― Metamorphose ―

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カテゴリ:散文詩・散文( 20 )

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ある日 私たちの
住んでいた島(SNS)が沈没したので
仕方なく仲間と一緒に船で海にでた
自分たちの住めそうな
いろんな島を見て回った

そして小さな島を見つけた
仲間たちと離れ離れにならないで
住めそうな手頃な大きさの島だった
前に住んでいた島と地形も似ていたので
すぐに馴染んでとても気に入った

さっそくこの島に
自分たちの家を建てて
「群青」という旗を掲げた
歩きやすいように道を舗装したり
仲間たちと畑を耕したりした

前の島から持ってきた
いろんな作物の種を植えたら
どんどん芽がでて
あっという間に大豊作になった
私たちは有頂天になっていた
周りの空気も読めずに浮かれていた

そうしていたら
ヘンな噂を耳にした
他所の島に名無しさんたちが
札をいっぱい立てているというのだ
何だろうと見にいったら……
それは私たちの悪口を書いた札だった
誹謗 中傷 デマばかり
怒って引っこ抜いたら
名無しさんたちは別の場所に
また札をいっぱい立てた

もう放って置こう
自分たちの家に閉じ籠っていたら
いきなり石礫や火の付いた紙が投げ込まれた
窓からそっと覗いたら
手に松明を持った島人たちが
「出てこ~い、出てこ~い!」
と鬼の形相で怒鳴っていた
こんな所に出ていったら
どんな目に合わされるか分からない
怖くてブルブル震えた

島中に悪口を書いた札を並べられ
あっちこっちで火の手が上がる
「出ていけー、出ていけー!」
と大合唱だった
仲間の中にもさっさと逃げ出して
外側にいる島人の方について
かつての仲間を罵る人までいた

弱ってる奴らを叩くのは今がチャンスだと
便乗して悪口を書いた札を毎日立てる者
自分の立て札が人気を集めたと
得意になって大喜びした年寄りもいる
小さな島は真っ赤に炎上していた

私たちは神様(運営)に祈っていた
何を言われても
「私たちの運命は神様に委ねます」
と言い続けたのだ

それなのに
この島の神様は双眼鏡で見ていたが
何もしないで知らん振りだった
神様が決めたルールを守らない者をいても
罰することもなく 素知らぬ振りで
傍観者の如く この事態を静観していた

それで分かった!
島民のことなんか興味がない
この島の神様は機能していないんだと

やがて騒ぎも納まってきたが……
相変わらず
ヘンな人がこの島に上陸しては
市場の値段を弄って 上げたり下げたり
 引っ掻きまわす
騒ぎの後 島から去った人たちが
こっそり舞い戻って来ては
またまた炎上の隙を狙っている

ああ、やっぱり!
ここには神様も豊かな土壌もない
このままでは 私たちの育てた
大事な作物まで腐ってしまう!

私たちは再び小さな船で
海に出ることを仲間たちと誓った
ここで踏んだ轍は二度と踏まないように
静かに畑仕事を出来る場所を求めて
「群青号」はネットの海へ乗りだした

もう二度と戻らない
 
振り向かないで
ここでの出来事は
昨日の日記に書いておく

最後にひとつだけ あなたに問いたい

あなたたちは正義という名で
群青を弾圧しましたね
その手段は誰から見ても
正しいやり方だったと
胸を張って言えますか?

正義という石礫を投げつけた
 あなた その石礫には私怨という
毒が塗られていませんか?

 Good bye !

私たちはこの島を去ります

何があっても騒がずに見守っていてくれた
心優しい島人たち(一般ユーザー)に心から感謝します
お世話になった皆さんありがとう

 Good Luck!

こんな基地外島は懲り懲りです!┐(  ̄ー ̄)┌ フッ


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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-10-02 15:24 | 散文詩・散文
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2012年5月21日 ほぼ晴天
 本日待ちに待った「金環日食」だ
日食観察用メガネとスマホを片手に
あたしスタンバってます!

