちが気に入っていたので、
みんなガッカリして……。

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特にマリリンは仔猫たちへの愛情が深く、
ショックのあまり餌も食べずにションボリしています。

果たして仔猫たちが大事に育てて貰えるだろうか?

引き取られる先のお客の様子を知っているだけに不安が募ります。

――いっぺんにお店の空気が重くなりました。


そんな中、蘭子が叫んだ。

「アタシたちが仔猫を守るんだ!」

「そうだ! 仔猫は渡さないぞ!」


にゃん太も気炎を吐いた。

その意見にスタッフ全員が大賛成しました。


ミーコさんを通してオーナーの美弥さんに、
みんなの意見が届けられました。

猫カフェ『にゃんこの館』のスタッフは仔猫たちの餌代を稼ぐために、
全員で毎日一時間サービス残業をやることに決めたのです。
そしてお客様獲得にいっそう営業努力をすることを条件に、
仔猫の引き渡しを全員が[拒否]したのです。

にゃんこたちの熱い思いに美弥さんは感動しました。

正直、あの女性に渡すのは相当不安だったので、
やっぱり断わろうと決心しました。
……しかし、仮に断わるにしても、やはり理由が要ります。


翌日、仔猫の引き取りにきた女性に、
一応、仔猫たちを飼う環境について質問してみました。

女性の話では、住宅はワンルームマンションでペット不可。
夕方から深夜にかけて水商売をしているので留守、
また外泊も多いとのこと。
自分以外にも不特定の同居人がいるが動物には興味はなさそう。


……ということでした。

この女性の話を訊いて、美弥さんは呆れ返ってしまいました。
猫を飼うための飼育条件があまりに劣悪過ぎるからです。

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キッパリと美弥さんは仔猫の引き渡しを断わりました。

それに対して、
「約束が違う!」とか、「猫餌も買ったのにどうしてくれる?」と、
散々ごねて、大声で喚き立てます。

結局、美弥さんから迷惑料として一万円をせしめて、
それでやっと帰って貰ったのでした。


噂では彼女のブログに、猫カフェ『にゃんこの館』誹謗中傷
散々書かれていたようです。

それに対して同意するコメントや「イイね」もたくさん入っていましたが、
しょせんネットは一方通行の発信ですから……

美弥さんは気にしない!

お店の評判を落としても、
仔猫たちをヒステリー女から守ったことに今は安堵しています。
納得できる飼い主にしか絶対に渡さないと、美弥さんは決意しました。

スタッフたちも猫たちのことを一番に考えてくれるオーナーには感謝です。

どんな悪評が立っても、スタッフのサービスで、そんなものは跳ね返してみせる。

「今日も張り切っていこう!」

にゃん太の掛け声でスタッフ全員に気合が入ります。

猫カフェ『にゃんこの館』では、
猫と触れ合いたいお客様をにゃんこスタッフ一同、

心よりお待ちしております。


― おしまい ―





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創作小説・詩
by utakatarennka | 2014-06-19 06:20 | メルヘン
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猫カフェ 『にゃんこの館』
〔前編〕
猫カフェ 『にゃんこの館』
〔後編〕





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 【 仔猫ころころ ① 】

猫カフェ『にゃんこの館』にいる、
アメリカンショートヘアーの三匹の仔猫たち。

床の上を石ころのように転がりまわって元気よく遊ぶ、
その可愛らしいしぐさで、みんなを魅了しています。

仔猫というのは期間限定のエンジェルだから、
その姿に癒されたくて、来店するお客様もたくさんいるようです。

仔猫の兄弟は
一番大きい子と一番小さい子が女の子で、真ん中が男の子です。

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――この三匹の仔猫たちには名前がありません。

なぜなら、猫カフェ『にゃんこの館』スタッフではないので、
名前を付けると『情がうつる』から付けていないのです。

オーナーの美弥さんが、ある事情で仔猫たちを預かっています。

実は、この子たちの母猫が授乳中に原因不明の
【猫の突然死】で逝ってしまい、
世話をみる者がいなくなってしまったのです。

猫には心筋症という病気が多く、
今まで全く症状が出なかったのに、
ある日突然、発作が起こり、亡くなることがあります。

飼い主だった女性は、
初めて愛猫に出産をさせて五匹の仔猫が生まれましたが、
そのせいで母猫の体力が消耗して突然死したと思い込み、
罪の意識から泣いてばかりで、
残った仔猫たちの世話もできない状態でした。

