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カテゴリ:詩集 瑠璃色の翅( 10 )

詩集 瑠璃色の翅 ⑩

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 【 なんでもない日 】

誕生日いがいは
お祝いの日じゃない
なんでもない日が
ずっと
毎日続いているけど
ぐっと耐えて生きていく

     *

わたしは今
自分という人間を
ふるいにかけている
何を残し 何を捨てるか
なにを創り 何を壊すか

最後に 
ふるいに残ったのは
小さなことばかり拘る
土塊のみたいな
自己顕示欲の塊だった

     *

いつまで経っても
幸せを実感できないのは
屈折した自己愛からくる
自虐趣味のせいだと
今日の日記に記録しておこう

     *

暗い人間ほど
明るい人間の
フリをしているのです

     *

落ち込んでしまったら
海底二万マイルまで沈んでしまおう
深く深く潜って
海の底まで着いたら
砂を蹴りあげて
いっきに浮上してみせる

     *

疲れたと呟いて
靴を脱ぐ
外から持って帰るものは
疲労とウィルスと孤独しかない

足の親指
爪が延びてきたから
パチンと爪切りで飛ばした
三日月に突き刺さって
真っ赤な血を流す

深爪しちゃった

     *

いつも投稿している公募に
久しぶりに入選できた
わずかだが賞金も貰える
さっそく 
欲しかった靴を
楽天で注文しちゃった
その日は世界一幸せな私です

     *

寝ても起きても
なんでもない日が続く
なんでもないってことは
平穏無事なこと
幸せとはそんなものだ

なんでもない日
ありがとう!



 【 垂直思考 】

地平線の彼方も
ここと同じ地面が続いているだけって
ことは分かっていても
認めたくない自分がいる

夢とか希望とか
そんな言葉で未来を飾ってみても
今日の続きでしかない
明日に期待しても何もない

あれれ 行動をする前に諦めてる?

現実がツマラナイのではなく
君の考え方が
ツマラナイだけってことに
そろそろ気づこうよ

水平思考だと迷いが多くて
自分を見失ってしまうから
目標に向って急降下
ジェットコースターみたいに

今こそ 真っ直ぐ垂直思考でいこう!



 【 表面張力 】

怒鳴りだしたい
衝動を
奥歯で噛みつぶす

瞼の裏に溜まった
悔しさを
ギリギリの精神力で
持ち堪えている

溢れそうな感情を
ふんばる
君の、表面張力

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 【 すみっこの力 】

光のあたらない
すみっこにこそ
きらりと光るものが
ひそんでいる

目立たなくても
すみっこの力を
侮ってはいけない
侮ってはいけない


 【 放射冷却 】

消し飛んでしまいそうな
この想いを
受け止めてくれる
熱が
そこにはなかった
冷たい水滴が頬をつたう


   ※ 放射冷却とは高温の物体から低温の物体にエネルギーが伝達される現象です。



 【 無人の街で 】

ひと足の途絶えた
深夜の商店街
わずかな気配にも
センサーが反応して
ひとりでに機械が喋りだす

イラッシャイマセ
パネルノ番号ニ、シタガッテ
操作シテクダサイ

番号ヲ選ンデ、
料金挿入菅口ニ、イレクダサイ

フルタイムロッカーヲ、
ゴ利用イタダキ
アリガトウゴザイマス

不特定多数の
誰かに向って話しかけてくる
無機質な機械たちの声が
暗がりから溢れだす
無人の街で



 【 I can fly 】

心が高くバウンドして
トランポリンの上で
ピョンピョン跳ねまわる

鉄棒をクルクル回って
天と地がひっくり返った
スニーカーで白い雲を蹴飛ばそう

鼻孔を開いて
大きく深呼吸をしよう
新鮮な空気が肺に流れ込んできたら
さあ! 口笛を吹くのだ

心の羽根が瞬(はばた)く!

  I can fly
   I can fly
    I can fly

    「空と口笛とわたし

        は

      響きあえる」


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創作小説・詩
by utakatarennka | 2017-07-04 13:55 | 詩集 瑠璃色の翅

詩集 瑠璃色の翅 ⑨

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 【 前触れ 】

砂地にのびる
影法師
不機嫌な男みたいに
息苦しくて
湿っぽい
気圧が下がってる
きっと
嵐の前触れだ


 【 カケラ 】

この掌の隙間から
零れ落ちた想い
記憶のカケラ
もう一度
組み立てて
私の心の中で
再現してみる
そんな 
私は詩人になった


 【 群青 】

小さな想いが集まって
優しい笑顔が溢れ出す
いっぱい夢を語ろうよ
みんなの声が木霊して
心に翼が生えてくる
さあ みんなで一緒に
駆けあがっていこう
群青の あの空へ



 【 taboo Word 】

君が天使なら
私が悪魔になって
その綺麗な翼に傷をつけよう

もしも君が悪魔なら
私が天使となって
君の罪に裁きを下そう

これは 君を傷つけるためだけ
ただ そういうゲームなのさ

理不尽は【 taboo word 】
もう 逃げ場なんかないんだ

世の中には善も悪もないのさ
在るのは悪意に充ちた
自己満足だったりして……

18782+18782=37564
イヤナヤツ+イヤナヤツ=ミナゴロシ
ほら 素晴らしい数式だろう?

全ての罪を懺悔するがいい
絶望の淵までゲームは終わらない

理不尽は【 taboo word 】
発狂しそうな太陽を投げつけた



 【 アスタリスク 】

この世の中には
不愉快な言葉で溢れかえっている

目を瞑っても
耳を塞いでも

棘のある言葉が
皮膚を突き破って
神経にグサグサ刺さってくる

ああ どうすればいい
目と耳が欝になりそうだ

無神経な奴らが多過ぎる
傲慢な奴らが幅を利かす
自己中な奴らに振りまわされて……

わたしの神経は
鉛筆の芯みたいに細く削れて
ポキッと折れてしまいそうだ

あははっ
と 
笑って誤魔化しても……

うわ~~ん
と 
大声で泣いてみても……

ジリジリと沸点に近づいている
このままでは
臨界点を越えてしまう!

