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カテゴリ:メルヘン( 28 )

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  ☆.。.:*・゚ロッティーとカラスのおばさん☆.。.:*・゚

「どうだ、きれいだろう?」
一本の大きな木の上に、
きれいなビーズやキラキラ光る色ガラスが、
クリスマスツリーのオーナメントように飾られています。

「まあ! とってもステキだわ」
「女の子はこんなのが好きだと思ってなぁー」
ロッティーの住んでいる、ムーンライトの森には、
こんなにきれいに飾られた木はありません。
キラキラ光る色ガラスが、ロッティーは欲しくなりました。

「あのきれいな色ガラスが欲しいなぁ……」
思わずつぶやいたロッティーの声を、チャムは聴きのがしません。
「たくさんあるんだから、一つくらい持っていってもバレないさ」
「ダメ、ダメ!」
ロッティーは断りました。
「誰も見てないじゃないか」
「あたしは人のものを盗ったりしないわ!」
そういって、その場を立ち去ろうとするロッティー。
すると、チャムは木によじ登って色ガラスを盗みました。

「やるよ! これ」
ロッティーに色ガラスのカケラを渡そうとします。
「ダメ! いらない」
「盗ったのは、俺さまだから持っていけよ」
「盗ったものなんかいらない!」
ふたりは言い争って、もみ合いになりました。

そこへ、空から大きな黒いツバサが飛んできて、
ふたりを目がけて襲ってきたのです。

「痛たたぁー」
「きゃあー、やめてぇー」
ロッティーもチャムもクチバシでつつかれて、
逃げ回って、散々な目に合いました。

――黒いツバサの正体は一羽のカラスでした。

「おまえら、あたいの大事な色ガラスを盗もうとしたね!」
キッと怒った顔でカラスがにらんでいます。

ムーンウインドの森に住む、カラスのおばさんは、
キラキラ光るきれいなものを集めるのが大好き。
遠くの町から、せっせっと運んできては、
巣のある大きな木の枝に飾っているのです。

「俺じゃあない! 盗んだのはこいつだぁー」
そういって、チャムはロッティーを指さして、
そのまま逃げて行きました。
「そ、そんなぁー」
「おまえが犯人かい?」
カラスのおばさんは、ものすごく怒って、
カァーカァーと大声で鳴きました。
またしてもドロボウにされたロッティーは泣きそうです。

「ち、違います! お返しします。わたしが盗ったんじゃありません」
ロッティーは必死でした。
そんな様子を、カラスのおばさんはジーと見ていて……。
「おまえは犯人ではないようだ」
「ええ、違います」
「うん。おまえは正直者の目をしているからね」
カラスのおばさんがニッコリ笑いました。

「どうせ、チャムがやったことだろう。この森で一番のウソつきだよ」
「じゃあ、この森の王様っていうのはウソなんですか?」
「あのチャムがかい?」
カァーカァーとカラスのおばさんが笑いました。
「この森には王様なんかいないさ」
「そうですか」
「チャムは、赤ちゃんの時にお母さんが死んでしまって……」
「まあ……」
「ひとりぼっちで寂しいから、ウソをつくのかもしれない」
カラスのおばさんがしんみりした顔で言った。
お母さんがいなくて、ひとりぼっちのチャムのことが、
かわいそうだとロッティーは思いました。

「おまえは正直だから、うたがうことを知らない」
「はい……」
「だから、だまされるんだよ」
「……そうです」
すっかりロッティーはしょげてしまいました。
「ウソつきよりも、正直者の方が心はきれいだよ」
「えっ?」
「キラキラ光るきれいなものが好き! だからおまえの心も好きだよ」 
黒いツバサで、ロッティーをやさしく包みました。

「これは、おまえにあげるよ」
「えっ! ホントにもらってもいいんですか?」
「あたいはウソをつかないさ」
「ありがとう! カラスのおばさん」
太陽にあてると、
透明な光をとおして、色ガラスがキラキラ輝いています。
ちょっぴり、うれしくなりました。

ロッティーはカラスのおばさんにもらった、
キラキラ光る色ガラスをお土産にすることができました。
分かってくれた、カラスのおばさんに「さよなら」をして、
今度こそ、真っすぐお母さんの元へ帰ろうと思っています。
なにがあっても……もう人の話に耳をかさない!
ロッティーはそう決心しました。

ムーンウインドの森の出口に近づくと、
なにやら大声で言い争う声がきこえてきます。
けれども、ロッティーはきこえないふりをして、
目をつぶって、足早に通り過ぎようとしました。


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  ☆.。.:*・゚ムーンウインドの森の住民たち☆.。.:*・゚

「「ロッティー! たすけて!」

その声に、思わず目を開けてしまったロッティー。
見れば、チャムがイノシシに首根っこを押さえられて、
周りにはハリネズミとイタチもいます。

「たすけてよぉー」
チャムはイノシシにつかまれて、ジタバタしていました。
ロッティーは知らん顔で逃げようと思いましたが……
みんなに取り囲まれて、チャムが泣いていました。

「このウソつきチャムめ! ぶん殴ってやる!」
イノシシがこわい声で言いました。
「おまえのウソのせいでひどい目にあったぞ! ハリでつき刺してやる」
ハリネズミもカンカンに怒っています。
「ウソつきには、おいらの臭いガスをおみまいするぜ」
イタチがおしりを向けました。
どうやら、チャムのウソのせいで、みんな迷惑したようです。

……ものすごく怒っていて、チャムはひどい目に合わされそう。

「お願いです。チャムを許してやってください」
思わず……ロッティーは口走ってしまいました。
知らん顔で逃げようと思っていたのに……
チャム一匹に、おおぜいは卑怯だと思ったからです。

「ん? おまえは誰だ」
イノシシが聞きました。
「ムーンライトの森からきたロッティーです」
「よそ者はすっこんでいろっ!」
ハリネズミが怒鳴った。
「さては、おまえもこのウソつきの仲間だな?」
イタチがうたがわしい目で見ました。

「俺はウソついてないのに……こいつらがイジメるんだ」
チャムが言い訳しましたが、すぐにウソだと気づきます。
「なんだとぉー? このウソつきがっ!」
イノシシがチャムの頭をポカッと殴りました。
「みなさん、チャムはウソつきで、わたしもだまされました」
「おまえもこのウソつきにだまされたのか?」
「じゃあ俺たちの仲間だ! 一緒にこいつをぶん殴ろうぜ」
ハリネズミとイタチが言いました。

「いいえ、わたしはチャムを殴ったりしません!」
「そうか! だったらどっかへいけよ」
ムッとした顔でイノシシが言います。
「そして、チャムを殴らせたりしません!」
「なんだとぉー?」
全員が口をそろえて聞き返しました。

「いいこと、チャム。みんなにウソをついたこと、ちゃんと謝りなさい」
「……分かった」
ロッティーに言われ、チャムは素直にうなずきました。

「みんな、ウソついてゴメンなさい」
チャムはみんなに謝りました。

「チャム、そして二度とウソをつかないって誓いなさい」
さらに、ロッティーに言われ、コクンとうなずくと……。

「二度とウソはつきません」

「ちゃんと謝って、ウソつかないこと誓ったから、もう許してやって」
ロッティーがチャムの手を引っ張っていこうとすると、
「待てよ!」
「俺たちは謝ってもらっても気がすまない」
「そうだ、そうだ!」
三匹は口々に不満を言いますが、
そんなことを言われても……
どうしたものか困ってしまいます。

「じゃあ、どうすればチャムを許してくれるの?」
「そうだなぁー」
イノシシはしばらく考えてから、仲間と相談を始めました。
三匹はヒソヒソしゃべっていましたが……
どうやら決まったようです。


  ☆.。.:*・゚ロッティーの大事なもの☆.。.:*・゚

「チャムを許して欲しいなら、おまえが持っている物の中で……」
イノシシはそう言うと、ひと呼吸してから――。
「一番大事な物を俺たちによこせ!」
「ええー!」
ロッティーは困りました。
今持っている物の中で、一番大事な物と言えば
カラスのおばさんがくれた、
キラキラ光る色ガラスしかありません。
すごく気にいっているので、やりたくない。