五匹の仔猫の内、
二匹は貰い手があって他所に引き取られましたが、
三匹の引き取り手が見つからなくて、
猫カフェ『にゃんこの館』に連れて来られたのです。

しかも、猫カフェに預ける時に、

「飼いたい人がいたら、どうぞあげてください」

と、その飼い主は言いました。


仔猫を見るのもツライと、
人に預けてしまう飼い主の無責任さが、
美弥さんには理解できません。

「この子たちに罪はないのに……」

無邪気に遊ぶ仔猫たちを見ていると、
親を亡くし飼い主に身捨てられた、この子たちが憐れだ。

美弥さんは玄関にある
ホワイトボードのスタッフたちの写真の下に
『仔猫の里親募集』の張り紙を付けました。
スタッフでない仔猫たちを餌代を貰って預かっているだけ、
良い里親が見つかることを願うばかり――。


猫カフェ『にゃんこの館』のスタッフたちも
この小さな天使たちを歓迎していました。

気の強いキジ猫の蘭子も仔猫には優しく接しているし、
お嬢さま猫のシャネルやキレると怖いハルカも世話を焼いたりして、
牡猫たちは人気ナンバーワンのにゃん太やおじさん猫のバロンも
みんな温かい目で見守っています。

黒猫のクーは仔猫に交じって、一緒に遊んでいたりします。

仔猫たちは、猫カフェ『にゃんこの館』のアイドルなのです。
お陰で猫同士のトラブルも減って、和やかな雰囲気になりました。


バーマンのマリリンはビルマ(ミャンマー)産の高価な牝猫なので、
何度も出産経験があります。

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子を産めなくなったため、ブリーダーの飼い主に捨てられて、
猫カフェ『にゃんこの館』のスタッフになりました。

マリリンは自分から仔猫たちのトイレの躾や毛つくろいを嬉々してやっています。

きっと母猫の『母性本能』が目覚めたのでしょう。

そんなある日、『仔猫の里親募集』の張り紙を見て、
仔猫が欲しいというお客様がありました。

若い女性で、ここにも度々来店してくれますが、
猫スタッフの写真を撮るために寝ている子を起こしたり、
しつこく追い回したりする迷惑なお客なのです。

格好も派手で香水の匂いがプンプン強いので、猫たちには倦厭されいます。

彼女は自分のブログに仔猫たちの写真を載せて、
人気のブロガーになって、
SNSで「イイね」やコメント、閲覧数がいっぱい欲しいのです。

「明日、仔猫を引き取りにくるからよろしく~♪」

単に仔猫の可愛い姿に惹かれて欲しがっているようにしか見えない。
こんな人に渡すのは不安でしたが……ここのスタッフではなく、
飼い主さんも誰でもいいからあげて欲しいとの希望なので……。

――仕方なく、美弥さんは承諾しました。





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創作小説・詩
by utakatarennka | 2014-06-18 11:14 | メルヘン
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猫カフェ 『にゃんこの館』
〔前編〕
猫カフェ 『にゃんこの館』
〔後編〕





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 【 芸人にゃんこ ③ 】

今や、にゃん太は
猫カフェ『にゃんこの館』では
不動の人気者スタッフとなり
毎月のアンケート結果で貰える
特別ボーナスのツナ缶10個を
ミーコさんに頼んで、オーナーの美弥さんに
貯金いや、『貯缶』して貰っています。

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なぜ、にゃん太は自分で食べないで、
ツナ缶を貯めて置くのかというと
いつか母猫のタマが見つかったら
貯まったツナ缶で人間に養って貰うためなのです。