神さま お助けください
わたしはバカですが
決して悪い人間ではありません

   ******

パスワードを
打ち込もうとすると暗号を
アスタリスクが隠してくれる

不愉快な奴らの言動を
すべて   
この「小さい星」で隠してしまえ!

   ******

見えなかった
知らなかった
気づかなかった

三題言い訳できっと逃げ切れる

憂鬱な雲が晴れて
明るい光が心に差し込んでくる
やっと解決策がみつかった

最後に
わたしの名前にも

   *******

そう絶対に逃げ切ってみせる

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 【 Window 】

ブラインドを上げて
窓を大きく開けた
そこから新鮮な空気が流れ込んでくる

青い空 鳥の囀(さえず)り 風の音
明るい陽の光 そこに希望があった
掌を伸ばせば届きそうな楽園を探して
次々と窓を開けていった わたし

希望を見つけるためのロジック

ひとつ ひとつ
窓を開ける度に
成長していくようだった
思考や確信に近づいていくのだと
そう思っていた

だが それは間違いだった
無駄に開かれた窓からは
冷たい風が吹き込んできて
私の心は
忽(たちま)ち風邪を引いてしまった

なにが正しくて
なにが間違いなのかも分からない
混沌(こんとん)とした議論の渦に巻き込まれて
いろんな意思の力に依って
私の論理が曲げられていく
矜持(きょうじ)が圧し潰されていく

そこに希望のロジックはなかった

ファイルを削除した
マウスを壁に投げつけた
パソコンのプラグを引き抜いた
架空世界のシンデレラ
お帰りはあちら――

心のWindowをひとつ閉じた



      【 天花粉 】

    子どもの頃
    風呂上がりには
    首
    脇の下
    おでこ
    に
    天花粉(てんかふん)を
    いっぱい
    叩いた
    真っ白に咲いた私
    と
    夏の夕暮れ


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〈「滝平二郎の仕事展」の作品〉 朝日新聞日曜版「天花粉」1974年http://www.asahi.com/photonews/gallery/130222_takidaira/3.html



創作小説・詩
by utakatarennka | 2017-07-03 23:06 | 詩集 瑠璃色の翅

詩集 瑠璃色の翅 ⑧

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 【 冬の吐息 】

凍てついた北風に
千切(ちぎ)れそうな私の耳が
ちぢこまって 蝸牛(かたつむり)

冬枯れた街には
緑も少なく 小鳥もいない
鉛のような 空が重たい

春がこないかなあ

声に出したら
一歩だけ 春が近づいた
そんな気がする 桜草

見えない季節を
毛糸の手袋で包み込む
白い綿飴(わたあめ) 冬の吐息



 【 混沌 ― chaos ― 】

凍てついた冬の坂道を 
転がるように落ちていく
石ころみたいな 
わたしのプライド
何が正しくて 何が間違いなのか
誰も教えてくれない
答えはクロスワードクイズ
空白のマス目を
自分で埋めていくんだ

     *

カオス テラ・カオス
大天使ミカエルは降臨せり
最後の審判は始まった
人々の額にはバーコード
善か? 悪か?
端末機で「確定」される
ならば偽善者はどっち?
善も悪も表裏一体
勝った方が善になる
リバーシブルに使い分けろ
讒言者(ざんげんしゃ)が耳元で囁く

     *

ウエブは若者たちの遊び場
足のない名無したちが踊り狂う
気に入らない奴らを断罪せよ
掲示板ではいつも魔女裁判 
火刑になったのは誰だ?
悪意の遠隔操作で
人の心を掻き乱す
卑劣者の匿名たちは
小さな箱に詰められて 
氷の海に流されろ

     *

ほら パッヘルベルの
カノンが聴こえる
美しい旋律に 心が躍(おど)る
さあ 俯いてばかりいないで
臆病な心のアンテナを 
目いっぱい広げてみよう
キミの宇宙は
きっと 
キミの心の中にある

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 【 夢想家の見る虹 】

虹の始まりが
何処なのか分からない

虹の終わりが
何処なのか分からない

出所もなく 湧きあがる
雨上がりのイリュージョン

七色の光のスペクトルを
キラキラと反射させて

空に大きく描いた輪っか
それは地球からの投げキッス

泣いていた空を慰めるために
不思議なマジックを見せてくれた

夢想家が空に放り投げた
砕けた夢を掬い上げて

七色のリボンを紡いで
まぁるくラッピングすれば

希望を失わないように
青いハンカチで涙を拭おう

晴れた空に虹が架かると
みんなの心に光が射すだろう



 【 残念BOXS 】

蝶々結びをむすべない女の子
ガリーファッションが似合わない
乙女ちっくに憧れてみても
アリスの影を踏んでいるだけの
君は残念な女の子さ

潮風に揺れるループピアス
耳の穴から広がる魔法陣に
男が避ける呪文が刻まれていた
今年の夏も収穫なしか
残念な結果でした

ペットボトルのコーラは
栓を抜いた瞬間が命なんだ
笑えないジョークに場がしらけ
炭酸ぬけた黒い砂糖水
みんなに無視されて ああ残念

残念が詰まった 残念BOXES
果たして「アタリ」はあるのだろうか
起死回生を神に祈りつつ
よーし「アタリ」が出るまで
ガラガラを回し続けるんだぞぉー



 【 擬態 ― mimicry ― 】

玄関の前で鍵を開けようと
ポケットを探っていたら
いきなり足元の落ち葉が舞い上がった
予測していなかったので 
わたしはすごく驚いた!