わくわくわく……

太陽と地球の間に月が入り込んで
太陽のふちだけが見える
「金環日食」という天体の現象は
なんと日本では25年振りだそうです

わくわくわく……

ブルーシートで眠るホームレスにも
高級車を乗り回すセレブさんにも
そして昨夜夫婦ゲンカをした あなたにも
「金環日食」は みんなに平等に見られます

わくわくわく……

次のチャンスは18年後だとか
まだ生きてるかな? あたし……
何だか外が薄暗いよ
いよいよ世紀の天体ショーの始まりか!?

(ツイッターを中断して、外へ飛び出す)

なんだか不思議な光景だった
近所の人たちがみんな出てきて
いっせいに空を見上げていた
こんな日本はまだまだ平和だなぁー

わいわいわい……

あっ! 段々と太陽が隠れてきました
観察用の眼鏡だとよく見えるけど
スマホだと日食らしく写らない
 もうすぐマックスだ!

どきどきどき……

おおっ ついに「金環日食」キターーー!
あれ? 観察用のメガネがどっかにいった
どこだ……? ゲッ! 近所のおばさんが 
勝手に あたしの使ってるじゃん(怒)

ぷんぷんぷん……

「金環日食」を見終わって家に入る
 取り合えず ツイッターに画像をUPした
ただの曇り空の写真でしかないけれど……
この眼で「金環日食」見れたから大満足

にこにこにこ……

ああ 観察用メガネは捨てないでください
6月6日に金星の日面通過が起こります
こちらの現象の方が実はレアで
次に見られるのは100年以上先だそうです

以上 「金環日食」レポート終了でした


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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-10-01 14:51 | 散文詩・散文

散文詩 [ペルソナ]

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一緒に生まれてきたはずなのに
生きていた痕跡が何ひとつ残っていない
私と同じ遺伝子を持つ 方割れ
誰の脳裏にも浮かぶことのない
母が亡くなった 今は
私だけが知っている 彼女の存在
そのことを誰かに聞いて欲しい

小さい頃には知らなかった
少し大きくなった私に母が告げたこと
「おまえは双子で生まれたのよ
 実は一卵性双子の姉がいたが
 生後五十日で死んでしまった」
……という出生の秘密

――それは紛れもない事実だった

もしも生きていれば
自分とまったく同じ顔を持つ人間が
この世にもう一人いたことになる
信じられない なんて不思議なことだろう
いろんな想像を廻らし 独り感慨に耽る

一卵性双子が生まれる確率は
1000の出産に対して4組だそうだ
うちの親にとって1000分の4の確率は
あまりラッキーではなかった
父は酒呑みで うちの家は貧乏だった
上に兄弟がたちがいて 私は末っ子
望まれてデキタ子ではないのだ

母は病院にも行かず
 自宅に産婆を呼んで出産をした
――逆子で双子の赤ん坊
それが私たち姉妹だった
難産の末 双子を産んだ母に
「もし ふたり育てるのが無理なら
 片方だけにお乳をあげなさい」
……産婆がそう言った

そして双子のひとりが
生後五十日でこの世を去った
その時 うちの親がどう思ったのかは
敢えて聞きたくもない!
亡くなった方割れには墓も戒名もない
ただ名前はちゃんと付つけていた
それで彼女の出生届けと死亡届けを
同時に役所に堤出したのだから……

しかし生まれて五十日しか経たない
赤ん坊の名前にどんな意味がある
果たして 死んだのはどっち方だ?
双子の姉なのか? この私の方なのか?
母ですら よく分かっていないかも知れない
結論として それはどっちでも同じだから
私はいったい誰なんだろう?

不完全なシンメトリー
左右対称の片方を失ったから
私はアンバランスで歪になった
いつも深層に巣食う この孤独感は
きっと方割れを失ったせいなんだ
元はひとつの遺伝子だった私たち
へその緒は 今でも冥界にいる方割れと
繋がっているように思えてならない

そんな私は
一卵性双生児のなれの果て

――ペルソナを被って生きていく


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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-09-04 15:25 | 散文詩・散文

散文詩 [想像の芽]

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小さい頃 私は
イチゴは木になるものだと思っていた
あの赤い実はサクランボのように
枝にたわわに実っていて
それを食べるのだと信じていた