親孝行のにゃん太は
母猫タマのことをいつも思っています。


そして、貯缶ツナはもう100個以上は
溜まった頃でしょうか、
猫カフェ『にゃんこの館』
新しいスタッフとして
キジ猫の蘭子がやってきました。

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元、野良猫だった蘭子は
かなり苦労してきたようで
来た頃には、相当荒れていました。

同じ日本猫同士で
にゃん太は蘭子に近親感が湧いたし
野良猫の暮らしも聴きたいので
いろいろ世話を焼いてあげました。

しかし蘭子の方は
にゃん太の人間に媚びた営業方法に対して、

「アンタ、猫のくせに
犬のマネなんかして、恥かしくないの!?」


辛辣な意見です。

「君は君のスタンスでやればいいさ、
俺には俺のやり方があるんだから
よけいな口出ししないでくれ!」


何度もケンカになったことがあります。

「フン! 猫のプライド捨てたの?
アタシは野良だったけど、猫としての
プライドは捨ててないわよ!」

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猫のプライドってなんだ?

俺には、それがないというのか……
にゃん太にはその言葉の意味が分かりません。

しかし、芸人猫としての矜持は
ちゃんと持っています。

 『お客さんを喜ばせること。楽しんで貰うこと!』

いつも、そういう気構えで、
猫カフェ『にゃんこの館』のスタッフとして
にゃん太は働いているのです。

『野良猫の魂は捨てない!』

それが蘭子の拘りだったのです。

仔猫だった蘭子は、
保健所の“ 殺処分 ”ギリギリで助かった
幸運な野良猫だったのです。

“ 殺処分!? ”

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初めて、そんな言葉を聴いて
にゃん太は凍りつきました!

もしかして……
母猫のタマも“ 殺処分 ”になっていないだろうか?
タマのことが心配で、心配で堪りません。


――そんなある日のことでした。

ミーコさんが新聞の切り抜きを持って
にゃん太の所へやってきました。

「にゃん太、この人間と猫は知り合いじゃない?」

新聞を見ると、
なんと! 母猫のタマとおじいさんが
一緒に写っている写真ではないか!?
ずいぶん痩せているけれど……
間違いなく、1年前に別れた母猫のタマです。

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「ミーコさん、これは……」

「美弥さんが、にゃん太をここに連れてきた
おじいさんだから、この猫に見覚えがないか
聴いてきてと言われたのよ」

「この茶トラは俺のかあさんだ!」

感動のあまり、にゃん太は涙が零れました。


新聞の記事にはこう書いてありました。

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   捨てた飼い主に猫が恩返し!

○○時計店の店主、●●留造さん(78歳)が
自宅の風呂場で倒れていたのを、元飼い猫だった
茶トラの牝猫が発見して、窓辺で大声で鳴いたり、
網戸を破るなどして、異変を近所の住人に知らせた。
留造さん宅では犬も飼っていたが、侵入者ではないので
気付かずに寝ていたようである。
この猫はタマと呼ばれて、1年ほど前に捨てたが
最近、ここらに戻って来ていたということだ。
捨てた飼い主の命を救うとは、感心な猫だと近所では
評判になって折り、留造さんは、
「一度捨てた猫が命を救ってくれた。もう二度と捨てない」
と涙ながらに語っていたという。


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ミーコさんから、こういう新聞記事の内容だと
にゃん太は丁寧に説明を受けた。


良かった! 
かあさんは生きていて、しかも人間の役に立って
また、おじいさんに飼って貰えるんだ。

にゃん太は、ミーコさんに
おじいさんの家は貧しいので
今まで貯めたツナ缶を母猫のタマの元に
美弥さんから届けて欲しいと頼んだ。

「ファンからのプレゼントだと伝えてくれ……」

「いいえ、私も一緒についていって
これは孝行息子にゃん太から贈り物ですと
タマさんにちゃんと話すわよ」


「ミーコさん……」
その後はにゃん太は涙で何も言えなかった。


二人の話をそっと窓辺で聴いていた
蘭子は“ 殺処分 ”になった自分の母猫を
思って、静かに泣いていました。

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にゃん太が芸人猫になった
本当の理由を知って、ヒドイことを言ったもんだと
蘭子はつくづく後悔した。