「どうだ、一番大事な物をわたすのはイヤだろう?」
「こんなウソつきは放っとけばいいんだ」
「俺たちにチャムを殴らせろっ!」
三匹は口々にまくし立てました。
ウソつきチャムのために、
カラスのおばさんがくれた色ガラスをわたすのは、
ホントに惜しいのです。

「どうせ、口だけだろう? こんな奴、たすける価値ないぞ」
そういうとイノシシはチャムの首を絞めあげました。
「痛たたぁー」
チャムが苦しそうにもがいています。
「やめてください! これをあげます」
キラキラ光る色ガラスを、ロッティーは差し出しました。

「おおー!」
三匹はおどろきました。まさかロッティーがチャムのために
一番大事な物を差し出すとは思っていなかったから、
「きれいなガラスだな、ホントに俺たちにくれるのか?」
「ええ、だからチャムは許してあげて」
「わかった! ウソつきチャムはおまえに返す」
イノシシはチャムを放しました。
やっと、三匹は森の中へ帰っていってくれたのです。

「ロッティーありがとう」
しんみょうな顔でチャムが礼を言ったが……
「もう、あなたの顔なんかと見たくない!」
ロッティーは怒っています。
大事な色ガラスを三匹にわたして、くやしかったのです。

ムーンライトの森に向かって、はや足で歩くロッティーの後から
なにか言いた気にチャムがついてきます。
「ロッティー怒ってる?」
「あなたのせいで、カラスのおばさんがくれた色ガラスをなくしたのよ」
「ゴメンよ……」
「もう! あたしについてこないで!」
きつい口調で、チャムに向かってそういうと、
ロッティーは泣きながら、荒れ地へ走っていきました。

――その後ろ姿を、しょんぼりとチャムが見送っていた。


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  ☆.。.:*・゚荒れ地を越えて☆.。.:*・゚

「おーい! ロッティー」

荒れ地を歩いていると、誰かの呼び声が聴こえてきました。
ふり向くとチャムが息を切らせながら追いかけてきます。
腹が立っていたので、わざと気がつかないふりで、
どんどん早足でロッティーは歩いていきます。

「ま、待ってくれよぉー」
泣きそうな声で、チャムが呼びかけてきますが……。
「なぁに?」
おもいっきり、ふくれっ面でふり向きました。
「お願いだから……待ってくれ」
「しらない!」
「ロッティーに、渡したい物があるんだ」

「これを……」
そう言うと、チャムは手に持った物を見せました。
それは小さな花の苗でした。
かれんな、パンジーみたいな黄色いお花が咲いています。

「これは?」
「月風草(つきかぜそう)って言って、俺の森にしか咲いてないんだ」
「とっても可愛いお花ね」
「うん、香りもいいんだ」
「これをわたしに……」
「ムーンライトの森に持って帰って植えてくれよ」
「ありがと……でも……」
ロッティーは少し考えました。
またチャムにだまされるんじゃないかと……。

「まさか、盗んできたんじゃないでしょうね?」
「ちがうよ! 崖をよじ登って俺が摘んできたんだ」
そういえば、チャムの体には土と草がついています。
よく見れば、手にすり傷もありました。
たぶん、崖をよじ登るときについたのでしょう。

ウソつきだと思って、チャムをうたがって悪かったと思いました。

「俺のために一番大事な物を差し出してくれて、ありがとう」
「さっきのことね」
「すごく、うれしかった!」
「そう」
「俺のためにそこまでやってくれたのは、ロッティーが初めて……」
「だって放って置けなかったもの」
「――友だち。ロッティーは俺の友だち!」
そう叫んで、手をにぎったら、おもわずロッティーも。
「うん、チャムは友だち!」
二匹は手を取り合って、「わははっ」と大声で笑った。

「ロッティー、君のことは忘れない」
チャムは手をふって、ムーンウインドの森へ帰ろうとしました。
「チャム待って! ムーンウインドの森に友だちはいるの?」
その質問に地面を見つめて、チャムは首を横に振った。
きっと友だちのいないチャムは寂しくて……。
ウソつきに戻ってしまいそうで、ロッティーは心配です。

「ねぇ、わたしと一緒にムーンライトの森へくる?」
その言葉にパッとチャムの顔が明るくなった。
「お、俺がいってもいいのか?」
「ええ、だけど約束してほしいことがあるの」

チャムは、三つの約束をさせられました。


   ひとつ、ウソをつかない。
   ふたつ、人の物を盗まない。
   みっつ、みんなと仲よくする。


「分かった! 約束するよ」
「ホント?」
「うん。ウソつかない、盗まない、みんなと仲よくする」
「ちゃんと守れる?」
「絶対に守る!」
「じゃあ、ずっと友だちだよ」
「友だちだぁー!」
二匹は手をつないで、荒れ地を歩いていきました。

荒れ地の黒い岩の上に、だれかが座っています。
それは一匹の大きなブタですが……。

「こんにちは。しじんさん」
「やあ! 仲間がふえたね」
「俺、チャム」
「大事な友だちです」
「ほほぉー『友だち』は、しじんの好きな言葉だ!」
いきなり、しじんはマンドリンをかき鳴らして、うたいだしました。


   友だちって なぁに~♪ 友だちって なぁに~♪
 
   君が悲しくて 泣いていると
   どうしたの? 声をかける
   なにも言わずに 泣いていたら
   ポケットから ハンカチを差し出して
   ふたりで一緒に 涙を拭くんだぁ~♪

   それが 友だち~♪ それが 友だち~♪

   君がうれしくて 笑っていたら
   いつの間にか そばにいる奴
   背中をバシッと叩いて この野郎!
   はしゃいで ふざけて 大笑い
   ふたり一緒なら 喜びも二倍さぁ~♪

   友だちって いいなぁ~♪ 友だちって いいなぁ~♪


ブタしじんは気持ち良さそうに、ヘンテコリンな歌を
うたっています。

その歌声に見送られるように、ロッティーとチャムは、
ムーンライトの森へ帰っていきました。


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  ☆.。.:*・゚ロッティー、お母さんの待つ森へ☆.。.:*・゚

ムーンライトの森の入口に、だれかが立っています。
それはロッティーの帰りが遅いので心配して、
森の入口で、待っていたお母さんの姿でした。
遠くから、その姿が見えたので
大声で呼びながら、ロッティーがかけ寄っていきます。

「お母さーん」
「ロッティー」
お母さんもロッティーの姿を見て、大きく手を振っています。

「ただいま」
「おかえり」
元気よく笑顔でロッティーが挨拶しました。
お母さんは、出かける前よりもロッティーが
少し頼もしくなって、帰ってきたように見えたのです。

ロッティーの後ろから、見知らぬ、くまの男の子が、
ぴょこんと顔をのぞかせています。

「あ、紹介するわ。『知らない森』からきた。チャムよ」
「俺、チャム。よろしく」
「おや! 友だちも連れてきたのかい?」
「チャムは大事な友だちなのよ!」
「ようこそ、チャム。ムーンライトの森の仲間たちと仲よくしてね」
「はい!」
お母さんに笑顔で歓迎されて、チャムもうれしいそうです。

「ロッティー旅はどうだった?」
「うん、いろいろあったけど楽しかったよ」
それからロッティーは『知らない森』であったことを、
お母さんに次々と話しました。
にんじん畑のことやカラスのおばさんにもらった色ガラスなど、
辛い目にもあったけど、チャムと友だちになれて良かったことも。

「ねぇ、お母さん『心の目』ってどうしたら見られるの?」
「心の目?」
「うん、荒れ地で会ったブタのしじんさんが教えてくれたの、
大事なことは『心の目』で見なさいと……」
「そうかい。それはたぶん……こういうことだと思う」
お母さんは少し考えてから、ゆっくりと答えました。
「見た目にごまかされないで、心の中でよく考えて決めなさいってことよ」
「心の中でよく考えることが『心の目』だったのね!」
やっと、ロッティーにもブタしじんの言っていた意味が、
少し分かりました。

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「ホォーホォーホォー」
森のミミズクのおじいさんがムーンライトの森中に、
ロッティーが旅から帰ったことを知らせています。