よく見ると
それは一羽の蛾だった
木の葉によく似た蛾
飛んだから蛾であると分かったものの
あの蛾が木に止まっていたら
見抜けなかっただろう
枯れ草の中に紛れていたら
絶対に分からない
それは見事な擬態であった

 ― mimicry ―

『擬態』という不思議なの生態
進化の過程で生まれた能力だろうが
なぜあれほどまでに
違うものに成りすまそうとするのか
それが生きる術だったんだろうか

人はどうだろう?
やはり擬態するのだ
集団の中にあって
目立たないように
人の意見に合わせて自己主張しないように
「仲間」という人の群れの中に擬態している
そうすることによって
他者からの攻撃をかわす
それを『隠蔽的擬態(いんぺいてきぎたい)』という

また ある時は
仲間の振りをして
虎視眈眈とチャンスを窺っている
誰かがつまずこうものなら
いきなり毒牙を剥きだし攻撃をする
徹底的に相手を叩きのめし
そのポジションを奪おうとする
政治家たちの権力争いがそうだ
浅ましき生き物の性
それは『攻撃擬態《こうげきてきぎたい》』というらしい

  ― mimicry ―

この不思議なの生態について
一羽の蛾を通じて考えてみた
擬態はしょせん卑怯な技のように思う
きっと 私も弱い自分を隠すために
いろんな擬態を繰り返しているのであろう

もはや 隠れることが
一番の自己主張だったりする
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創作小説・詩
by utakatarennka | 2017-07-01 15:18 | 詩集 瑠璃色の翅

詩集 瑠璃色の翅 ⑦

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 【 踊り子 】

赤と黒が点滅する
トランクルームの一室
思考する夜に
コトバは放射線を描き
空気中を飛び交っている

石膏の中の海馬は
熱を帯びて幻灯機のように
現在と過去を飛来させる
蛋白質 ガーディンは
シナプスをコード化

懐かしいメロディが
耳の奥 蝸牛を擽って
ああ スカーレット!
深紅のフレアーが
くるくると回りはじめる

踊っているのは 誰?
踊っているのは 私?

聴こえない振りをして
笑っただけ

名もない女は踊り子だった



 【 どんぐり 】

コートのポケットに
どんぐりが三つ
入っている

きのうの夕ぐれ
近所の公園でひろった
小さなどんぐりたち

てのひらの上で
ころころ転がしてみたり
両手で温めてみたりする

わたしのあしたに
どれかひとつでも
実を結ぶことを祈りつつ

もう一度
コートのポケットに
しまい込んだ

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 【 プラスチックな夜 】

汚れちまった悲しみに……
中也の悲しみは
なんだったんだろう?

彼は孤独人
人を欲っしながら
人を拒絶していた

誰にも理解されない
運命を受け入れた
その引き換えに
神から創作の種を与えられた

深層に潜む
妄想の中の わたしに会いに行く
彼女はいつも
泣いてる!叫んでる!怒っている!

解放されない言葉は 澱のように淀んで
寸断された思考は 赤く錆びていく

優しさなんか もういらない!
生きる方法より 楽な死に方を
激しい感情の起伏に疲れ果て
蓑虫みたいに 殻に閉じ篭る

灰色の孤独が骨に
染み込んで
神経を腐蝕させいく……

プラスチックな夜
干乾びた魂が震えだす
無機質な抱擁で どうか包みこんで!



 【 スイーツ♡ウインター 】

いそぎ足でやってきた
冬が
粉砂糖みたいな
パウダースノーを
街中に降りかけていった

私の黒髪にも白く積って
ガトーショコラみたい
綿菓子みたいな吐息が
凍える指先を温める
北風に飛ばされた落葉が
マカロンみたいに転がっていく

異国の森から届いたのは
メイプルシロップの小瓶でした
焼きたてのパンケーキに
たっぷりかけて
召し上がれ

幻冬の街に
降りそそぐパウダースノー
金平糖みたいに
きらきら光る
結晶に変わったら

スイーツな
とってもスイーツな
白夜の始まりです



 【 結晶 】

ひとつ ひとつの
哀しみと

ひとつ ひとつの
喜びを

透明の結晶にして

華のように
星のように

この躯に降り注げ

言葉にならないコトバを
小さく折り畳んで
胸の中にそっと仕舞う

悴む掌で温めた
白い吐息が
冬の情景へ溶け込んでいく

ひとつ ひとつの
哀しみと

ひとつ ひとつの
喜びを

透明の結晶にして

華のように
星のように

この躯に降り注げ


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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-06-30 21:01 | 詩集 瑠璃色の翅

詩集 瑠璃色の翅 ⑥

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 【 風の栞 】

夕暮れの窓辺
瑠璃色の切子硝子の一輪ざしに
梔子の白が映える
夕凪 無風状態になれて
心が弛んできたら
闇が迫る少し前 風が頬を渡る
どこからか声を運んできた

楽しい声 悲しい声
美しい歌声 断末魔の叫び
知らない街の言葉たち
風は旅人
世界中の空を彷徨っている

群青色に染まりゆく
今日という昨日に
新しい栞をそっと差し込む
瞬き 閉じてしまった頁たち
私は大事な思い出を
風の粒子に混ぜて飛ばしてしまった
螺旋を描いて舞い上がっていく