「ミーコさん、これからも芸人猫として俺は、
かあさんへ仕送りのツナ缶を送るために頑張るぞ!」

「ああ、頼んだよ!」

にゃん太は新たな目標ができて大張り切りです。

そして、今日も
猫カフェ『にゃんこの館』

「人気ナンバー1」スタッフのにゃん太は


 『お客さんを喜ばせること。楽しんで貰うこと!』

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それをモットーに、さらに芸を磨いているのです。


― おしまい ―





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創作小説・詩
by utakatarennka | 2014-05-07 08:19 | メルヘン
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猫カフェ 『にゃんこの館』
〔前編〕
猫カフェ 『にゃんこの館』
〔後編〕





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 【 芸人にゃんこ ② 】

猫カフェ『にゃんこの館』
働くようになり寝る場所も食べ物も
不自由しなくなった、にゃん太ですが……

いつも胸の中で思っていたのは
一緒に捨てられそうだった母猫のタマのことです。

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寒い日には震えていないだろうか
お腹を空かせていないだろうか
心配で胸を痛めていました。


いつか、かあさんを救いだしたい!

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すっかり、『にゃんこの館』の暮らしに
慣れた頃、にゃん太はあることに
ふと気付いたのです。

自分とミーコさん以外は
ここのスタッフは外国の猫だということに……

 ホワイトペルシャのシャネル
 スコティッシュフォールドのバロン
 アビシニアンのナイル
 バーマンのマリリン
 マンチカンのハルカ


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血統書つきの高価な猫たちで、
毛並もフワフワしてとてもきれいなのです。
ただ居るだけで絵になる、その存在感!

ごく普通の茶トラのにゃん太には
とても太刀打ちできません。

「猫は芸がない。人間の役に立たない」

おじいさんの言葉を思い出しました。

もしも、猫カフェ『にゃんこの館』
ぜんぜん人気がなくて
お客さんにも相手にされない
役に立たないスタッフだったら……

また捨てられるかも知れない!

そんな脅迫観念に脅えました。

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芸ってなんだろう?
この俺にもできるのかなあ~?

その時、柴犬のロンがおじいさんと

「お手!」「お代わり」「チンチン」


とか、やっていたのを思い出したのです。

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犬みたいに俺にも芸ができて
人気が出たら、お店の役に立つから
もう二度と棄てられないはずだ。

やってやる!

犬みたいに芸のできる猫に
俺はなるんだ!!


その日からにゃん太は
「お手!」「お代わり」「チンチン」
などの練習を懸命に始めました。

閉店後も、鏡の前でいろんなポーズを研究して
お客さまに受けようと、猫一倍努力をしたのです。

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その成果で、
猫カフェ『にゃんこの館』には犬みたいな
芸のできる利口な猫ちゃんがいるわよ。

お客さんの口コミで有名になり、
にゃん太を目当てのリピーター客も多く
テレビ局からも取材がくるほどになりました。

毎月のお客様アンケート、
「一番お気に入りのスタッフを教えてください」
では、たくさんの票を集めました。

そして人気順位は、

 1位 にゃん太
 
 2位 ナイル
 3位 ハルカ


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ついに、にゃん太は
猫カフェ『にゃんこの館』

「人気ナンバー1」スタッフになった!!





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創作小説・詩
by utakatarennka | 2014-05-05 17:26 | メルヘン
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猫カフェ 『にゃんこの館』
〔前編〕
猫カフェ 『にゃんこの館』
〔後編〕





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 【 芸人にゃんこ ① 】

猫カフェ『にゃんこの館』

ナンバーワン・スタップのにゃん太は

日夜、自分の芸を磨いている

にゃん太の飽くなき探究心は

いったい何処からくるのだろう?