森の仲間たちが集まってきて、ロッティーの無事を喜びました。
一緒にムーンウインドの森からきたチャムのことも、
みんなで大歓迎してくれました。

ムーンライトの森、ここなら仲間がいるので、
チャムは寂しくなんかありません。
もうウソなんかつかなくてもいいんです。

――チャムは、やっと自分の居場所を見つけました。

ムーンウインドの森からもってきた。
月風草をロッティーとチャムは丘の上に植えました。
大事に、大事に……ふたりはその苗を育てたので、
月風草はムーンライトの森に根付いて、
たくさんの花が咲くようになったのです。

やがて丘の上は月風草の咲く、黄色い花畑に――。

まんまる満月の夜。
ムーンライトの丘の上、月の光が照らしだせば、
さやさやと月風も吹いて、花びらを揺らして、
黄色い花たちが放つ、甘く優しい香りに、
ムーンライトの森が包まれてゆきます。

いつしか、ムーンライトの森では、
黄色い花を月光草(げっこうそう)と呼ぶようになりました。

ムーンライトの森とムーンウインドの森、
ふたつの森はひとつの苗でつながったのです。
そのかけ橋になったのは、ロッティーの冒険でした。

ウソつきじゃなくなったチャムはロッティーと、
ずっと、ずーっと仲よくムーンライトの森で暮らしました。



☆.。.:*・゚ おしまい ☆.。.:*・゚




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   創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-05-18 09:06 | メルヘン
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  ☆.。.:*・゚くまの子ロッティー☆.。.:*・゚

まんまる満月の夜。
ムーンライトの森に、くまの赤ちゃんが生まれました。
名前はロッティー、とっても元気な女の子です。

「ホォーホォーホォー」
森のミミズクのおじいさんが、
大きな声で鳴いて、ムーンライトの森中に、
ロッティーの誕生を伝えました。

その夜は、さやさやと月風も吹いて、
本当に気持ちのよい、ステキな夜でした。
お月さまもロッティーを祝福しているみたいに――。


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  ☆.。.:*・゚おてんばロッティー☆.。.:*・゚

すくすく育ったロッティーは、
ムーンライトの森中で、
一番おてんばな女の子になりました。

川遊び、キノコとり、森の探検など
毎日、森の中をかけまわって遊んでいます。

いろんな遊びの中でも、ロッティーは木登りが大好き。
ムーンライトの森で一番高い木のクスノキに登るのが
とくにお気に入りです。

ある日、クスノキのてっぺんに登って、
遠くをながめていると、ムーライトの森をぬけて、
荒れ地をこえると、こんもりと木が茂った、
別の森があることに気がつきました。

「ねぇ、お母さん。向こうの森はなんて名前なの?」
ロッティーはお母さんにたずねました。
「さぁ、知らない。昔から『知らない森』って呼んでいるけどね」
「お母さんはあの森に行ったことがある?」
「いいえ、行ったことはないよ」
ロッティーのお母さんも、そのまたお母さんもだれも、
あの『知らない森』に行ったことがなかったのです。

どんなところだろう?
クスノキのてっぺんから見える、
あの『 知らない森 』が気になって、気になって……。
ロッティーは仕方がありません。

いつか『 知らない森 』に行ってみたいなぁー。
おてんばロッティーは、そんなことを考えていました。

ある日、お母さんに思いきって言いました。
「わたし『知らない森』に行ってみたい」
すると、お母さんはおどろいて。
「ダメ、ダメ! あの森には、だれも行ったことがない」
「だから、わたしが行ってくるわ」
ロッティーはそう答えました。

それからロッティーは毎日、毎日……。
どうしても『知らない森』に行ってみたいと、
お母さんにお願いしました。

ついに、根負けしたお母さんは、
ロッティーが『知らない森』に行くことを、
仕方なく許してくれましたが、

かわりに、三つの約束をさせられました。


   ひとつ、ウソをつかない。
   ふたつ、欲ばらない。
   みっつ、友だちを大事にする。


「はい。三つの約束は守ります!」
ロッティーはお母さんと約束をして、
ついに『知らない森』に行くことになったのです。

お母さんは、とても心配だったけれど、
『可愛い子には旅をさせろ』
ということわざがあるので、
行かせてみようと思ったのです。

だけど、お母さんの心の中では、
よっつ目の約束……。
『無事に帰ってきてね』
これが一番大事な、
ロッティーに守ってほしい約束でした。

「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃい」
お母さんが見送ってくれました。
やがて手をふりながら、ムーンライトの森へ、
引き返してしまったのです。

お母さんの姿が見えなくなると、
急にロッティーは心細くなって……。
『知らない森』に行くのを、止めようかと思いました。

ダメ、ダメ!
お母さんとの約束、ウソをつかない。

もしも、ここで行くことを止めたら……。
『知らない森』に行きたいと思っている、
自分にウソをつくことになります。
お母さんとの約束を守らなければいけません。

背中のリュックには、
磁石と食べ物とお水が入っています。

元気いっぱい! ロッティーは、 
だれも行ったことのない『知らない森』を目指して、
一歩一歩と、進み出しました。

――くまの子ロッティーの冒険の始まりです。



  ☆.。.:*・゚ロッティーしじんと出会う☆.。.:*・゚

ゴツゴツした岩ばかりで、草木もはえていない。
そんな寂しい荒れ地をロッティーは歩きます。
時々、磁石で方向をたしかめたりしながら進んでゆく――。
荒れ地をこえると『 知らない森 』が見えてくるはずです。

しばらく歩くと……
荒れ地の黒い岩の上に、だれかがすわっています。
近づいてよく見ると、一匹の大きなブタでした。

「こんにちは。ブタさん」
ロッティーはあいさつをします。
すると、そのブタは……
「ん? 今、わたしのことをブタさんと呼んだかね?」
「はい。だってブタさんだもの」
「なぜ? わたしをブタだと決めつけるのだ」
「えっ? ちがうの」
そんなことをいわれて、ロッティーはおどろきました。
肩からマントをはおり、とんがり帽子をかぶって、
ギターに似た楽器マンドリンを持った、
大きなブタに違いありません。

すると、ブタはマンドリンをかき鳴らしました。


   空は青いと だれが決めたぁ~♪
   雲は白いと だれがいったぁ~♪

   ホントの色なんか分からない
   見た目じゃあ 中身は分からない
  
   空の色も 雲の色も みんな
   思いこみで決めつけるなぁ~♪


なんだか、ヘンテコリンな歌をうたっています。

「どうだい、分かっただろう?」
「なにが?」
「きみは見た目で、わたしをブタだと決めつけたのさ」
「ブタさんじゃないなら、あなたはだぁれ?」
「わたしはしじんなんだよ」

やけに偉そうに、ブタが胸を張って言いました。

「しじんって? そんな動物はしらないわ」
「しじんは動物ではない。月や星や風とも話ができるんだ」
「あたし、先を急いでいるので……さよなら」
この変ったブタの元から去ろうとしましたが……。

「あ、ちょっと、きみ!」
「なにか?」
「わたしの話をもっと聴きなさい」
「あたし『 知らない森 』に行くのに急いでいます」
「ふむ。だが、きみはしじんのことを知りたくないのかね?」
「……じゃあ、しじんって、どんなことができるの?」
「いい質問だ! しじんは『心の目』を持っている」
「こころのめ?」
「だから、真実が見えるのだ」
「ふーん……」
ロッティーには、ブタのいうことがよく分かりません。
「大事なことは目には見えない。だから『心の目』で見るのだ」
「はい」
「君はだまされやすそうだから、用心しなさい」
「ありがとう、しじんさん。じゃあね!」
ロッティーは再び『知らない森』を目指して、
早足に歩きはじめました。


   この世は ウソがいっぱいだぁ~
   あいつも こいつも ウソつきだぁ~

   だれかがウソをついても みんな信じてしまったら
   それはウソじゃあない ホントになるんだぞぉ~

   ホントの中に混ざってる ウソがいっぱい
   ウソにかくれた ちょっぴりのホントもあるさ

   言葉を信じるな 『心の目』で見るんだ
   お人好しは気をつけろ カモにされるぞぉ~
  
   だまされるなぁ~ だまされるなぁ~♪


自分をしじんだという変なブタが、
マンドリンをかき鳴らして、また歌っています。
その歌声は大空にすい込まれてゆく――。


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  ☆.。.:*・゚ロッティーと『知らない森』の王様☆.。.:*・゚