「サヨナラ」と言って
二度と還ってこなかった
大事だけど
忘れてしまいたい記憶もあった
風は知っていたんだ
感傷なんかで振り返らない
さようなら……

天空高く 地を這うように
縦横無尽に飛びまわる
心の頁を捲っていく風よ
その自由さに翻弄されながらも
背筋を伸ばして
立ち向かっていく

未来という栞を
挟む頁を私は探している



 【 メビウスの輪 】

メビウスの輪 
始まりも 終わりもない
時はループして 無限となる

愛することも 生きることも
この世は 何もかも笑える
追っているのは 幻想にすぎない

しょせん 人は独り
そう 完璧に孤独だから
ニヒリストは 絶対に泣かない

メビウスの輪 
喜びもない 悲しみもない
時空の魔女 年齢は永遠なのさ



 【 Empty Sky 】

鉛色の空に佇む
影法師がひとつ
アスファルトに落ちる
希薄な空気を呼吸をして
吐く血痰

地べたを這う風に
ゆらゆらと揺らめいて
逃げ込める隙間を探している

瑕疵な魂は
誰にも祝福されない
愛情の意味も知らずに
ちっぽけな存在を隠すように
隅っこで生きてきた
息を殺して……

灰色の孤独が
骨に滲み込んで
神経組織を浸食していく
すべての視界を遮る

わたしには
何処にも居場所なんかない

心に出来た
大きな洞には
時おり風が抜けて
ヒューヒューと
悲しい声で共鳴するから

この空の広さも
降りそそぐ陽の光も
小鳥の囀りさえ
実感できないままで
老いていく…… 

わたしの瞳には

Empty Sky

うつろな空しか
映らない


もう死んでもいいですか?

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イラスト素材屋「もずねこ」様よりお借りしました。http://mozneko.boo.jp/sozaiframe01.html

 【 手風琴 】

雲が流れて
空が澄み渡る
さわさわと街路樹が揺れて
葉っぱが一枚 宙を舞う
風の歌で季節が変わった

そんな時
優しい音に包まれてたい
晩夏のメランコリー

ぽろろん

音を奏でる
琴線を 掻き鳴らし
掻き鳴らして……
心の絃が揺れる度
美しい音が弾きだされる

ぽろろん

白いサンダル
街の風景が変わる
蛇腹の中に風を閉じ込めて
その鍵盤を指で触れると
柔らかな音を奏でる

手風琴
私は風に恋して楽器になった
過ぎ去る夏に さよならを


   ※ 手風琴(アコーディオン)



 【 レジリエンス 】

誰かの溜息で
紅く染まった紅葉
風に巻き散らされて
紅い絨毯が敷き詰められた
一歩 歩む度に
カサッ カサッ 
と、小さな悲鳴を上げる
その一枚を拾って
空に翳してみれば
紅い残像が
瞼の裏に焼きついた

季節を追うと
遠くへ 遠くへと
逃げていってしまうから
この寂しさは
何処へ捨てにいこうか

静謐な秋の日に
掌の中で光を放つ
朱色の実が甘く熟れてゆく
季節はいく度も再生しながら
真っ白に純化する
気持ちひとつで
寒い季節も越えていけると
折れない心
拳を握り
空を見上げて
雲の行方は風に訊けばいい


 【 楓 】

晩秋の頃
血を吐くように
楓は赫(あか)く染まる
握り拳ほどの肉塊
女は躯(からだ)に楓を孕(はら)んだ
命の蘇生
輪廻転生する魂
春になれば
再び芽吹いて
小さな掌を展(の)ばす


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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-06-27 10:39 | 詩集 瑠璃色の翅

詩集 瑠璃色の翅 ⑤

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 【 DREAMER 】

夢想家のわたしは
月に見惚れて
昼間の太陽に
手を翳し目を瞑る

いろんな型の
夢に囚われて
現実の厳しさに
夢が砕けてしまった

禍々しい月日が
粉々に砕いていった
わたしの夢たち

アスファルトの上に落ちていた
水たまりに沈んでいた
誰かのポケットで
小さく固まっていた

そんな夢たちを
今日も集めて歩く

わたしは――DREAMER

  夢追い人



 【 夜の雫 】

天に向かって 翳した掌
ちっちゃな指の隙間から
見える夜空

月と星 天上を照らす
蒼白く磨ぎ澄まされた星々は
夜の静間に息ずいて
光年の刻(とき)を数える
彗星のように 駆け抜けて 
やがて消えていく運命(さだめ)
きっと この星の光は
あなたには届いていない

朧げなる月よ
何故 わたしの心を見ない
もどかしさに身悶えて
星屑がひとつ消えていった

水面に広がる水紋
白く尖った新月のナイフが
心に突き刺さる

今宵の月は哀しくて
翳した掌も 指の隙間も
夜の雫に濡れている

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 【 針金の未来 】

針金の先端の尖った針が
心に突き刺さって血を流す
薄い膜に覆われた半透明の未来
触れると壊れそうで怖い

漠然と広がる未来は
わたしをいつも不安にさせる

指先に沁み込んだ漂白剤のにおい
こんなもので何も消せやしない
やじろ兵衛のバランスは
微妙な沈黙で保たれている

心はゆらゆら揺れながら
心地よいバランスを探している

進むのが未来なら止まっている
今も未来の断片なんだろうか
誰も知らない未知のステージ
未来は針金のように曲げられる

『 針金の未来 』 まだ構築されていない
その隙間を夢で埋めていくんだ

I demand it!
The future to hope sometime is made

いつか 希望する未来が創られる



 【 三日月ナイフ 】

三日月ナイフで
心臓に小さな穴をあける
そこから噴きでた
真っ赤な血で朝焼けを染めたい

滔々と流れる雲も
燦々と輝く星も
形容詞ばかりで
ツマンナイ

刺激が欲しい
パッションが欲しい
三日月ナイフで斬り裂け
ハラワタを抉り出せ

きっと
きっと
きーっと、

待っていれば、
天からミューズが舞いおりて
ストンと、
「霊感」が落ちてくる

――ああ、こんなものかと、

次は、
頸動脈で
ナイフの切れ味を試すのです



 【 夢の中へ…… 】

不条理な夢で目覚めた朝
もの憂い倦怠感で
頭の芯がズキズキ痛む

夢とか希望とかそんな言葉で
ちっぽけな人生を飾ってみても
掴めるものといえば
ほんのひと握りの砂だけ

現実をみろ
誰かの声が聴こえた
だから現実って な・に・さ

ここには必要なカードがない
湿った部屋はカビ臭くて
カーテンの色もくすんで見える
無風状態に慣れて心が荒んでい

ヘッドフォンを着けて
現実をシャットアウトする
もう誰の声も聴こえない

甘い砂糖菓子をひとつ
浅い眠りに誘われていく
いつか見た あのシャガールの
蒼い絵の中に溶けこんでしまいたい


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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-06-25 23:56 | 詩集 瑠璃色の翅