それが
子ども会でイチゴ狩りに行ったら
広いビニールハウスの中で
イチゴは地べたから
にょきにょきと生えていた
ああ なんてこと……
想像していた『イチゴの木』とは
ぜんぜん違っていたから
私のイチゴへのロマンは
すっかり打ち消されてしまった

      *

こし餡に白い薄皮で
ところどころが斑(まだら)に透けている
饅頭のことを私の家では
「やぶれ饅頭」と呼んでいた

ある日「やぶれ饅頭」を買って来てと
母にお使いを頼まれて
いつもの調子で和菓子屋の店先
「やぶれ饅頭をください」と言ったら
お店のおばさんに笑われた

奥からわざわざ店主を呼んできて
もういっかい言ってみてとおばさんが
「やぶれ饅頭を……」私が言うと
ふたりして大笑いされた
それは「田舎饅頭」というのだと
お店の人が教えてくれた

恥かしい思いをして
無理やり名前を押し付けられた
「やぶれ饅頭」ではない
「田舎饅頭」は私の知っている
饅頭とはもう違っていた

だから
今でも私の心の中では
「田舎饅頭」ではなく
「やぶれ饅頭」のまんまで
絶対に訂正はしないつもりなのだ

     *

クリスマス前夜
枕もとに靴下を置いて私は眠った
朝起きて見たら
いつも靴下の中は空っぽだった

母に訊いてみた
「どうして、うちにはサンタが来ないの?」
「貧乏だからプレゼントなんか買えないよ」
内職の仕事をしながらそう言った
やっぱりそうか……
その言葉に心の中でグシャリと何かが潰れた

今にして思えば
もっと優しい嘘をついて欲しかった

     *

よく大人は子どもの間違いを正そうとする
知識というハンマーで夢や想像を叩き潰そうとする
正しい知識を与えることが夢や想像よりも
重要だと思っているからだろう

だけど……
そんな決めつけで『想像の芽』を摘まれたら
もう二度とその芽は育たなくなってしまう
子どもたちのちっぽけな間違いは
どうか見逃して欲しい

――正しいことが必ずしも正解とは限らない

子どもの間違いには真実にはない
柔らかな夢を含んでいるから
どうかその芽を摘まないでください


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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-09-03 14:58 | 散文詩・散文
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要らないものが多過ぎる!

下駄箱の中の履かなくなった靴
クローゼットしまい込んだ流行遅れの服
屋根裏部屋に放置された古い布団

断捨離にも体力が必要で
一日延ばしにする内に
どんどん増える 物・物・物!

要らないものが多過ぎる!

積んでるだけで読まない本の山
天袋に放り込んだ引き出物のお茶碗類
冷蔵庫に忘れ去られミイラになった野菜たち

ああ 息苦しい
いたる所に物が溢れかえって
大事なものが探せない

要らないものが多過ぎる!

箪笥の上で埃を被ったぬいぐるみ
買ったけれど使えない便利グッズとか
捨てるのが面倒で未だに鎮座しているブラウン管テレビ

全部捨てたい!
全部捨てたい!

何が要るのか 要らないのか
判断基準も曖昧になって
カオスな物たちに部屋を占領されて
自分の居場所が無くなってゆく

ああ! 
本当に捨てなくてはいけないのは……

要らないものでも
使わないものでも
勿体ないからと
なかなか捨てられない

私の中の“貧乏性”という性分だった――


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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-07-16 20:53 | 散文詩・散文
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結婚して18年目だった
子どもはふたり高校生と中学生
もう手は掛からないが
これからお金が掛かる
生活環境が変るのを嫌がって
子どもたちは父親と
家に残ることを選んだ
たとえ継母がきても
お金のない母親と暮らすよりは
マシだと考えたようだ
結果として私は
夫と子どもと両方に捨てられた

離婚した直後に
勤めだした会社で
その人は上司だった
とても几帳面な人物だと
職場のみんなが噂していた
部署替えで 
直属の上司になった時には
正直 嫌だと思っていた
しかし案外と 
部下には寛大な一面もあって
私の仕事のミスを見つけても
決して人前で叱ったりはしなかった
温情のある人だと感謝した

