― Metamorphose ―

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   第80話 縁結び公社

 ブルブルブル……いきなり、ポケットの中で携帯が震え出した。マナーモード設定だったので音楽は鳴らないが、気持ちの悪い振動が身体に伝わってくる。
 携帯というやつは、所構わず鳴りだすから困ってしまう――。
 今、僕はトイレの便座に腰を下ろしているので、とても携帯に出られる状態ではない。昨夜、大学の仲間たち四、五人と『新年会』を居酒屋でやったのだが、そこで食べたものが悪かったのか? 強烈に腹が痛い。アルコールもかなり飲んだが、二日酔いではない、もしかしたら……ノロウィルスかも!?
 これは病院にいくべきか、便座の上で思案していたのだ。
「ああ、腹が痛い……」
 洗面台で手を洗いながら憔悴した顔で呟いた。するとまた、携帯が震えだした。
 チッ! 思わず舌打ちをしてしまう。ポケットからスマホを取り出し、画面を見たら知らない番号だった。出ようか出まいか、しばし迷ったが出ないとまたかかってきそうなので出ることにした。
『もしも……』
『あ、あんた誰?』
 えっ!? 何を言ってるんだ。自分からかけてきて《あんた誰?》はないだろう。
『そちらこそ、どなたですか?』
 ちょっと、ムッとした声で訊き返す。
『あら、ゴメン、ゴメン。こちらは〔縁結び公社〕という組織で、八百万の神様たちが集まって、人々の縁結びのお手伝いをさせて貰ってまーす』
『はぁー?』
 いきなり訳の分からない説明を聞いて呆れてしまった。声の主は中年以上の女性の声だった。
『セールスですか? 互助会なら、うちの実家が入ってると思うんで。僕、学生だし結構です!』
 そういって、着信を切ろうとした瞬間に、
『浅倉静香(あさくら しずか)さん、ご存知?』
『えっ……』
 腹痛よりもっと痛い、えぐるように、その名前は僕の心臓に突き刺さった。

 静香とは去年の暮れに喧嘩して以来、音信不通になってしまった。
 女子大生の静香とはバイト先のレンタルショップで知り合った。そこはDVDやCDを貸し出す大手チェーン店だった。
 僕より半年後に入った彼女に仕事の説明をしたのが縁で、シフトが同じ日には一緒に帰ったり、晩飯食べたりして自然と付き合うようになった。
 静香は素直で控え目な可愛い子だった。まだ付き合って二ヶ月だけど、彼女のことがすごく好きだったのに……。

 あれは、お店の『忘年会』の時だった。
 ほとんどバイトとパートで編成されている職場だったが数人の社員もいる。隅っこで大人しく飲んでいた、僕らふたりの所に社員の一人がやってきた。そいつはお酒とグラスを持って僕らの間に無理やり割り込んできた。そして、しつこく静香にお酒を勧めたり、酔ったフリして彼女の身体に触ろうとするんだ。
 カッとなった僕は「帰るよ!」と静香に告げたが、ぐずぐずして……彼女はすぐに席を立とうとはしなかった。
 帰り道、僕は機嫌が悪かった。
「どうして僕が帰ると言ってるのに、さっさと席を立たないのさ」
「だって、あの人凄く酔ってて心配だったから……」
「僕より、あんなヨッパの相手をしたいわけ?」
 僕は怒って、ずんずん足早で歩いた。
 後ろから「待って……」と彼女の声がしたが無視して歩いた。――それは男の嫉妬心だった。
 翌日、頭が冷めて静香に謝ろうとしたのに……突然、彼女が辞めたことをバイト先で知らされた。どういうわけか、メールも携帯も繋がらなくなって、それ以来、プツンと縁が切れてしまったのだ。