*


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にゃん太は仔猫の頃
母猫のタマと小さな時計屋さんで
飼われていました。

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その時計屋さんは
老夫婦が細々とやっているお店で
七十歳を超えた、おじいさんが時計の修理して
家計を立てている貧しい家でした。

それなのに、この家では
にゃん太親子の他に、柴犬のロンも
一緒に飼われています。

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――というのも、
おじいさんは『犬派』
おばあさんが『猫派』だからです。

日頃からおじいさんは
「猫は芸がない。人間の役に立たない」
と、文句を言います。

けれど、おばあさんは
「猫は芸がないけれど、見ていると心が和む」
と、言い返します。

ところが、ある日
お店の玄関の鍵を壊して、
ショーケースの時計を盗もうと
泥棒が入ってきました。

不審な侵入者に気がついた
柴犬のロンが大きな声で吠えて、
家族に知らせたので
泥棒は何も盗らずに逃げていきました。

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それ以来、おじいさんは
柴犬のロンをとても大事にして、
猫の親子には辛く当たるようになりました。

「この役立たずめ!」

おばあさんの見ていない場所で
タマは何度もおじいさんに
蹴飛ばされました。

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どんなに邪険にされても
タマ親子にはおばあさんがついています。

おじいさんに内緒でおやつに
煮干しや竹輪を食べさせてくれました。

「猫は役に立たなくてもいいんだよ」

そう言って、いつもニコニコ笑っていました。

優しいおばあさんのお陰でタマ親子は
この家で暮らすことができたのです。

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それが……
ある寒い冬の朝のことです。
いつもなら起きて、タマ親子に餌をくれる
おばあさんが、いつまで経っても起きてきません。

おじいさんが様子を見に行ってみたら……
おばあさんは布団の中で冷たくなっていたのです。
真夜中に心臓発作を起こして帰らぬ人となりました。

家の中でおじいさんがおばあさんの名前を
呼んで悲観にくれています。
生きてる時はケンカばかりしていたのに
いざ、相手が亡くなると……
寂しくて堪らないものなのです。

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お葬式やらで、家の中が忙しく
タマ親子の存在は忘れられて
餌が貰えない日々が続きました。

にゃん太はタマのおっぱいがあるので
平気ですが、タマは見る見る痩せていきます。

おじいさんが出掛けている間のことですが、
台所の戸棚から、煮干しの袋が見えました。
空腹に耐えられず、
タマは煮干しの袋を引っ張り出して
勝手に食べてしまいました。

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外出から帰ったおじいさんは
台所に散らばった煮干しを見て大激怒!

「この泥棒猫め!!」

タマとにゃん太は段ボールの箱に入れられて
自転車の荷台に乗せられてどこかへ
連れて行かれようとしています。

段ボールの箱の中で親子は
不安に慄いています。

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「かあさん、僕らはどこへ行くの?」
「分からない。どこかへ捨てに行くんだと思う」
「捨てられたら……ご飯は誰がくれるの?」
「野良になったら自分で生きて行くしかないんだよ」
「そんなの嫌だよぉー」
「猫は何も役に立たないから簡単に捨てられてしまう」
そう言って、タマは深いため息を漏らした。

「僕、怖いよぉ~」
仔猫のにゃん太は鳴きだした。

自転車をペダルを漕いでいたおじいさんは
ある建物の前で足が止まりました。

看板に、

 『猫カフェ・にゃんこの館』

と書いてあります。

そういえば、ばあさんが隣の町に
『猫カフェ』とかいう、妙なお店ができたと言ってたなぁ~
ここなら、仔猫くらいは貰ってもらえるかも知れん。
そう思い立って、段ボールからにゃん太を掴んで
おじいさんはお店へ入って行きました。

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階段を上がると、猫の形のプレートに
『welcome』と書いてありました。
中に入ると受付カウンターがあり、女の人が一人居ます。

「この仔猫は要らんので、
お宅で飼ってくれや! 名前はにゃん太だ!」


それだけ言って、受付カウンターの上に仔猫を置いて
さっさっと、おじいさんはお店から出て行った。

あっ気に取られた、この店のオーナーの美弥さんですが、
慌てて追いかけたが、自転車は凄いスピードで
走り去ってしまいました。

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カウンターの上の仔猫は
生後半年くらいの茶トラのオスでした。