詩集 瑠璃色の翅 ④

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 【 月詠み 】
   
   赤い月

男の背中ニ 爪ヲ立て
傷口から滴ル血で
夜の月ヲ 赤く染めル
背徳の赤い月ヲ見てはイケナイ
月の狂気が わたしヲ惑わス

『 愛は全てを奪うこと 』

熱く滾ル 生命の水ヲ
この身ニ注ぎ込ンデおくレ


   青い月

青白き月の夜
交ざり合えない『 コトバ 』は
ため息になって消えていく
封印された『 コトバ 』が
月の雫に融けていく

哀しみの月姫
玲瓏(れいろう)なる青き月の光よ
その冷たい横顔は
千の夜の孤独を越え
ひとり天上を目指し昇りゆく


   黒い月

自然破壊 環境汚染 
そして核戦争
望み過ぎた人類は 
自ら墓穴に墜ちた
科学の力で 
神に近づこうとする人類を
嘲り嗤うかのように 
神が罰を与えた

草木は枯れ 水は干上がり 
空気は黒い毒ガスに
青い惑星は
生き物が死に絶え 
死の星になった
人類の累々たる屍が 
未来を呪って横たわる
地から這い出た蟲(むし)どもと 
貪欲な鴉が死肉に群がる

太陽は昇らない 
星々は瞬かない 
そこは常闇の世界
荒野を渡る風が 
引き裂くように啼いた
まるで地球の
断末魔の叫びのように 
人類の傲慢さに 
神は怒りの鉄槌を打った

人類の末路を
黒い月が見下ろしていた


   蒼い月

漆黒の闇の中
蒼い月が出ましたら
魔女の化身 
黒猫は月に嗤う
今宵 愛しい男に
呪いをかけませう
あなたを誰にも渡さない 
逃さない
どんなに足掻いても 
後戻りはさせないわ
月夜の接吻は 
何故か血の味がした

星屑も消え 
蒼い月は水面に揺れる
魔女の化身 
黒猫は月に啼く
今宵 
疵つけ合うように求めあう
あなたを恋い慕う 
この熱情は狂気となり
闇を引き裂き 
無限地獄へ堕ちていく
愛の刻印 
背中に深い爪痕を遺(のこ)します



 【 母胎回帰 】

ザアー ザアーッと
出しっぱなしのシャワーの音
激しい雨が 大地を撃ち付ける
街も木も人々も
礫のような雨の洗礼を受けている

この雨がどこまで続くのか分からないが
雨の空間に閉じ込められた街は
静かな不安に沈んでいく
水没した低地では
『 希望 』という 
藁をさがして
人々が縋りつく

激しく流れ込んだ水は
濁流となって すべてを呑み込み
潔く 呆気なく 押し流してしまう
小さな 『 優しさ 』なんか
あ という間に消えてなくなる

私は孤独だった
雨の音しか聴こえない
そんな部屋で猫を相手に暮らしている
一日に一度 温かいダージリンティを飲むことだけが
ささやかな生きる喜び

そんな中で
亡くなった母のことを考えていた
言いたい コトバがいっぱいあったのに……
何もいえずに見送った
おかあさん! 
思い出をギュッと抱きしめたら
いっそう 孤独な自分と対峙してしまった

滑り込める隙間なんかないんだ
ラプンツェルは待っているだけ
答えなんかみつからない
考えてみたって仕方ない

湿った空気だけが
宙ぶらりんの私を包んでくれる
だから 雨は嫌いじゃないんです

ああ 雨は休むことなく振り続けて
すべてを水没させてしまう
大地を呑み込んだ水脈は
羊水のように 温かく 静かだ
エビのように身体を丸め
胎児に還って 浮かんでいたい

小さなプランクトンが 
魚になった
這いずりながら 形を変えて 
人間へと進化していった
ホモサピエンス 憂鬱な猿

遥か昔 ナイルの上流から
流れてきた 小石
それは 時の証言者
母の子宮の中で
人類誕生 数億年の夢をみる

心の中にも雨が降る
私はその中に佇んで
雨の音を聴いていた
雨粒たちが
すべての穢れを洗い流していく
カタルシス 魂の再生

傘はいらない 
悔悛の雨に鞭打たれながら
その痛みを全身で受け止めて
一歩 一歩 前へ進もう

いつか 
私も新しい生命に変るから



 【 思考する夜に…… 】

夜の静寂(しじま)が
私を思考へと誘(いざな)う
仄暗い豆球がシーツの海を照らして
波打ち際には夜光虫のように
ラメ入りマニキュアが光るから

私の思考回路は小舟に乗って
大海原へと漕ぎ出した

困惑島(こんわくじま) 躊躇島(ちゅちょじま) 懊悩島(おうのうとう)へ
悩める小島を巡って行きましょう
それらの島を遊覧船のように
行ったり来たりと堂々巡り
明快な答えが出ないままに

思考は交錯して
混沌岬(こんとんみさき)の沖で座礁しまった

岩礁からセイレーンの
美しい歌声が聴こえてきたら
意識が朦朧とし始めて
ついに深海へと
思考の小舟が沈んでゆきます

柔らかな枕が私に
こっちにおいでと誘惑するから

  ……この思考は明日また考えよう

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 【 雨粒 】

降りつづく雨のせいで
部屋の空気が重く感じる
ポツリポツリと奏でる サティのピアノはけだるい
大きめのポットにダージリンティを入れて
ゆっくりと茶葉の広がる時を待つ

