― Metamorphose ―

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カテゴリ:詩集 瑠璃色の翅( 2 )

詩集 瑠璃色の翅 ②

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 【 流れ星 】

あ、
見上げた夜空に
流れ星が落ちていく
急いで願いごとを
心に描こうとしたら
瞬く間に消えていってしまった

ああ、
なんと儚い
あの彗星は何光年もかけて
宇宙を旅してきたのに
消える時は
あっという間だった

どんなに、
偉大なものでも
消え去る時には一瞬で
いっぺんの後悔も残さずに
存在のすべてを消去していく
そう潔くも哀しい

時として、
自然は人間たちに
大きな試練を与える
大地が揺らぎ海が牙を剥き襲った
多くの人命が奪われていった
地球にとって人間は
単なる消耗品でしかない

たとえば、
百人の人に非難されたとしても
無条件で自分を信じる者が
一人でもいれば
意思を曲げてはいけない
百人の敵より一人の味方の
愛に応えるべきだろう

結局、
自分を救えるのは
自分自身を信じる力だけ
それで十分
他人を救えると思う傲慢さが
人を傷つけてしまうから

だから、
一瞬で消える
流れ星に祈ったりはしない
自分の弱さを隠すために
人工の神に縋ったりもしない
私の神さまは私の中に

どうか、
自分を信じる力を――与えてください



 【 暗渠 】

地下に埋設された暗渠(あんきょ)の中には
一条の光も届かない
真っ暗闇の水路を
とうとうと水は流れていく

行くあても知らず
後ろから後ろから 押しだされて
暗渠の中を盲目的に進む水
ここから抜けだしたいと
水は叫ぶ
もっと光をください!

その暗渠は
かつては町を流れる小川であった

春になれば
川べりに植えられた桜の枝が散らす
薄桃色の花びらを浮かべて
ゆるやか流れていた

夏がくると
灼熱の太陽がギラギラ眩しい
水遊びをする子どもたちの歓声が聴こえ
小さな足と無邪気に戯れる

秋がくれば
幸せそうに肩を寄せ合う恋人たちが
川面にそっと笹舟を浮かべて
自分たちのゆく末を占っていた

冬になると
鉛色の天上から降ってくる
雪の妖精たちが優しく愛撫して
水の中に静かに溶けていった

小川にはメダカやタニシ
そんなものたちが
流れの中に息づいていたのだ

いつの間にか
地下に埋葬された小さな川
人々が歩く生活道路の下を
水が流れていることなんて
とっくの昔に忘れ去られていた

地上の汚物を呑み込んで
地下に押し流してくれている
暗渠の存在に誰も感謝などしない

反駁する余地もなく
卑しめられた暗渠の黒い水
それでも 閉塞した世界から
早く抜けだしたいと
光を求めて 求めて
水路の中を流れてゆく
やがて海へと押しだされた水
結局 そこしか出口がないのだ

光りが見えた瞬間に
暗渠の水は海水に交じった
それは解放ではなく
「融合」という名の消滅だった――



 【 オフェーリア 】

ナイフみたいな新月が
スカイの上で尖っていた

夜の帳は善も悪もなく
すべては欺瞞に充ちてくる

くしゃくしゃに丸めた紙切れ
書かれていた言葉は

 『 さ よ な ら 』

たった一言の決別だった
嗚呼 黒猫が横切っていくから

口に咥えたハートが
ぽろりと落ちて

闇の天蓋(てんがい)ふたりを包み
そのまま 魚のように眠る

ひたひたと 水に浸かっていく
白いオフェーリアの夢をみた

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 【 デジャ・ヴ 】

水溜りに映った 贋物の太陽
掌を伸ばせば 掴めると思った空色の毛布
わたしのHPはどんどん下がってく
生温い脱力感で 目を瞑る

極楽鳥の歌 極彩色の夢 
オルゴールのネジを巻いたら 
それが合図 ふたりの心は奏で合う
リズムはアダージョ ゆるやかに繊細に

溺れた愛の深さに 心が溶けていく
それは甘いキスで 目覚めた昼下がり
あなたの胸でみた白昼夢
デジャ・ヴ反復するロンド



 【 pulse 】

ひらひらと
群青の夜空に舞う
暗闇の蝶――蛾。
揺蕩うように 揺らめくように
滲んだ月に 白い影が踊る

「今宵の闇は深く
 あなたの声も聴こえない」

女は
蒼い月影のランプで手元を照らし
光るノートにコトバを打ち込もうとする
それは形容詞たちに
命を吹き込む作業だった

夢幻の辞書の捲れば
そこにはまだ知らない
真理があるはず

コトバは祈りではない

数多の波動 この身に受けて
パルス 脈拍 身体を巡る血液が
律動的に変化する フォルティッシモ

ちらちらと
誘蛾燈(ゆうがとう)の灯りが煌めく
暗闇の蝶――蛾。
儚くも 激しくも
焔に翅を焼かれ 墜ちていく

「深層に投げ込まれた
 あなたの言葉が牙を剥く」

彼女は
星屑の鏡に己を映し
内なる宇宙と会話する
そこにはコトバにならなかった
インスパイアが漂っていた

深く瞑想すれば
きっと見えてくるはず
創作に終わりはない

新たな1頁を書きこもう

月の瞬き 群青の空を照らす
パルス 符号 進化する思想たち
ニュートリノは光より早く!