利口そうな子だし、
オープン仕立てで、スタッフの猫も六匹しか居ないし
後、二、三匹はスタッフが欲しかったので
丁度よいとは思ったのですが……

しかも、あんな不躾で、気の短い
おじいさんに飼われていたら、
きっと仔猫が虐待されるのに違いないと
美弥さんは思ったからです。


そして、仔猫のにゃん太は
猫カフェ猫カフェ『にゃんこの館』のスタッフとして
正式に採用されました。





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創作小説・詩
by utakatarennka | 2014-05-02 17:34 | メルヘン
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2013年の1月から、若者向けの携帯小説サイト
魔法のiらんどで作品を書き始めました。
猫カフェ『にゃんこの館』は、そこで連載しています。

携帯小説なので一文が短く、行間が広くなってます。
その為に文字フォントを大きくして掲載しました。


     【 魔法のiらんど 】

    


 Youtubeでご覧になれます

猫カフェ 『にゃんこの館』
〔前編〕
猫カフェ 『にゃんこの館』
〔後編〕





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 【 天然にゃんこ『ハルカ・ハリケーン』 ② 】

これでもう、
猫カフェ『にゃんこの館』でトラブルはありません。

天災『ハルカ・ハリケーン』も起きなくて
平和になって良かったと胸を撫で下ろしていたら、

この二匹の様子がオカシイのです。

まず、イワンの元気が無くなってきました。
いたずらっ子で機敏な動きのイワンが動かなくなって、
餌も食べなくなってしまったのです。

なんだか、
寂しそうに窓辺でポツンと座っていたりします。

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いつものイワンとは明らかに様子が違うのです。

かたや、ハルカの方もゲージから出して貰っても、
何もする意欲がなく、ただ寝てばかりなのです。

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元気を失くして、二匹とも痩せてきました。
スタッフの猫たちも心配そうに見ています。

イワンもハルカも病気になってしまったのでしょうか?

そんな様子に見兼ねた
フロアーマネージャーの三毛猫のミーコさんが、
イワンにこっそり話しを聴いたみたいです。

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素直じゃないイワンは
自分の気持ちを話したがらなかったけれど、
どうやら「寂しい」ようなのです。

そして、ハルカにたずねると
「なんだかツマンナイ……」と溜息を吐いています。

ようやく合点した、
ミーコさんは美弥さんに事情を説明しました。

ちなみにミーコさんは人間の言葉を理解し、
美弥さんとならコミュニケーションができる
超天才にゃんこなのです。

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そして翌日から、
二匹はやっと同じ時間帯にホールに出して
貰えるようになりました。

いつ、また『ハルカ・ハリケーン』が起きないかと、
スタッフたちは冷や冷やしていたら……
みんなが見ている前でイワンがハルカのお皿に顔を突っ込みました。

ああっ!! 

また『修羅場』になるぞっと思っていたら……
なんと二匹は仲良く同じお皿で食べているではありませんか。

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イワンの餌もハルカが食べても怒りません。
二匹はピッタリと寄り添っています♡

――みんなは今まで気づきませんでした。

テレ屋のイワンは素直になれなくて、
わざとハルカにチョッカイを出していたのだし、
ハルカも餌を食べられて怒っていても、
決してイワンが嫌いな訳ではなくて…要するに…そのう…

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イワンとハルカはお互いを好きだったのです!

あの嵐のように激しい
『ハルカ・ハリケーン』はいわゆる痴話げんかという、
仲の良い牡牝の愛情表現のひとつだったみたい。

今回の処置で、
さすがの懲りた二匹はもう激しい
ケンカはしなくなりましたが、
時々、追いかけごっこをして
ストレスを発散しているようです。

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やっぱり仲間が元気ないのは、
みんなもツライ気持ちになります。

トムとジェリーじゃないけれど、
ハルカとイワンは仲良くケンカして欲しいと思った、
猫カフェ『にゃんこの館』のスタッフたちでした。


小さな嵐『ハルカ・ハリケーン』は吹き荒れても、
猫カフェ『にゃんこの館』は今日も快晴でっす♪



― おしまい ―





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   創作小説・詩
by utakatarennka | 2014-04-13 06:18 | メルヘン
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2013年の1月から、若者向けの携帯小説サイト
魔法のiらんどで作品を書き始めました。
猫カフェ『にゃんこの館』は、そこで連載しています。