雨の匂いと紅茶の香りが混ざりあって
不思議なやすらぎを覚える
そんな雨の日の午後が好きだ

一粒の雨粒が水紋となって広がっていく

あの人から手紙がきた
それは家から少し離れたポストに入っている

まるで迷路のような複雑な記号で出来た
あなたの詩は いつも徒にわたしを悩ませる
『 僕はひどく優しいからとても罪深い 』
人の痛みを知ろうとしない 
あなたは一生優しい人のままで居られる

全てのノイズを遮って祠の中に閉じこもる
少しでも触れよう伸ばした わたしの手を
あなたは冷たく払い除けた
虚しく空を掴んだその手に 一粒の種をくれた
それは創作のエナジーとか詰まった種だった

良く育つように
良く育つように
そう言って わたしのために祈ってくれた

一粒の雨粒が水紋となって広がっていく

あなたから手紙がきた
それは一言添えるだけの絵葉書

熱いダージリンティを飲み終えたら
赤い合羽を着て出掛けよう 傘はいらない
雨の中いきおいよく水たまりを踏んで 
小走りで取りに行こう
家から少し離れたポストまで

手紙はポストから取り出した瞬間
雨粒たちに掻き消されて 
文字が読めなくなってしまった……
たぶん 
それはあなたのノートの切れはしに
書かれた複雑な記号だったかも知れない



 【 短絡且つ安易な思考回路 】

僕らの脳は杏仁豆腐で出来ている 甘くて軟らかい

ねぇ 顔文字は象形文字の進化型なんだって知ってたか?
火を発見したのはネアンデルタール人? どうでもいいけど

なみなみ注がれたコップの水は運ぶより ここで飲んでしまえ
夕暮れの鬼ごっこ 忘れ去られてあの子は座敷童になっちゃった

心の中で飛び跳ねてる夢たちを 風船につめて空に飛ばそう
きっとカラスが天まで届けてくれるさ それは希望だから
太陽に向けてかざした掌で 自分にチョップ!

生きることに意味なんか無い 毎日を更新してるだけ
TVと睨めっこ 先に笑い出した方がいつも勝ちなのさ


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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-06-23 22:49 | 詩集 瑠璃色の翅

詩集 瑠璃色の翅 ③

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 【 昼寝日和 】

窓を這う
ゴーヤの日除けに
蝉の声

首に巻いたタオルで
額の汗をふく

夏の昼下がり

冷たい麦茶と
熱を帯びた風
微かに揺れる風鈴

涼しい場所を探して
寝御座と竹枕

夏の昼寝日和


 【 のんべんだらり 】

のんべんだらり
日長一日 だらだらと
ソファーの小舟で
文庫本が櫂に
目が疲れたらひと休み

音楽の風に吹かれながら
好きな時間を小舟に乗せて
無為の海を漂流しよう

のんべんだらり
日長一日 ゆらゆらと
ソファーの小舟に
白い帆をあげて
今日は命の洗濯日和

 ― だって、大人は疲れているのです ―


 【 風の通り道 】

容赦なく
照りつける太陽から
逃れるように
白い日傘が路地の奥へと入ってゆく

打ち水をしたアスファルト
ゴーヤ棚が繁って日陰をつくっている
縁台でのんびり昼寝する野良猫
軒下には硝子風鈴が

どこからか涼しい風が吹いてきて
ちりんと風鈴を鳴らした



 【 尾骶骨 】

桃の谷間に平野がある
触ってみれば硬い
閉塞した孤独な骨
そいつは尾骶骨(びていこつ)という

ヒトは進化を繰り返す過程で
失われていった体の機能が
百個以上あると言われている
サルとヒトが分かれた時
二足歩行で尻尾が要らなくなった

私のお尻にも尾骶骨がある
別になんの役にも立たないけど
進化の名残りらしい
ただ 尻餅をついたら
飛び上がるほど痛い骨だ

時々 退化した尻尾の骨が
怒ったように訊いてくる
「シッポもないのに必要ないだろう?」
いいえ 要るんです

たとえば『尾骶骨』を考える時
ヒトは遥か時空の旅人となり
原始のジャングルに
想いを馳せることができる
恐竜やマンモスたち
地球に淘汰されて滅んでしまった
偉大な彼らにレクイエム捧げよう
ちょっぴり骨がブルーになるけれど……

どっこい!
進化し続けるヒトである私は
日蝕を見ることもできる
しかも私の尾てい骨は
月夜に野生の雄叫びをあげるんです

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 【 慟哭 】

突然の雨
駆け出して転んだ
擦りむいた膝小僧 
流れ出した赤い血
血が痛みを教えた 
私は泣いていた

混乱した頭の中 
思いつく神の名を叫んだ
子猫みたいに捨てられて 
道端にうずくまる 
こんな酷い雨
傘なんか役に立たない!

殺風景な壁に 
ロートレックを飾った
フレンチカンカンの踊り子たち
赤いルージュで 
わたしを嘲笑した

この肉を切って
祭壇に捧げよう
わたしの祈りを 
きっと神は聞き届けてくれるはず
ずっと泣いていた 
死ぬより辛い涙を流していた



【 コトバ 】

コトバが頭の中を舞っている
ふわふわと漂うように煌いて
それはジグソーパズルの1piece
寄せ集めて物語が創られる

いつも心象風景の中にいた 
本当の空の色を知らない
妄想の中で呼吸をしていたら 
自分を探せなくなっていた

鳥籠に入って鍵を閉める 
そこから恐る恐る 外を眺めていた
すべてはモノクロームの世界 
感情のえのぐで色を着けていく

昼間の月 忘れられた情熱
わたしの心にコトバが降ってきた
その1pieceを捕まえて
あなたの胸に突き立てる



 【 私ノ中の、不協和音。 】

ギィー、ギィーー。
ヘンな音ガするよ!
“頭の中” デ鳴ってヰル
壊れたヴァイオリンみたい。

可哀想な私
弦ノ切れたヴァイオリン
ヲ、捨てらレなくテ……
今日モ、かき鳴らス。



 【 みぞれ 】

空中に
放り投げた
悲しみは
風に吹きあげられ
みぞれ混じりに
降ってくる



 【 サイレント 】

無音の世界で
頭の中を行き交う コトバたち

白いシーツの波間から
しのび笑いの ベクトル

空気を刻む ガボット
微かな振動に 覚醒の兆し

小さなアクビ噛み殺す

ああ もう
お昼だというのに……

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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-06-21 23:32 | 詩集 瑠璃色の翅