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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-06-20 11:20 | 詩集 瑠璃色の翅

詩集 瑠璃色の翅 ①

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 【 メタモルフォーゼ 】

暑すぎた夏が終わり
賑やかだった蝉たちも死に絶えて
地中深く 沈黙の蟲(むし)となる

キャンパスに描かれた
自画像は完成されないまま
白く埃を被っていた

数々の葛藤が わたしを苛んで
ぐらぐらに揺らいだ 自尊心
 今は頭を抱えて 隅っこに蹲る

  The words change and evolve

  掴めない言葉を探して

やがて 糸を紡いで繭を作った
その中に籠もって 喧騒を遮断する
 瞑目して ゆっくりと時を撫でていく

  The creation continues metamorphosing
  My fight is not over!

  未知の言葉たちに命を吹き込む
  それは わたしの使命だから

繭の中では 自分との闘い
珠玉の言葉を追い求めて
   わたしの夏は終わらない

もう! 留まってなどいられない
滾るような焦燥感は 全身に熱を帯びて
わたしの殻を焼き尽くした

   Metamorphose!

   新しい生物に変わる

蛹(さなぎ)から 瑠璃色の翅の蝶になって
遥か あの虹を越えて
未知数の空を飛んでいこう



 【 闇の音 】

硝子窓の向こう側
暗闇の中で
蜉蝣(かげろう)の透明な翅(はね)が
月の雫のように光っている

 ―― ヤミガコワイ……

呟き声がした
わずかな物音まで
深い闇に吸い込まれていく

一枚の硝子に仕切られた
闇と光 陰と陽 死と生
見えない掌が掴もうとしている

禍々しい魔物
闇があなたを連れて行かないように
わたしは窓辺に立って
拒絶の背中で楯をつくり
闇からあなたを守っている


硝子窓の向こう側
大きな蛾が
幾度も硝子に打つかって
白い燐粉を撒き散らす

 ―― コドクガツライ……

あなたの溜息に
痺れるように瞼を閉じれば
未完成な魂が震えだす

一枚の硝子に仕切られた
喜と悲 幸と不幸 希望と絶望
連なり合った対極

深い闇の中で
あなたの指がそっと頬に触れた
覚悟を決めた人生があるのです
ふたり抱き合って
闇の音を聴いている



 【 トリコロール 】

   

画用紙に青いインクを零したら
晴れやかな空になった
青いフェルトに涙を零したら
透明の染みになった

道端の石ころにも成れない私は
砕けた夢を抱いて歩いていく

笑えないジョークに顔が引きつって
沈黙することで自分を守っていた
もうあの空には鳩は飛ばない
濁った空の色 混迷の青


   白

渇いた部屋には 白い壁とテーブル
褐色の珈琲に垂らしたミルクは
混ざり合わないまま渦を描いている

虚しく時を刻む時計の音が
私を寂しくさせるから
ねぇ なにか言ってよ

貴方の笑顔も想い出せなくて
視界からフェード・アウトされていく
消えてしまえばいい 拒絶の白


   

愛してると囁く貴方の声に
その頬を赤く染める

背後から抱きしめられて
高鳴るこの胸の鼓動

口移しで飲んだワインは
舌の先で媚薬に変わる

女は牝という獣になった
夜の闇を喰らう二匹の雌雄

この身に貴方が注ぎ込んだ色
情欲の赤は 血よりに赫く赫く

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 【 切子硝子 】

窓辺に置かれた
一輪ざしの切子硝子
複雑な光のプリズム
瞳の中の幾何学模様
ああ なんて楽園

だってわたしは
凡庸な人でしかない
透明の硝子は
見る角度で
その色や輝きも違ってくる
光のカレドスコープ
見れない局面が
まだまだありそうだ

限界はどこまでなんて
考えるのは止めておこう

地面に落とせば
美しい硝子細工も
一瞬にして 粉々に飛び散ってしまう
小さな破片は凶器となって
壊したモノに抗議する

この指から流れる血は
冒涜者への怒り

光を集めるほどの才能もない
壊れるほどの脆さもない
それでも輝くモノに憧れて
頭の中の光たちを
キーボードに打ち込む
哀しいほどに愚劣な人間

いつか いつか
完璧な図形を描きたい

そこから輝くモノが
溢れだすことを信じながら
ポチポチと……
不器用な指が流れていく



 【 月の棺 ―ツキノヒツギ― 】

月の光が燦ざめく
まだ春浅き夜更けのこと
女が独りで死にました
誰にもみとられず
たった独りで息絶えて
時計の針は零時で止まったままに

女は苦しまずに
うっすらと頬笑みを浮かべて
まことに まことに
静かな夜でございます

蒼白い唇には
紅いルージュを塗りましょう
細い頸には
銀のクロスの首飾りをかけて
冷たくなった躯を
黒いサテンのドレスで覆ってください

心に滲み込んだ執着は
すべて地上に捨てていくです
けれど女の蝸牛の奥の方には
むかし愛した男の
優しい声が残っていたから
哀しみも抱いてゆきましょう

三日月でつくった
月の棺 ―ツキノヒツギ― 
女の躯を乗せて
星の川に流してください
月の引力に引き寄せられて
ゆらゆらと宙(そら)へ昇っていきます

ああどうか……
どうか哀しまないでください
死は消滅ではなく
新たなる魂の旅路なのです
もう一度生まれ変わる
その日まで

生々流転の理(ことわり)を知識(し)る
原子に還り宇宙に帰依(きえ)すること
  
  ― eternal ― 

久遠(くおん)の刻(とき)を手に入れた

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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-06-19 20:06 | 詩集 瑠璃色の翅