携帯小説なので一文が短く、行間が広くなってます。
その為に文字フォントを大きくして掲載しました。


     【 魔法のiらんど 】

    


 Youtubeでご覧になれます

猫カフェ 『にゃんこの館』
〔前編〕
猫カフェ 『にゃんこの館』
〔後編〕





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 【 天然にゃんこ『ハルカ・ハリケーン』 ① 】

猫カフェ『にゃんこの館』のスタッフ

マンチカンのハルカはとってもマイペース

そして、のんびり屋さんです。


いつもは大人しい彼女ですが……。

あることで切れると、

『ハルカ・ハリケーン』へ変身します!

     *

マンチカンのハルカは、
短い脚でチョコチョコと歩く姿がキュート、
猫カフェ『にゃんこの館』では人気があります。

ハルカはおっとりしているので
お客さんに触られても、
弄られても気にしません。

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ただ、餌にだけはものすごく執着があるみたい。

おっとりしていても自分の餌を盗られた時だけは本気で怒ります。
キレるとかなりヤバイです!

ロシアンブルーのいたずらっ子イワンは
いつもハルカをからかって遊んでいます。

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ハルカの方も別にイワンが苦手という訳ではなく、
結構、されるままですが……
餌を横取りされた時だけは猛然と仕返しをします。

埴輪のように大人しかったハルカが、
突然、大魔神に変身して
イワンをボコボコにしたことが
今までも何度もありました。

それなのにイワンときたら……
学習能力がないのか? 
ただのいたずらっ子なのか? 
懲りずにまたチョッカイを出します。


ある夜のこと――。
猫カフェ『にゃんこの館』ではお店が閉店すると、
いよいよスタッフたちの夜食の時間です。

今夜はツナ缶か? ささみジャーキーか?
わくわくしながらオーナーの美弥さんの足元で
ニャーニャー騒いでいました。

今夜はささみジャーキーでした。

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ハルカの大好物です!

食べようとした瞬間、
イワンがハルカのお皿に顔を突っ込み
ひと口食べてしまいました。

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さぁーて、そこからが修羅場です!

烈火の如く怒ったハルカが、
いきなり大魔神に変身して大暴れします。

まずイワンに噛みつき、引っ掻き、猫パンチを連打! 
止めに入ったにゃん太をぶっ飛ばし、
さらに逃げるイワンを追い掛けて、
ホールの中や猫タワーの上へ下へと走り回る。

途中、エジプト猫のナイルをタワーから突き落とし、
シャネルを踏みつけて、制止しようとした蘭子に体当たり、
仔猫たちはパニックになり、
黒猫のクーはソファーの下に隠れて震えていました。

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これがいわゆる
『ハルカ・ハリケーン』と呼ばれる天災なのです。

ハルカの怒りが収まった頃には、
猫カフェ『にゃんこの館』は、
まさに台風一過のような惨状でした。


この猫たちの大騒ぎには、
オーナーの美弥さんもウンザリしました。

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そこで考えたのは、
イワンとハルカを同じ時間帯に
お店へ出さないシフト制です。

この二匹が絶対に顔を合わせないように、
あくる日から作戦が実行されました。

ハルカがホールで接客している時は、
イワンは別室でゲージに入れられています。
そしてイワンがゲージから出して貰ったら、
代わりにハルカがゲージに入ります。

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そうやって、
二匹を完全に相手から『隔離』したのです。




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   創作小説・詩
by utakatarennka | 2014-04-12 06:56 | メルヘン

Spring garden(春の庭)

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植物の写真は自分で撮影しましたが、たんぽぽの綿毛とシクラメンは検索しました


 Spring garden(春の庭)

小さなお庭で春の花たちが目覚めます。
太陽の光を浴びて、青々とした葉っぱを茂らせて、
太く伸びた茎には、美しい花を咲かせました。

「こんにちは。太陽さん」
チューリップが大きな口で挨拶します。

「今日も良い天気じゃ」
ひげオヤジみたいな顔のパンジーたち。

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「暖かい日差しが、気持ちいいわ」
マーガレットたちもプランターでご機嫌なようす。