詩集 瑠璃色の翅 ②

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 【 流れ星 】

あ、
見上げた夜空に
流れ星が落ちていく
急いで願いごとを
心に描こうとしたら
瞬く間に消えていってしまった

ああ、
なんと儚い
あの彗星は何光年もかけて
宇宙を旅してきたのに
消える時は
あっという間だった

どんなに、
偉大なものでも
消え去る時には一瞬で
いっぺんの後悔も残さずに
存在のすべてを消去していく
そう潔くも哀しい

時として、
自然は人間たちに
大きな試練を与える
大地が揺らぎ海が牙を剥き襲った
多くの人命が奪われていった
地球にとって人間は
単なる消耗品でしかない

たとえば、
百人の人に非難されたとしても
無条件で自分を信じる者が
一人でもいれば
意思を曲げてはいけない
百人の敵より一人の味方の
愛に応えるべきだろう

結局、
自分を救えるのは
自分自身を信じる力だけ
それで十分
他人を救えると思う傲慢さが
人を傷つけてしまうから

だから、
一瞬で消える
流れ星に祈ったりはしない
自分の弱さを隠すために
人工の神に縋ったりもしない
私の神さまは私の中に

どうか、
自分を信じる力を――与えてください



 【 暗渠 】

地下に埋設された暗渠(あんきょ)の中には
一条の光も届かない
真っ暗闇の水路を
とうとうと水は流れていく

行くあても知らず
後ろから後ろから 押しだされて
暗渠の中を盲目的に進む水
ここから抜けだしたいと
水は叫ぶ
もっと光をください!

その暗渠は
かつては町を流れる小川であった

春になれば
川べりに植えられた桜の枝が散らす
薄桃色の花びらを浮かべて
ゆるやか流れていた

夏がくると
灼熱の太陽がギラギラ眩しい
水遊びをする子どもたちの歓声が聴こえ
小さな足と無邪気に戯れる

秋がくれば
幸せそうに肩を寄せ合う恋人たちが
川面にそっと笹舟を浮かべて
自分たちのゆく末を占っていた

冬になると
鉛色の天上から降ってくる
雪の妖精たちが優しく愛撫して
水の中に静かに溶けていった

小川にはメダカやタニシ
そんなものたちが
流れの中に息づいていたのだ

いつの間にか
地下に埋葬された小さな川
人々が歩く生活道路の下を
水が流れていることなんて
とっくの昔に忘れ去られていた

地上の汚物を呑み込んで
地下に押し流してくれている
暗渠の存在に誰も感謝などしない

反駁する余地もなく
卑しめられた暗渠の黒い水
それでも 閉塞した世界から
早く抜けだしたいと
光を求めて 求めて
水路の中を流れてゆく
やがて海へと押しだされた水
結局 そこしか出口がないのだ

光りが見えた瞬間に
暗渠の水は海水に交じった
それは解放ではなく
「融合」という名の消滅だった――



 【 オフェーリア 】

ナイフみたいな新月が
スカイの上で尖っていた

夜の帳は善も悪もなく
すべては欺瞞に充ちてくる

くしゃくしゃに丸めた紙切れ
書かれていた言葉は

 『 さ よ な ら 』

たった一言の決別だった
嗚呼 黒猫が横切っていくから

口に咥えたハートが
ぽろりと落ちて

闇の天蓋(てんがい)ふたりを包み
そのまま 魚のように眠る

ひたひたと 水に浸かっていく
白いオフェーリアの夢をみた

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 【 デジャ・ヴ 】

水溜りに映った 贋物の太陽
掌を伸ばせば 掴めると思った空色の毛布
わたしのHPはどんどん下がってく
生温い脱力感で 目を瞑る

極楽鳥の歌 極彩色の夢 
オルゴールのネジを巻いたら 
それが合図 ふたりの心は奏で合う
リズムはアダージョ ゆるやかに繊細に

溺れた愛の深さに 心が溶けていく
それは甘いキスで 目覚めた昼下がり
あなたの胸でみた白昼夢
デジャ・ヴ反復するロンド



 【 pulse 】

ひらひらと
群青の夜空に舞う
暗闇の蝶――蛾。
揺蕩うように 揺らめくように
滲んだ月に 白い影が踊る

「今宵の闇は深く
 あなたの声も聴こえない」

女は
蒼い月影のランプで手元を照らし
光るノートにコトバを打ち込もうとする
それは形容詞たちに
命を吹き込む作業だった

夢幻の辞書の捲れば
そこにはまだ知らない
真理があるはず

コトバは祈りではない

数多の波動 この身に受けて
パルス 脈拍 身体を巡る血液が
律動的に変化する フォルティッシモ

ちらちらと
誘蛾燈(ゆうがとう)の灯りが煌めく
暗闇の蝶――蛾。
儚くも 激しくも
焔に翅を焼かれ 墜ちていく

「深層に投げ込まれた
 あなたの言葉が牙を剥く」

彼女は
星屑の鏡に己を映し
内なる宇宙と会話する
そこにはコトバにならなかった
インスパイアが漂っていた

深く瞑想すれば
きっと見えてくるはず
創作に終わりはない

新たな1頁を書きこもう

月の瞬き 群青の空を照らす
パルス 符号 進化する思想たち
ニュートリノは光より早く!