日曜日の昼下がり
ホームセンターで買い物をしていたら
偶然にその人と出会った
何となく挨拶をしている内に
お茶でも飲もうということになって
会社以外でのプライベートな
時間をその人と過ごした
どんな話をしたか
もう大方忘れてしまったが
家族は妻と息子がいると言っていた
定期入れから息子の写真を出して見せてくれたが
そんなものは私には興味がない
ただ 息子の顔が父親とよく似ているなあ
という印象だけが残った
どこにでもいるような平凡な家庭人だと思った
仮にも独身女性の私の前で
家族の話ばかりする男に
多少の苛立ちを覚えたことは否めない

歳月が経って
その人が定年退職になると噂で聴いていた
あれから何度か部署替えがあり
今では直属の上司ではなかったが
ホームセンターで偶然会って
幾度かお茶を飲んだこともある
相変わらず
家族と趣味の話を聞かされたが
まったく危険な香りのしないこの男に
半場 呆れながらも
どこか好感を持っていたようだ

定年退職の送別会で
みんなから贈られた花束に埋もれそうだった
こんないっぱい花束を持って
電車に乗るのは恥かしいと照れる
二次会が終わって帰る時 
タクシーを拾って一緒に乗った
しばらく乗っていると
気分が悪いと男は口元を押さえた
最後だということでたくさんの人に
お酒を勧められていたから
きっと 飲み過ぎたのだろう

私のワンルームマンションが近いので
家で休むように言ってタクシーを降りた
部屋に上がって
ソファーに寝転んで休むように勧めた
ネクタイが苦しそうなので緩めてあげると
背広のポケットから定期入れがポトリと落ちて
彼の息子の写真が見えた
酔いも手伝ったのだろうか
幸せそうな家族が妬ましかったのか
私は悪戯心で息子の写真の替わりに
自分の写真を定期入れに挟んだ
気づいた時の男の驚いた顔を
想像して ひとりほくそ笑んだ
小一時間もすると男はハッと飛び起きて
駅まで歩くと慌てて帰って行った
送別の花束を残したままで……

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その人が亡くなったと
社内の噂で聴いていたが
もう退職した人なので弔問は行かなかった
退職した日から 一度も会っていない
あんな悪戯をした自分自身にも後悔していた
まさか あの男の息子と偶然会うなんて
想像もしていなかった
私の顔を見た瞬間
彼は息を止めて凝視した
その時 私の写真を彼が見たのだと分かった
軽く会釈をして目を伏せて逃げるように
その場から立ち去ったが
背中には若い男の疑念の視線が纏わりつく
ああ きっと誤解されている!

少し時間が経ち過ぎたが
彼の家に手紙を届けた
本当は会って ちゃんと話をしたかった
私は死者にあらぬ汚名をきせてしまったのだから
だけど 息子の怒りの眼を思い出すと
臆病者の私には その勇気がでない
便箋に嘘を書いて行を埋めていく
「お父様は立派な上司でした」
「尊敬申し上げて折りました」
「亡くなられたなんて今でも信じられません」
たぶん これを読んだら
陳腐な手紙だと あの息子は鼻で笑うだろう
それでいいのだ
自分を卑しめて 死者の名誉を回復できれば
それで十分なんだ

私には家族がいない
定期入れから取り出せる幸せもない
あの男と家族が羨ましかったのだ
井戸の底に沈み込むような孤独の中で
暖かな日常に触れたいと
藁にもしがみつく想いで
太陽に向かって掌を伸ばそうとしただけ
ただ それだけだった

深い井戸の底で
溺れそうだった
大きな声で叫んだけれど
誰にも聴こえない
私の叫びが聴こえない
暗い水にのみ込まれて
井戸の底に沈んでいく


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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-07-15 20:29 | 散文詩・散文
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ある時 独り暮らしの友人が
「孤独死友の会」を作るんだと
楽しそうに話していた
もし そんな会を作ったら
「孤独死できないじゃん!」
と笑ったことがある

寂しいと呟く人の
孤独の意味を考えるとき
独りだから孤独なのか
誰にも理解されないから孤独なのか
必要とされない人間だから孤独なのか
たぶん思いつく理由はこんなものだろう