花たちが成長するには、水、肥料、太陽が必要なのです。
植物には光合成というのがあって、太陽のエネルギーで成長します。
そして、きれいな空気も作ってくれます。

「みんなイイなぁー。オイラのところには日陰なんだ」

どこからか声がしました。
よく見ると、ブロック塀とコンクリートの
わずかな隙間に、小さな黄色い花が咲いています。

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「あらっ! そんなところに居たの?」
「そこは影になって光が届かないでしょう」
「お気の毒ねぇー」
春の花たちが口々に喋りだします。

「オイラも明るいところに移動したい」

……けれども植物は自分では移動できません。

ちょっとでも日当たりの良い場所に
プランターや植木鉢を置いて欲しいと
花たちは願っています。

「ただの雑草のくせに生意気よ」
チューリップが言いました。

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「オイラは雑草じゃない! たんぽぽって名前があるんだ」

「私たちは種や球根を鉢に植えて咲いた花なのよ。
勝手にそこら辺で咲いている花とは身分が違うのよ」
チューリップがバカにしました。

その言葉にシュンとなって、たんぽぽは黙り込んでしまいました。

「あたしもうつむいているから太陽の光を拝んだことがないの」
花壇の隅っこで、クリスマスローズが呟いた。

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「どうして、いつも地面ばかり見てるの?
それにクリスマスでもないのに、クリスマスローズなんて変よ」
チューリップが笑いました。

「チューリップさん、そんな言い方はずいぶんだと思うわ」
隣のプランターのさくら草たちが口々に批判しました。

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「なによ! あんたたち桜の木の親戚でもないくせに
さくら草なんて、おこがましいのよ」

「ひどいわ!」
さくら草はプンプン怒りました。

「あんたこそ大口開けバカみたい!」
黄色いスイセンがチューリップに噛みつきました。

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「失礼ね! 私は春の花ナンバーワンのチューリップよ」
「まあ、なんて図々しい花なの!」
「だって、春になると一番待たれている花がこの私よ」
「フン! あんたのバカ面は見あきたって太陽が言ってたわ」
「あ~ら、太陽は私ものよ」
「ウソおっしゃい!」
みんなが不満そうにざわつきました。

「まあまあ、太陽の光はみんなに平等だから……」
冬の花のシクラメンが仲裁します。

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「シクラメンさん、まだ居たの? あなたの季節は終わったのよ」

「チューリップさん、ちゃんと分かってますよ。
そろそろ日陰に置いて欲しいと思ったところです」

「花が少ない、冬のシーズンに華やかに
咲いていたシクラメンさんは立派です!」
春の花たちが賞賛の声をあげました。

「私はもうお役御免です」
そう言って、シクラメンは花びらを散らし始めました。

「シクラメンさん、お疲れさま。また来年会いましょう」

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季節のバトンタッチ。
冬から春へ、その中で一番花たちが活気づくシーズン。
――それが春なのです。

ずっと沈黙していたたんぽぽに
なにやら変化が……
いつの間にか、フワフワの綿毛になっていました。

「オイラの仲間たちが、今から旅に出るんだ!」

一陣の春風が吹き荒れたら
たんぽぽの種たちが、いっせいに大空へ舞い上がった。

「すごい! 空を飛べるなんて」
「たんぽぽさんが羨ましいわ」

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「みんな、さよなら~」

たんぽぽの綿毛たちは手を振りながら、
春の庭から遠い町へと旅立って行きました。

「今度は日当たりの良い場所に根を下ろすんだよ」
たんぽぽの綿毛をみんなで見送りました。

時々、ケンカもするけれど
太陽の恵みで植物は、スクスク成長しているのです。

みんな太陽が大好き!

そんな賑やかな春の庭の花たちを
ニコニコしながら太陽が見ていました――。


― おしまい ―


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             タンポポが綿毛になるまでの1か月
    Time lapse Dandelion flower to seed head



   創作小説・詩
by utakatarennka | 2014-04-05 11:49 | メルヘン