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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-06-20 11:20 | 詩集 瑠璃色の翅

詩集 瑠璃色の翅 ①

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 【 メタモルフォーゼ 】

暑すぎた夏が終わり
賑やかだった蝉たちも死に絶えて
地中深く 沈黙の蟲(むし)となる

キャンパスに描かれた
自画像は完成されないまま
白く埃を被っていた

数々の葛藤が わたしを苛んで
ぐらぐらに揺らいだ 自尊心
 今は頭を抱えて 隅っこに蹲る

  The words change and evolve

  掴めない言葉を探して

やがて 糸を紡いで繭を作った
その中に籠もって 喧騒を遮断する
 瞑目して ゆっくりと時を撫でていく

  The creation continues metamorphosing
  My fight is not over!

  未知の言葉たちに命を吹き込む
  それは わたしの使命だから

繭の中では 自分との闘い
珠玉の言葉を追い求めて
   わたしの夏は終わらない

もう! 留まってなどいられない
滾るような焦燥感は 全身に熱を帯びて
わたしの殻を焼き尽くした

   Metamorphose!

   新しい生物に変わる

蛹(さなぎ)から 瑠璃色の翅の蝶になって
遥か あの虹を越えて
未知数の空を飛んでいこう



 【 闇の音 】

硝子窓の向こう側
暗闇の中で
蜉蝣(かげろう)の透明な翅(はね)が
月の雫のように光っている

 ―― ヤミガコワイ……

呟き声がした
わずかな物音まで
深い闇に吸い込まれていく

一枚の硝子に仕切られた
闇と光 陰と陽 死と生
見えない掌が掴もうとしている

禍々しい魔物
闇があなたを連れて行かないように
わたしは窓辺に立って
拒絶の背中で楯をつくり
闇からあなたを守っている


硝子窓の向こう側
大きな蛾が
幾度も硝子に打つかって
白い燐粉を撒き散らす

 ―― コドクガツライ……

あなたの溜息に
痺れるように瞼を閉じれば
未完成な魂が震えだす

一枚の硝子に仕切られた
喜と悲 幸と不幸 希望と絶望
連なり合った対極

深い闇の中で
あなたの指がそっと頬に触れた
覚悟を決めた人生があるのです
ふたり抱き合って
闇の音を聴いている



 【 トリコロール 】

   

画用紙に青いインクを零したら
晴れやかな空になった
青いフェルトに涙を零したら
透明の染みになった

道端の石ころにも成れない私は
砕けた夢を抱いて歩いていく

笑えないジョークに顔が引きつって
沈黙することで自分を守っていた
もうあの空には鳩は飛ばない
濁った空の色 混迷の青


   白

渇いた部屋には 白い壁とテーブル
褐色の珈琲に垂らしたミルクは
混ざり合わないまま渦を描いている

虚しく時を刻む時計の音が
私を寂しくさせるから
ねぇ なにか言ってよ

貴方の笑顔も想い出せなくて
視界からフェード・アウトされていく
消えてしまえばいい 拒絶の白


   

愛してると囁く貴方の声に
その頬を赤く染める

背後から抱きしめられて
高鳴るこの胸の鼓動

口移しで飲んだワインは
舌の先で媚薬に変わる

女は牝という獣になった
夜の闇を喰らう二匹の雌雄

この身に貴方が注ぎ込んだ色
情欲の赤は 血よりに赫く赫く

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 【 切子硝子 】

窓辺に置かれた
一輪ざしの切子硝子
複雑な光のプリズム
瞳の中の幾何学模様
ああ なんて楽園

だってわたしは
凡庸な人でしかない
透明の硝子は
見る角度で
その色や輝きも違ってくる
光のカレドスコープ
見れない局面が
まだまだありそうだ

限界はどこまでなんて
考えるのは止めておこう

地面に落とせば
美しい硝子細工も
一瞬にして 粉々に飛び散ってしまう
小さな破片は凶器となって
壊したモノに抗議する

この指から流れる血は
冒涜者への怒り

光を集めるほどの才能もない
壊れるほどの脆さもない
それでも輝くモノに憧れて
頭の中の光たちを
キーボードに打ち込む
哀しいほどに愚劣な人間

いつか いつか
完璧な図形を描きたい

そこから輝くモノが
溢れだすことを信じながら
ポチポチと……
不器用な指が流れていく



 【 月の棺 ―ツキノヒツギ― 】

月の光が燦ざめく
まだ春浅き夜更けのこと
女が独りで死にました
誰にもみとられず
たった独りで息絶えて
時計の針は零時で止まったままに

女は苦しまずに
うっすらと頬笑みを浮かべて
まことに まことに
静かな夜でございます

蒼白い唇には
紅いルージュを塗りましょう
細い頸には
銀のクロスの首飾りをかけて
冷たくなった躯を
黒いサテンのドレスで覆ってください

心に滲み込んだ執着は
すべて地上に捨てていくです
けれど女の蝸牛の奥の方には
むかし愛した男の
優しい声が残っていたから
哀しみも抱いてゆきましょう

三日月でつくった
月の棺 ―ツキノヒツギ― 
女の躯を乗せて
星の川に流してください
月の引力に引き寄せられて
ゆらゆらと宙(そら)へ昇っていきます

ああどうか……
どうか哀しまないでください
死は消滅ではなく
新たなる魂の旅路なのです
もう一度生まれ変わる
その日まで

生々流転の理(ことわり)を知識(し)る
原子に還り宇宙に帰依(きえ)すること
  
  ― eternal ― 

久遠(くおん)の刻(とき)を手に入れた

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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-06-19 20:06 | 詩集 瑠璃色の翅