――ロッティーは荒れ地をぬけて。

やっと『知らない森』の入口にたどりついた。
遠くから、あこがれていた『知らない森』は、
どんな所だろうかと、胸がわくわくします。

ロッティーは、どんどん中に入って行きました。
だけど見えくる風景は……
はえている草や木も、咲いている花も、
ムーンライトの森とあまり変わりません。
きっと『知らない森』には、ふしぎな木や花が、
いっぱい咲いているんだと思っていたのに、
普通の森だったので、ロッティーはがっかり……。

ああ、こんな森だったんだぁー。
そうと分かったら、ロッティーは急にお腹が空きました。
今日は本当にたくさん歩きましたから――。

木の株に腰かけて、ロッティーは、
背負っていた、リュックを開けました。
中には、香りのよい真っ赤なりんごが三、四個入っています。
お母さんが『知らない森』に行くロッティーのために、
持たせてくれたものです。

りんごを食べたら、お母さんの待つムーンライトの森へ
早く帰ろうと思いました。
お母さんのことを思うとロッティーは、
ちょっぴり切なくなりました。
りんごの味も甘酸っぱくて……。

「おまえは何者だ!」
いきなり背中から、声が聴こえてきました。

びっくりして、振り向いたロッティー。

一匹のくまの男の子が立っていました。

「あらっ! こんにちは」
「おまえはどこからきた?」
ずいぶん偉そうに、くまの男の子がロッティーに質問します。
「あたしはロッティー。ムーンライトの森からきたのよ」
「ムーンライトの森? ああ、荒れ地の向こうの『知らない森』のことか?」
「知らない森ですって?」
ロッティーの住んでいるムーンライトの森はこちらでは、
どうやら『知らない森』と呼ばれているようです。

「じゃあ、ここの森はなんて名前なの?」
「ムーンウインドの森さ。きれいな名前だろう」
「ええ、そうね。あなたの名前は?」
「俺さまか?」
ロッティーに名前を聞かれて、くまの男の子はニヤリと笑いました。

「俺さまは、ムーンウインドの森の王様チャムだぞ!」
「ええーっ! 王様?」
くまの男の子は、ボール紙に金色の折り紙をはりつけて作った。
おもちゃの王冠をかぶっています。
とても王様には見えませんが……
だけど今までだまされたことがないロッティーは、
すっかり王様だと信じてしまいました。

「まあ! 王様だなんてすごい」
「えっへん!」
チャムは偉そうに咳ばらいをします。
「ところで、王様にみつぎ物を持ってきたんだろうな?」
「えっ、みつぎ物?」
「王様へのプレゼントの品だ」
「あのう、りんごをどうぞ」
ロッティーは、チャムに差しだしました。
「なんだ? りんごか、しけてるなぁー」
文句を言いながらも、
りんごをあっという間に食べてしまいました。

「もっと、みつぎ物は持ってないのか?」
ロッティーのリュックの中をのぞきこんでいます。
「りんご……もう、ひとつ、どうぞぉー」
「うんうん」

そして、チャムはロッティーのりんごを、
かってに全部食べてしまいました。

「あぁーうまかった!」
王様チャムはとても満足そうでした。
ロッティーは食料のりんごを食べられてしまって、
これからムーンライトの森に帰りたいのに……。
お腹がペコペコで動けません。
「あたしのりんごが……」
空っぽのリュックを見て、泣きべそをかきました。

「ん? おまえは腹がへっていたのか?」
「はい、王様……」
もうしわけなさそうな顔でチャムは、
ロッティーを見ていましたが……

「そうだっ! 俺さまにまかせろ!」
ふいに、手を打って大声で叫びました。

そして、ロッティーの手をらんぼうに引っ張ると、
ムーンウインド森の奥へつれて行きました。


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   ☆.。.:*・゚にんじん畑のロッティー☆.。.:*・゚

――そこは見わたすかぎりの、にんじん畑です。
赤く実った、にんじんが地面からニョキニョキとはえています。

「どうだ、うまそうなにんじんだろう?」
チャムが自慢気に言いました。
「赤くておいしいそう!」
「腹がへっているなら食べていいぞ」
「ホント?」
「えんりょするな」
「王様ありがとう!」

そういわれて、ロッティーは畑からにんじんを引っこ抜いて、
四、五本食べたら、お腹がいっぱいになりました。

「もう食べないのか、えんりょするな!」
「もっと、もらってもいいの?」
「もっともっと欲しいだけもっていけっ!」
「わーい」

ムーンライトの森で帰りを待っている、
お母さんのおみやげにしようと、
ロッティーは、にんじんをどんどん引っこ抜いて、
リュックいっぱい詰め込みました。

「こらー!」

大きな声で怒鳴られて、おどろいて振り返ると、
クワをもった野うさぎがにらみつけています。

「にんじんドロボウめ!」
「ええー! ドロボウ?」
ロッティーはドロボウ呼ばわりされて、びっくりしました。

「わしの畑のにんじんをいっぱい盗みおって!」
野うさぎはクワをふり回して、ものすごく怒っています。
「だ、だってぇー、王様が食べてもいいって……」
「王様?」
「はい、王様が欲しいだけもっていけと……」
「ウソをつくな! なんて悪い子だ」
「そんな……」
ロッティーは野ウサギの農夫に怒られて、
どうしてよいか、オロオロして困ってしまいました。

「王様! 王様ー!」
いくら呼んでも、どこにも見当たりません。
どうやらチャムはひとりで逃げてしまったようです。

そして……
ロッティーは罰として、野うさぎの畑を手伝うことに、
草むしりと水くみを百回やらされて、もうヘトヘトです。
それで、なんとか野うさぎの農夫に、
『にんじんドロボウの罪』を許してもらいました。

――それにしても、王様さえいてくれたら、
あたしが、にんじんを盗んだんじゃないって、
分かってもらえるはずなのに……。

悔しくて、ロッティーは涙がこぼれました。

「クックックッ……」
変な笑い声が聴こえてきました。

大きな木の陰から、ひょっこりとチャムが
顔をのぞかしています。

「あー!」
思わず、大声で叫びました。
「王様のせいで、あたしがドロボウにされたじゃないの」
チャムの顔を見たとたん、ロッティーは腹が立ってきました。

「なんで、俺さまのせいなんだよ?」
「だってぇー、にんじん食べてもいいっていうから食べたのに……」
「食べてもいいって言ったけど……俺さまの畑だとは言ってないぞ」
「えぇー?」
「おまえが畑の持ち主をきかないで、かってに食べたのが悪いんだ」
「……そんな」
たしかに、ロッティーはお腹が空いていたので、
ここをチャムの畑だと思いこんで、食べてもいいと言われて、
ガツガツにんじんを食べてしまったのです。

「しかも食べただけじゃなくて、リュックにまで詰めただろう」
「ええ、そうよ」
「欲ばるから、あんなに野うさぎが怒ったんだ」
「欲ばる……」
ロッティーはお母さんとの約束を思い出した。

欲ばらない……。
ロッティーは欲ばって、ひどい目にあったのです。
欲ばった自分も、悪かったと反省しました。

――こんな森にいるのは、もうたくさん!
ムーンライトの森にすぐに帰ろうと思いました。

「じゃあ王様、さようなら!」
さっさっと帰り始めました。
「おい! ちょっと待てよ」
ロッティーの腕をチャムがつかみます。
「なぁに?」
「おまえに、きれいなものを見せてやるぞ!」
「きれいなものって?」
「いいから、ついてこいよ」
腕をつかんだまま、無理やりロッティーを
引っぱっていこうとチャムがします。


「痛いわ、はなしてよぉー」



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   創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-05-17 08:25 | メルヘン
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2013年の1月から、若者向けの携帯小説サイト
魔法のiらんどで作品を書き始めました。
猫カフェ『にゃんこの館』は、そこで連載しています。