だが しかし……
これらの中には本当の理由はない

孤独は他者によって与えられるものではなく
自分の都合もしくは自身が原因であることも多い
たとえば自我に拘り 他者との調和を無視して
干渉されることを嫌い 自分で壁を築き
繋がりをシャットアウトしてはいないか?
その結果 気づかない内に
孤立しているということもあるのだ
さらに不幸な場合には家族にも見捨てられる
実際 私の知り合いにはこのタイプが一番多い

孤独なのを人のせいにして
恨んだり拗ねたりしているのだ

孤独になりたくないのならば
自分をオープンにして他人を受け入れること
つまらないジョークでも愛想笑いをして
些細なことで怒ったりしないこと
配偶者の愚痴や癇癪にも動じないこと
不愉快なことでも我慢するしかないのだ
そうすれは円滑な人間関係が生まれて
仲間という輪に入ることができる

いいや! 自分らしく在りたい 
と望むならば孤独も已む無し

孤独は自分自身を育てる時間でもある
たとえば詩人は孤独だと感じるとき
心の中に湧きあがってくる数多の感情をある
そいつを捕まえてコトバに変換すれば
それは詩と呼ばれて 昇華される
詩人にとって孤独は相棒みたいなものだから

しょせん 生まれる時も死ぬ時にも
人は独りぼっちなのだから
孤独を怖れることなどない

「私は独りぼっちで寂しい!」
堪らなくなったら声に出せばよい それだけでよい
自分で「孤独人」と認めてしまえばいいのだ
大丈夫 もう孤独じゃないよ
世の中には「孤独人」が わんさか居るのだから
その輪の中に入っていけるじゃないか

おめでとう!
これで「孤独死友の会」が設立できる


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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-07-15 18:20 | 散文詩・散文
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<br>そいつは道の真ん中に転がっていた
雨の日だった
合羽を着て自転車を漕いでいたので
私の視界は悪い
遠くから黒い物体が見えた時
壊れた黒い雨傘だと思った
もっと近づくと
黒い長靴に見えた
側を通り過ぎたら
真っ黒なカラスの死体だと分かった時
「ギャッ!」
思わず声をあげた

まさか
歩道の真ん中でカラスが死んでいるなんて
思いもしなかった
そういえば 
あれだけ空を飛びまわっているカラスなのに……
死んだカラスを見たことがない

どこへ いった?

     *

うちの近所に「ヒメちゃん」と呼ばれる野良猫がいた
キレイな三毛猫だったけれど
用心深い性格なので飼い主がつかなかった
町内の猫おばさんから餌を貰っていた
そのヒメちゃんが病気になった
餌も食べず ガリガリに痩せてきた
このままでは死んでしまうと
獣医に連れて行こうとしたが
逃げ回って捕まらない

そうこうした ある日
偶然 私はヒメちゃんを見た
家と家との間の狭い路地へ
ヨロヨロしながら入っていく姿だった
「ヒメちゃん!」
呼んだら 一瞬立ち止まったが
また路地の奥へ奥へと入っていったのだ

その日を最後にヒメちゃんの姿は消えた
衰弱していたから
どこかで死んでしまっているだろうが
ヒメちゃんの亡骸は……

どこへ いった?

     *

平和なこの日本でも
年間一万人近くの人間が
行方不明になっている
この社会情勢で人ひとり消えたぐらい
誰も気づかないってことか

就学年齢になっても所在の分からない
児童がたくさんいるらしい
出生証明書があるのに
死体もなく 痕跡も残さず消えた
神隠しにあったか
あの児童たちはいったい

どこへ いった?

     *

何も見えない
私は虚空へ目を凝らす
白い霧の国を彷徨っているのか
忽然と消えた声なき者たちは

どこへ いった?