携帯小説なので一文が短く、行間が広くなってます。
その為に文字フォントを大きくして掲載しました。


     【 魔法のiらんど 】

    


 Youtubeでご覧になれます

猫カフェ 『にゃんこの館』
〔前編〕
猫カフェ 『にゃんこの館』
〔後編〕





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 【 派遣にゃんこ ② 】

ある日、お手伝いさんが猫の砂を替えに部屋に入ってきた。

うっかりドアを閉めるのを忘れた隙にイワンは飛び出した。
広い屋敷の中を走り抜けた、あっちこっち出口を探しまわった。


一階の開け放した窓の網戸を破って、
やっと外に出ることができた。

――が、そこからが問題だった。

屋敷の庭に出たが、周りは高い塀が張り巡らされていた。

猫カフェ『にゃんこの館』へ帰りたくとも、
どっちへ行けばいいのか皆目見当がつかなかった。

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――ああ、家猫の哀しさよ。

すぐに見つかるのも悔しいので、
イワンは庭の植え込みの中にじっと隠れていた。

「ロアン! いつ帰ったの?」

背後から声が飛んできた。
振り向くと、背中はキジトラでお腹は真っ白な
牝猫がのぞき込んでいます。

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「俺の名前はイワンだ。あんた誰?」

「あら、ロアンじゃないの? そっくりだから間違えたわ」
牝猫はイワンを上から下までジロジロ見て、

「そうね。ガキっぽいからアンタはロアンじゃない」

フン! とイワンは鼻を鳴らした。

「アタシの名前はユメよ」

その牝猫は半野良のユメというオバサン猫でした。
時々、お屋敷の庭に侵入して、

ここの飼い猫ロアンという十七歳になる
おじいさん猫と遊んでいたということでした。

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「そのロアンって、行方不明の猫のことか?」

「そうよ。ここにロアンが居るわけないわ。
だって……アタシにお別れの挨拶をして、
一匹で旅立ったんだもの」

「へぇー、そいつ脱走したんだ?」

「そんなんじゃないわ! 
ロアンは大好きな飼い主の願いを叶えるために
危険な旅をしているの」

ユメは怒ったように言い返した。

「危険な旅って……?」

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「アンタは家猫だから知らないだろうけど、
外の世界には車って怪物が走っているのよ。

いたずらっ子にいじめられたり、
他所の縄張りに入ったらボス猫に追いかけられたり、
ホントに命懸けなんだから……」

そんなことは何も知らない世間知らずのイワンでした。

けれど、冒険に憧れるイワンはユメにそう言われて
よけいに外に飛び出してみたくなってきたのです。

「俺、仲間の所へ帰りたいんだ。出口を教えろ!」

「ダメ、ダメ! 車に轢かれて死んじゃうのがオチだよ」


『見つかったぞぉ―――!!』


大声で叫ぶ声が聴こえた。

あれ? 俺はここにいるよ。
不思議に思った二匹は声のする方に走って行ったら、
一匹のロシアンブルーが倒れていました。

「ロアン!?」

ユメが名前を叫んだ。

その猫は体中傷だらけで痩せ細って、
虫の息だったが、コクリと頷き気を失った。

その口に何か咥えられていた、それは桜貝だった。

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「ロアン、海に行ったんだね。
飼い主が死ぬ前に見たいと言ってた、遠い海に行ってこれたんだね。
こんなに……ボロボロになって、あんたは偉いよ」

ユメはロアンの側で号泣した。
イワンはそのまま捕獲された。


その夜、老人と愛猫は一緒に天国に召されました。

病気で行けない飼い主に代わって、海を見てきた猫は、
きっと天国で海の話をおじいさんにしていることでしょう。

大好きなおじいさんに抱かれたロアンの
嬉しそうな顔が目に浮かぶようです。

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そして、お役御免になったイワンも
みんなの待つ、猫カフェ『にゃんこの館』へ還された。


久しぶりに帰ってきたイワンの元に
スタッフのにゃんこたちが集まってきました。

いたずらっ子イワンがいなかったせいで
猫カフェ『にゃんこの館』』は、

静か過ぎて……

まるで火が消えたみたいだったのです。

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仲良しの牝猫ハルカが小さな声で、

「イワンが居ないと寂しかった……」

と言ったので、嬉しくて、テレ臭くて、
思わず、猫パンチしてしまったら、

10倍返しでボコボコにされた。

相手がいないとケンカもできなぁー。
あはは……


狭くて、騒がしくて、猫がいっぱいいるけど
みんなと一緒に食べるご飯は美味しい!

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やっぱり、ここが俺の居場所なんだと
イワンはつくづくそう思った。

独りぼっちになって、初めて分かった
仲間たちとの深い絆だった。




猫カフェ『にゃんこの館』、ここが俺のマイホームだ―――!!


― おしまい ―





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創作小説・詩
by utakatarennka | 2015-01-10 12:06 | メルヘン
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2013年の1月から、若者向けの携帯小説サイト
魔法のiらんどで作品を書き始めました。
猫カフェ『にゃんこの館』は、そこで連載しています。

携帯小説なので一文が短く、行間が広くなってます。
その為に文字フォントを大きくして掲載しました。


     【 魔法のiらんど 】

    


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猫カフェ 『にゃんこの館』
〔前編〕
猫カフェ 『にゃんこの館』
〔後編〕





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 【 派遣にゃんこ ① 】

三丁目にある猫カフェ『にゃんこの館』に派遣の仕事が回ってきた。
その白羽の矢はなんとロシアンブルーのイワンに刺さった。

あるお金持ちの屋敷で飼われていた
ロシアンブルーが行方不明になっている。

飼い主の老人は重病で余命幾ばくもない、
愛猫がいなくなったことに気づいたら、
おそらくショックで亡くなってしまうかもしれない。

心配した家族がお祖父さんのために
愛猫の身代りを演じて欲しい。

いわゆる影武者(影猫)として、
同じロシアンブルーで毛並もそっくりな
イワンにその役が回ってきたのだ。

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――その話に、イワンは大喜びだった!

物心ついた時から
猫カフェ『にゃんこの館』しか知らなかったので、
外の世界に憧れていた。
これから自分の身に起きるかもしれない事件を
あれこれ想像して、冒険心でわくわくでした。


ついに、黒い高級車が猫カフェ『にゃんこの館』に迎えにきた。

仲間の猫たちに別れを告げ、イワンは意気揚々と
ペットキャリーに入って、何処ともなく連れて行かれた。

イワンが着いた所は大きなお屋敷だった。

ガラス張りの広い猫部屋に入れられた。
そこにはキャットタワーやキャットベッド、猫トイレ、
豪華なキャットフードが置いてあった。

今までみたいに『にゃんこの館』の仲間たちと争わなくても、
ぜんぶイワンの一人の物、まるで[王様]にでもなった気分だ。

初めの数日間は快適な暮らしだと思った。
広いお部屋でのうのうとして居られるし、ご飯は毎日、高級猫缶ばかり、
みんな気を使って
チヤホヤしてくれるしのでイワンは大満足だった。

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けれど慣れてくると、段々と退屈になってきた。

見える風景は隣の部屋でベッドに横たわる老人の姿、
何本も体にチューブを通されて今にも死にそうだった。
痛々しいその姿で病人が、時々、イワンの方を見て
弱々しく微笑むが……陰気臭くて気が滅入ってくる。

ここにはケンカする相手もいないし、
イタズラを仕掛ける相手もいない。


ああ、ツマンナイ! ここは俺の居場所じゃないんだ!!

みんなと別れて、独りぼっちになることが
こんなにツライことだと思わなかった。

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ホームシックにかかったイワンは、
猫カフェ『にゃんこの館』へ無性に帰りたくなった。

そして逃げ出すチャンスをうかがっていた。




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創作小説・詩
by utakatarennka | 2015-01-09 10:20 | メルヘン
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猫カフェ 『にゃんこの館』
〔前編〕
猫カフェ 『にゃんこの館』
〔後編〕





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 【 仔猫ころころ ② 】

仔猫たちが里親に引き取られる件は、
フロアーマネージャーのミーコさんを通して、
スタッフ全員の周知となりました。

天使のような仔猫たちが気に入っていたので、
みんなガッカリして……。

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特にマリリンは仔猫たちへの愛情が深く、
ショックのあまり餌も食べずにションボリしています。

果たして仔猫たちが大事に育てて貰えるだろうか?

引き取られる先のお客の様子を知っているだけに不安が募ります。

――いっぺんにお店の空気が重くなりました。


そんな中、蘭子が叫んだ。

「アタシたちが仔猫を守るんだ!」

「そうだ! 仔猫は渡さないぞ!」


にゃん太も気炎を吐いた。

その意見にスタッフ全員が大賛成しました。


ミーコさんを通してオーナーの美弥さんに、
みんなの意見が届けられました。

猫カフェ『にゃんこの館』のスタッフは仔猫たちの餌代を稼ぐために、
全員で毎日一時間サービス残業をやることに決めたのです。
そしてお客様獲得にいっそう営業努力をすることを条件に、
仔猫の引き渡しを全員が[拒否]したのです。

にゃんこたちの熱い思いに美弥さんは感動しました。

正直、あの女性に渡すのは相当不安だったので、
やっぱり断わろうと決心しました。
……しかし、仮に断わるにしても、やはり理由が要ります。


翌日、仔猫の引き取りにきた女性に、
一応、仔猫たちを飼う環境について質問してみました。

女性の話では、住宅はワンルームマンションでペット不可。
夕方から深夜にかけて水商売をしているので留守、
また外泊も多いとのこと。
自分以外にも不特定の同居人がいるが動物には興味はなさそう。


……ということでした。

この女性の話を訊いて、美弥さんは呆れ返ってしまいました。
猫を飼うための飼育条件があまりに劣悪過ぎるからです。

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キッパリと美弥さんは仔猫の引き渡しを断わりました。

それに対して、
「約束が違う!」とか、「猫餌も買ったのにどうしてくれる?」と、
散々ごねて、大声で喚き立てます。

結局、美弥さんから迷惑料として一万円をせしめて、
それでやっと帰って貰ったのでした。


噂では彼女のブログに、猫カフェ『にゃんこの館』誹謗中傷
散々書かれていたようです。

それに対して同意するコメントや「イイね」もたくさん入っていましたが、
しょせんネットは一方通行の発信ですから……

美弥さんは気にしない!

お店の評判を落としても、
仔猫たちをヒステリー女から守ったことに今は安堵しています。
納得できる飼い主にしか絶対に渡さないと、美弥さんは決意しました。

スタッフたちも猫たちのことを一番に考えてくれるオーナーには感謝です。

どんな悪評が立っても、スタッフのサービスで、そんなものは跳ね返してみせる。

「今日も張り切っていこう!」

にゃん太の掛け声でスタッフ全員に気合が入ります。

猫カフェ『にゃんこの館』では、
猫と触れ合いたいお客様をにゃんこスタッフ一同、

心よりお待ちしております。


― おしまい ―





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創作小説・詩
by utakatarennka | 2014-06-19 06:20 | メルヘン
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猫カフェ 『にゃんこの館』
〔前編〕
猫カフェ 『にゃんこの館』
〔後編〕





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 【 仔猫ころころ ① 】

猫カフェ『にゃんこの館』にいる、
アメリカンショートヘアーの三匹の仔猫たち。

床の上を石ころのように転がりまわって元気よく遊ぶ、
その可愛らしいしぐさで、みんなを魅了しています。

仔猫というのは期間限定のエンジェルだから、
その姿に癒されたくて、来店するお客様もたくさんいるようです。

仔猫の兄弟は
一番大きい子と一番小さい子が女の子で、真ん中が男の子です。

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――この三匹の仔猫たちには名前がありません。

なぜなら、猫カフェ『にゃんこの館』スタッフではないので、
名前を付けると『情がうつる』から付けていないのです。

オーナーの美弥さんが、ある事情で仔猫たちを預かっています。

実は、この子たちの母猫が授乳中に原因不明の
【猫の突然死】で逝ってしまい、
世話をみる者がいなくなってしまったのです。

猫には心筋症という病気が多く、
今まで全く症状が出なかったのに、
ある日突然、発作が起こり、亡くなることがあります。

飼い主だった女性は、
初めて愛猫に出産をさせて五匹の仔猫が生まれましたが、
そのせいで母猫の体力が消耗して突然死したと思い込み、
罪の意識から泣いてばかりで、
残った仔猫たちの世話もできない状態でした。

五匹の仔猫の内、
二匹は貰い手があって他所に引き取られましたが、
三匹の引き取り手が見つからなくて、
猫カフェ『にゃんこの館』に連れて来られたのです。

しかも、猫カフェに預ける時に、

「飼いたい人がいたら、どうぞあげてください」

と、その飼い主は言いました。


仔猫を見るのもツライと、
人に預けてしまう飼い主の無責任さが、
美弥さんには理解できません。

「この子たちに罪はないのに……」

無邪気に遊ぶ仔猫たちを見ていると、
親を亡くし飼い主に身捨てられた、この子たちが憐れだ。

美弥さんは玄関にある
ホワイトボードのスタッフたちの写真の下に
『仔猫の里親募集』の張り紙を付けました。
スタッフでない仔猫たちを餌代を貰って預かっているだけ、
良い里親が見つかることを願うばかり――。


猫カフェ『にゃんこの館』のスタッフたちも
この小さな天使たちを歓迎していました。

気の強いキジ猫の蘭子も仔猫には優しく接しているし、
お嬢さま猫のシャネルやキレると怖いハルカも世話を焼いたりして、
牡猫たちは人気ナンバーワンのにゃん太やおじさん猫のバロンも
みんな温かい目で見守っています。

黒猫のクーは仔猫に交じって、一緒に遊んでいたりします。

仔猫たちは、猫カフェ『にゃんこの館』のアイドルなのです。
お陰で猫同士のトラブルも減って、和やかな雰囲気になりました。


バーマンのマリリンはビルマ(ミャンマー)産の高価な牝猫なので、
何度も出産経験があります。

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子を産めなくなったため、ブリーダーの飼い主に捨てられて、
猫カフェ『にゃんこの館』のスタッフになりました。

マリリンは自分から仔猫たちのトイレの躾や毛つくろいを嬉々してやっています。

きっと母猫の『母性本能』が目覚めたのでしょう。

そんなある日、『仔猫の里親募集』の張り紙を見て、
仔猫が欲しいというお客様がありました。

若い女性で、ここにも度々来店してくれますが、
猫スタッフの写真を撮るために寝ている子を起こしたり、
しつこく追い回したりする迷惑なお客なのです。

格好も派手で香水の匂いがプンプン強いので、猫たちには倦厭されいます。

彼女は自分のブログに仔猫たちの写真を載せて、
人気のブロガーになって、
SNSで「イイね」やコメント、閲覧数がいっぱい欲しいのです。

「明日、仔猫を引き取りにくるからよろしく~♪」

単に仔猫の可愛い姿に惹かれて欲しがっているようにしか見えない。
こんな人に渡すのは不安でしたが……ここのスタッフではなく、
飼い主さんも誰でもいいからあげて欲しいとの希望なので……。

――仕方なく、美弥さんは承諾しました。





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創作小説・詩
by utakatarennka | 2014-06-18 11:14 | メルヘン
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猫カフェ 『にゃんこの館』
〔前編〕
猫カフェ 『にゃんこの館』
〔後編〕





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 【 芸人にゃんこ ③ 】

今や、にゃん太は
猫カフェ『にゃんこの館』では
不動の人気者スタッフとなり
毎月のアンケート結果で貰える
特別ボーナスのツナ缶10個を
ミーコさんに頼んで、オーナーの美弥さんに
貯金いや、『貯缶』して貰っています。

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なぜ、にゃん太は自分で食べないで、
ツナ缶を貯めて置くのかというと
いつか母猫のタマが見つかったら
貯まったツナ缶で人間に養って貰うためなのです。

親孝行のにゃん太は
母猫タマのことをいつも思っています。


そして、貯缶ツナはもう100個以上は
溜まった頃でしょうか、
猫カフェ『にゃんこの館』
新しいスタッフとして
キジ猫の蘭子がやってきました。

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元、野良猫だった蘭子は
かなり苦労してきたようで
来た頃には、相当荒れていました。

同じ日本猫同士で
にゃん太は蘭子に近親感が湧いたし
野良猫の暮らしも聴きたいので
いろいろ世話を焼いてあげました。

しかし蘭子の方は
にゃん太の人間に媚びた営業方法に対して、

「アンタ、猫のくせに
犬のマネなんかして、恥かしくないの!?」


辛辣な意見です。

「君は君のスタンスでやればいいさ、
俺には俺のやり方があるんだから
よけいな口出ししないでくれ!」


何度もケンカになったことがあります。

「フン! 猫のプライド捨てたの?
アタシは野良だったけど、猫としての
プライドは捨ててないわよ!」

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猫のプライドってなんだ?