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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-07-15 12:15 | 散文詩・散文
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私は道についてよく考える
別にどうってこともないような
つまらないことをいろいろと……

フェリーニの「道」という映画を
レンタルビデオで観たことがある

ジェルソミーナという 頭は弱いが心の美しい娘と
ザンパノのいう 粗野で暴力を振るう旅芸人の男
ふたりは旅をしているが
ある日 ザンパノが犯した罪のせいで
ジェルソミーナがおかしくなってしまい
足手まといになった彼女をザンパノは「道」に捨てる

この映画は衝撃だった!
道というのは人を捨てる場所だったことが……

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道に落ちているものベスト3

手袋 ハンカチ 空缶

煙草の吸殻もよく落ちていたが
最近はマシになった

道に落ちていたら嫌なものベスト3

犬のうんち ゲロ 死体

夕暮れ時に自転車で道を走っていたら
電信柱の陰にゴミ袋に入った生首がゴロゴロ
よく見たら マネキンの頭だった
ヘアーサロンで練習用に使っていたものだが
こんなものを道に置くなっ!

道に落ちていたら嬉しいものベスト3

現金 友人との再会 ラッキー

半年前に夜道で千円拾いました 超ラッキー!

        *

「道」では
いろんなものが交差している
人が 犬が 猫が 

要らなくなったものは捨てる
ゴミを 友情を 恋を

そして再び構築されていく
思い出と 夢と 未来と

道にはいくつもの選択肢がある
道を選ぶ 道を誤る 道に外れる

前進する限り 目の前に続く地面
それが「未知」なのだ

シンプルに 道ってなんだろう?
今日もそれを考えるために「道」を行く


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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-07-14 15:55 | 散文詩・散文
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鳥取砂丘を見ると
頭の中でハミングしてしまう曲がある

 月の沙漠をはるばると
 旅のらくだが行きました

異国の世界を唄った
この童謡が小さい時から好きだった

よく「月の砂漠」と書いてあるが
正しくは「月の沙漠」である
「沙」には「すなはま」の意味があり
詩は海岸の風景をモチーフに書いたらしい

それとリンクして
東郷青児の描く黒い瞳の美人画が
私の頭に浮かんでくる
なぜか青児の絵は砂のイメージがするのだ

安部公房「砂の女」は
砂丘の穴の底にある一軒屋に閉じ込められた男と
その家に住む寡婦との同居生活
蟻地獄のような愛憎ドラマか?
これは何度読んでも面白い!

余談だが
サン=テグジュペリの「星の王子さま」と
「砂の女」はどんな時も手放さなかった
私のお守りみたいな本である

       *

私が鳥取砂丘を訪れたのは
たぶん五年振りだったと思う
今日来て感じたことだが
あきらかに砂が減ってきている
砂丘の規模が小さくなったように見えた

「砂丘の砂を持って帰らないでください」

あちこちに書いてあるし
アナウンスでも流していた
……にも関わらず
スーパーの袋に砂を詰めている
中年のオヤジが居た
管理係員の男性に注意されると

「見なかったことにして!」

そう言って
袋に詰めた砂を持って
こそこそと逃げて行った

呆れて物も言えない
何んと 恥知らずなオヤジだ!
こういう人間がいるから自然が破壊される
たったひと袋の砂かも知れないが……
みんながやったらどうなると思う

砂丘の砂はさらさらと
粒子が細かくて きれいだ
園芸用に使うのかも知れないが
盗んだ砂で咲かせた花は
きっと憐れな花だ
それは地球の涙だから

最後は砂の美術館で
砂の彫刻「砂像」というのを見た
固めた砂を彫刻した像やレリーフなどで
どれも立派な作品ばかりだった

「ああ、砂って凄い!」

砂って芸術作品にもなるんだね

       *

鳥取砂丘
砂漠とは違う みずみずしい砂の広がり
海から吹いてくる風も心地よい
この砂丘で 私は今日
いろんなことを教えられた

小さな自分を脱皮できずに
もがき苦しんで 自信を失くした
もう駄目だと自分の才能を諦めかけた
私の存在なんて
しょせん砂丘のひと粒の砂に等しい

砂丘が私にヒントを与えてくれた

「自分の個性を信じること」

人より劣っていると分かっているなら
自分を好きになって もっと自分を褒めて
僅かな個性を伸ばすほか方法がない
ネガティブより ポジティブにいく
そうするより仕方ない

 投げてはいけない
 逃げてもいけない

創作者としての矜持を守るため
無心になって書くしかない
砂の上に写った自分の影を踏んで
一歩一歩 不確実な道を進もうとしている

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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-07-14 10:28 | 散文詩・散文