俺には、それがないというのか……
にゃん太にはその言葉の意味が分かりません。

しかし、芸人猫としての矜持は
ちゃんと持っています。

 『お客さんを喜ばせること。楽しんで貰うこと!』

いつも、そういう気構えで、
猫カフェ『にゃんこの館』のスタッフとして
にゃん太は働いているのです。

『野良猫の魂は捨てない!』

それが蘭子の拘りだったのです。

仔猫だった蘭子は、
保健所の“ 殺処分 ”ギリギリで助かった
幸運な野良猫だったのです。

“ 殺処分!? ”

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初めて、そんな言葉を聴いて
にゃん太は凍りつきました!

もしかして……
母猫のタマも“ 殺処分 ”になっていないだろうか?
タマのことが心配で、心配で堪りません。


――そんなある日のことでした。

ミーコさんが新聞の切り抜きを持って
にゃん太の所へやってきました。

「にゃん太、この人間と猫は知り合いじゃない?」

新聞を見ると、
なんと! 母猫のタマとおじいさんが
一緒に写っている写真ではないか!?
ずいぶん痩せているけれど……
間違いなく、1年前に別れた母猫のタマです。

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「ミーコさん、これは……」

「美弥さんが、にゃん太をここに連れてきた
おじいさんだから、この猫に見覚えがないか
聴いてきてと言われたのよ」

「この茶トラは俺のかあさんだ!」

感動のあまり、にゃん太は涙が零れました。


新聞の記事にはこう書いてありました。

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   捨てた飼い主に猫が恩返し!

○○時計店の店主、●●留造さん(78歳)が
自宅の風呂場で倒れていたのを、元飼い猫だった
茶トラの牝猫が発見して、窓辺で大声で鳴いたり、
網戸を破るなどして、異変を近所の住人に知らせた。
留造さん宅では犬も飼っていたが、侵入者ではないので
気付かずに寝ていたようである。
この猫はタマと呼ばれて、1年ほど前に捨てたが
最近、ここらに戻って来ていたということだ。
捨てた飼い主の命を救うとは、感心な猫だと近所では
評判になって折り、留造さんは、
「一度捨てた猫が命を救ってくれた。もう二度と捨てない」
と涙ながらに語っていたという。


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ミーコさんから、こういう新聞記事の内容だと
にゃん太は丁寧に説明を受けた。


良かった! 
かあさんは生きていて、しかも人間の役に立って
また、おじいさんに飼って貰えるんだ。

にゃん太は、ミーコさんに
おじいさんの家は貧しいので
今まで貯めたツナ缶を母猫のタマの元に
美弥さんから届けて欲しいと頼んだ。

「ファンからのプレゼントだと伝えてくれ……」

「いいえ、私も一緒についていって
これは孝行息子にゃん太から贈り物ですと
タマさんにちゃんと話すわよ」


「ミーコさん……」
その後はにゃん太は涙で何も言えなかった。


二人の話をそっと窓辺で聴いていた
蘭子は“ 殺処分 ”になった自分の母猫を
思って、静かに泣いていました。

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にゃん太が芸人猫になった
本当の理由を知って、ヒドイことを言ったもんだと
蘭子はつくづく後悔した。

「ミーコさん、これからも芸人猫として俺は、
かあさんへ仕送りのツナ缶を送るために頑張るぞ!」

「ああ、頼んだよ!」

にゃん太は新たな目標ができて大張り切りです。

そして、今日も
猫カフェ『にゃんこの館』

「人気ナンバー1」スタッフのにゃん太は


 『お客さんを喜ばせること。楽しんで貰うこと!』

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それをモットーに、さらに芸を磨いているのです。


― おしまい ―





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創作小説・詩
by utakatarennka | 2014-05-07 08:19 | メルヘン
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〔前編〕
猫カフェ 『にゃんこの館』
〔後編〕





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 【 芸人にゃんこ ② 】

猫カフェ『にゃんこの館』
働くようになり寝る場所も食べ物も
不自由しなくなった、にゃん太ですが……

いつも胸の中で思っていたのは
一緒に捨てられそうだった母猫のタマのことです。

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寒い日には震えていないだろうか
お腹を空かせていないだろうか
心配で胸を痛めていました。


いつか、かあさんを救いだしたい!

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すっかり、『にゃんこの館』の暮らしに
慣れた頃、にゃん太はあることに
ふと気付いたのです。

自分とミーコさん以外は
ここのスタッフは外国の猫だということに……

 ホワイトペルシャのシャネル
 スコティッシュフォールドのバロン
 アビシニアンのナイル
 バーマンのマリリン
 マンチカンのハルカ


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血統書つきの高価な猫たちで、
毛並もフワフワしてとてもきれいなのです。
ただ居るだけで絵になる、その存在感!

ごく普通の茶トラのにゃん太には
とても太刀打ちできません。

「猫は芸がない。人間の役に立たない」

おじいさんの言葉を思い出しました。

もしも、猫カフェ『にゃんこの館』
ぜんぜん人気がなくて
お客さんにも相手にされない
役に立たないスタッフだったら……

また捨てられるかも知れない!

そんな脅迫観念に脅えました。

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芸ってなんだろう?
この俺にもできるのかなあ~?

その時、柴犬のロンがおじいさんと

「お手!」「お代わり」「チンチン」


とか、やっていたのを思い出したのです。

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犬みたいに俺にも芸ができて
人気が出たら、お店の役に立つから
もう二度と棄てられないはずだ。

やってやる!

犬みたいに芸のできる猫に
俺はなるんだ!!


その日からにゃん太は
「お手!」「お代わり」「チンチン」
などの練習を懸命に始めました。

閉店後も、鏡の前でいろんなポーズを研究して
お客さまに受けようと、猫一倍努力をしたのです。

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その成果で、
猫カフェ『にゃんこの館』には犬みたいな
芸のできる利口な猫ちゃんがいるわよ。

お客さんの口コミで有名になり、
にゃん太を目当てのリピーター客も多く
テレビ局からも取材がくるほどになりました。

毎月のお客様アンケート、
「一番お気に入りのスタッフを教えてください」
では、たくさんの票を集めました。

そして人気順位は、

 1位 にゃん太
 
 2位 ナイル
 3位 ハルカ


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ついに、にゃん太は
猫カフェ『にゃんこの館』

「人気ナンバー1」スタッフになった!!





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創作小説・詩
by utakatarennka | 2014-05-05 17:26 | メルヘン
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2013年の1月から、若者向けの携帯小説サイト
魔法のiらんどで作品を書き始めました。
猫カフェ『にゃんこの館』は、そこで連載しています。

携帯小説なので一文が短く、行間が広くなってます。
その為に文字フォントを大きくして掲載しました。


     【 魔法のiらんど 】

    


 Youtubeでご覧になれます

猫カフェ 『にゃんこの館』
〔前編〕
猫カフェ 『にゃんこの館』
〔後編〕





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 【 芸人にゃんこ ① 】

猫カフェ『にゃんこの館』

ナンバーワン・スタップのにゃん太は

日夜、自分の芸を磨いている

にゃん太の飽くなき探究心は

いったい何処からくるのだろう?

*


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にゃん太は仔猫の頃
母猫のタマと小さな時計屋さんで
飼われていました。

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その時計屋さんは
老夫婦が細々とやっているお店で
七十歳を超えた、おじいさんが時計の修理して
家計を立てている貧しい家でした。

それなのに、この家では
にゃん太親子の他に、柴犬のロンも
一緒に飼われています。

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――というのも、
おじいさんは『犬派』
おばあさんが『猫派』だからです。

日頃からおじいさんは
「猫は芸がない。人間の役に立たない」
と、文句を言います。

けれど、おばあさんは
「猫は芸がないけれど、見ていると心が和む」
と、言い返します。

ところが、ある日
お店の玄関の鍵を壊して、
ショーケースの時計を盗もうと
泥棒が入ってきました。

不審な侵入者に気がついた
柴犬のロンが大きな声で吠えて、
家族に知らせたので
泥棒は何も盗らずに逃げていきました。

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それ以来、おじいさんは
柴犬のロンをとても大事にして、
猫の親子には辛く当たるようになりました。

「この役立たずめ!」

おばあさんの見ていない場所で
タマは何度もおじいさんに
蹴飛ばされました。

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どんなに邪険にされても
タマ親子にはおばあさんがついています。

おじいさんに内緒でおやつに
煮干しや竹輪を食べさせてくれました。

「猫は役に立たなくてもいいんだよ」

そう言って、いつもニコニコ笑っていました。

優しいおばあさんのお陰でタマ親子は
この家で暮らすことができたのです。

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それが……
ある寒い冬の朝のことです。
いつもなら起きて、タマ親子に餌をくれる
おばあさんが、いつまで経っても起きてきません。

おじいさんが様子を見に行ってみたら……
おばあさんは布団の中で冷たくなっていたのです。
真夜中に心臓発作を起こして帰らぬ人となりました。

家の中でおじいさんがおばあさんの名前を
呼んで悲観にくれています。
生きてる時はケンカばかりしていたのに
いざ、相手が亡くなると……
寂しくて堪らないものなのです。

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お葬式やらで、家の中が忙しく
タマ親子の存在は忘れられて
餌が貰えない日々が続きました。

にゃん太はタマのおっぱいがあるので
平気ですが、タマは見る見る痩せていきます。

おじいさんが出掛けている間のことですが、
台所の戸棚から、煮干しの袋が見えました。
空腹に耐えられず、
タマは煮干しの袋を引っ張り出して
勝手に食べてしまいました。

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外出から帰ったおじいさんは
台所に散らばった煮干しを見て大激怒!

「この泥棒猫め!!」

タマとにゃん太は段ボールの箱に入れられて
自転車の荷台に乗せられてどこかへ
連れて行かれようとしています。

段ボールの箱の中で親子は
不安に慄いています。

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「かあさん、僕らはどこへ行くの?」
「分からない。どこかへ捨てに行くんだと思う」
「捨てられたら……ご飯は誰がくれるの?」
「野良になったら自分で生きて行くしかないんだよ」
「そんなの嫌だよぉー」
「猫は何も役に立たないから簡単に捨てられてしまう」
そう言って、タマは深いため息を漏らした。

「僕、怖いよぉ~」
仔猫のにゃん太は鳴きだした。

自転車をペダルを漕いでいたおじいさんは
ある建物の前で足が止まりました。

看板に、

 『猫カフェ・にゃんこの館』

と書いてあります。

そういえば、ばあさんが隣の町に
『猫カフェ』とかいう、妙なお店ができたと言ってたなぁ~
ここなら、仔猫くらいは貰ってもらえるかも知れん。
そう思い立って、段ボールからにゃん太を掴んで
おじいさんはお店へ入って行きました。

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階段を上がると、猫の形のプレートに
『welcome』と書いてありました。
中に入ると受付カウンターがあり、女の人が一人居ます。

「この仔猫は要らんので、
お宅で飼ってくれや! 名前はにゃん太だ!」


それだけ言って、受付カウンターの上に仔猫を置いて
さっさっと、おじいさんはお店から出て行った。

あっ気に取られた、この店のオーナーの美弥さんですが、
慌てて追いかけたが、自転車は凄いスピードで
走り去ってしまいました。

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カウンターの上の仔猫は
生後半年くらいの茶トラのオスでした。

利口そうな子だし、
オープン仕立てで、スタッフの猫も六匹しか居ないし
後、二、三匹はスタッフが欲しかったので
丁度よいとは思ったのですが……

しかも、あんな不躾で、気の短い
おじいさんに飼われていたら、
きっと仔猫が虐待されるのに違いないと
美弥さんは思ったからです。


そして、仔猫のにゃん太は
猫カフェ猫カフェ『にゃんこの館』のスタッフとして
正式に採用されました。





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創作小説・詩
by utakatarennka | 2014-05-02 17:34 | メルヘン
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2013年の1月から、若者向けの携帯小説サイト
魔法のiらんどで作品を書き始めました。
猫カフェ『にゃんこの館』は、そこで連載しています。

携帯小説なので一文が短く、行間が広くなってます。
その為に文字フォントを大きくして掲載しました。


     【 魔法のiらんど 】

    


 Youtubeでご覧になれます

猫カフェ 『にゃんこの館』
〔前編〕
猫カフェ 『にゃんこの館』
〔後編〕





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 【 天然にゃんこ『ハルカ・ハリケーン』 ② 】

これでもう、
猫カフェ『にゃんこの館』でトラブルはありません。

天災『ハルカ・ハリケーン』も起きなくて
平和になって良かったと胸を撫で下ろしていたら、

この二匹の様子がオカシイのです。

まず、イワンの元気が無くなってきました。
いたずらっ子で機敏な動きのイワンが動かなくなって、
餌も食べなくなってしまったのです。

なんだか、
寂しそうに窓辺でポツンと座っていたりします。

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いつものイワンとは明らかに様子が違うのです。

かたや、ハルカの方もゲージから出して貰っても、
何もする意欲がなく、ただ寝てばかりなのです。

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元気を失くして、二匹とも痩せてきました。
スタッフの猫たちも心配そうに見ています。

イワンもハルカも病気になってしまったのでしょうか?

そんな様子に見兼ねた
フロアーマネージャーの三毛猫のミーコさんが、
イワンにこっそり話しを聴いたみたいです。

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素直じゃないイワンは
自分の気持ちを話したがらなかったけれど、
どうやら「寂しい」ようなのです。

そして、ハルカにたずねると
「なんだかツマンナイ……」と溜息を吐いています。

ようやく合点した、
ミーコさんは美弥さんに事情を説明しました。

ちなみにミーコさんは人間の言葉を理解し、
美弥さんとならコミュニケーションができる
超天才にゃんこなのです。

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そして翌日から、
二匹はやっと同じ時間帯にホールに出して
貰えるようになりました。

いつ、また『ハルカ・ハリケーン』が起きないかと、
スタッフたちは冷や冷やしていたら……
みんなが見ている前でイワンがハルカのお皿に顔を突っ込みました。

ああっ!! 

また『修羅場』になるぞっと思っていたら……
なんと二匹は仲良く同じお皿で食べているではありませんか。

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イワンの餌もハルカが食べても怒りません。
二匹はピッタリと寄り添っています♡

――みんなは今まで気づきませんでした。

テレ屋のイワンは素直になれなくて、
わざとハルカにチョッカイを出していたのだし、
ハルカも餌を食べられて怒っていても、
決してイワンが嫌いな訳ではなくて…要するに…そのう…

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イワンとハルカはお互いを好きだったのです!

あの嵐のように激しい
『ハルカ・ハリケーン』はいわゆる痴話げんかという、
仲の良い牡牝の愛情表現のひとつだったみたい。

今回の処置で、
さすがの懲りた二匹はもう激しい
ケンカはしなくなりましたが、
時々、追いかけごっこをして
ストレスを発散しているようです。

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やっぱり仲間が元気ないのは、
みんなもツライ気持ちになります。

トムとジェリーじゃないけれど、
ハルカとイワンは仲良くケンカして欲しいと思った、
猫カフェ『にゃんこの館』のスタッフたちでした。


小さな嵐『ハルカ・ハリケーン』は吹き荒れても、
猫カフェ『にゃんこの館』は今日も快晴でっす♪



― おしまい ―





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   創作小説・詩
by utakatarennka | 2014-04-13 06:18 | メルヘン