『――彼女に何か?』
『あのね、静香さんが〔縁結び公社〕の電話相談室に大好きな彼氏と急に縁が切れちゃって会えなくなったと……泣きながら相談してきたのよ。――それでよく調べたら、去年の暮の大掃除の時に、君たちの“ 赤い糸 ”を間違って切っちゃってたのよぉー』
『赤い糸って……?』
『それで“ 赤い糸 ”また繋いどいたから。――ちゃんと繋がっているか、携帯でテストしたのよ』
『携帯で分かるの?』
『君たち急に連絡とかできなくなったでしょう? それは“ 赤い糸 ”を切られた証拠なの』
 すぐ切るつもりが〔縁結び公社〕と名乗る変なおばさんの説明をきいてしまった。きっと静香の名前をきいたせいだ。……と、そうこうしてる内にまた腹が痛くなってきた。
『あ、もう切るから……』
『お腹が痛いんだろう? 昨夜、居酒屋で食べた餃子によく火が通ってなかったんだよ』
『――なんで、そんなこと知ってるの?』
『この〔縁結び公社〕は神様の出先機関だよ。何でもお見通しさ』
 自慢気なおばさんの声が耳に響く。
『神様の出先機関……なにそれ?』
『さあ、早くトイレにいっといれ。もうすぐ待ち人がくるよ』
『待ち人って?』
『あんたにとって福の神だ』
 そう告げてプツン切れた。〔縁結び公社〕って、いったいなんなんだ?

 僕がトイレから出てくると、洗面台に正露丸の瓶が置いてあった。こんなものを買った覚えはないと首を捻っていると、玄関のインターフォンが鳴った。
 カメラには恥かしいそうにうつむいた静香の顔が映っている。
 僕の心臓は激しく高鳴った、ゆっくりとドアを開けて。――僕の部屋に福の神(カノジョ)を招き入れた。




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   創作小説・詩
by utakatarennka | 2016-12-31 15:05 | 夢想家のショートストーリー集
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   第79話 偏食者のカタストロフィー

「こんなまずい飯が食えるかっ!」
 テーブルの上に並べられた料理を見るなり、夫の口からそんな捨てゼリフが吐き出される。そして家から出ていってしまった。行き先はどこかわかっている、ここから歩いて十五分先にある、夫の実家に決まっている。
そこへいけば、彼の母親が好きな料理ばかり並べて待っているのだ。

 結婚して一年、夫とはうまくいっていない。
 主な原因は私の作った料理が気に入らないことだ。一緒に暮らしてみてわかったことだが夫には偏食がかなり多い。野菜や魚をほとんど食べない、肉をメインに油っこい料理が大好き、味付けも濃い目の甘めだった。
 生活習慣病のリスクなど健康のことを考えて、私が野菜の煮つけや焼き魚などヘルシーな料理をつくると、きまって不機嫌になって、自分の実家へ帰ってご飯を食べさせてもらうという、駄々っ子ぶり。
 ひとり息子を盲愛する母親は、彼が食べたいといえば真冬だってスイカをさがすような人――。いつだって息子が好きなものだけを食べさせてきた。そんな母親に育てられた夫は、甘えん坊で自己中な子どもっぽい性格になってしまった。
 おまけに半年前に舅(夫)を亡くしてから、姑はひとり暮らしは寂しいからと、なんだかんだと用事をいいつけて夫を実家に呼びつける。だが、嫁である私には来なくてもいいという。
 このふたりの親子関係がコア過ぎて……とても入り込めない状態なのだ。
 夫は週に三、四日は実家で暮らし、夫婦のマンションにはあまり帰ってこない。ふたりの将来を夢を描いて結婚したはずなのに、こんなはずじゃなかった、夫は母親べったりのマザコンだった。
 なんども話し合ったが、夫は「おまえの料理がまずいからだ」というばかり、姑には「大事な息子にまずい料理を食べさせるなんて、あんた嫁失格よっ!」と怒鳴られた。
 その上、親戚中にメシマズ嫁だと風評してまわったので、みんなから冷たい目で見られている。
 夫の健康を考えて作っている料理なのに、なぜそこまで悪口をいわれなきゃいけないの? 

 ――ほうとうにバカらしくなってきた。

 好きな料理しか食べない、嫌いな食材が入ってるだけで、ふくれてすねる……それが、だいの大人のすることか? 私への当てつけか、実家でご飯を食べてくる夫と、それを歓迎する姑にも心底幻滅した。
 結局、料理をめぐる『嫁姑戦争』で敗北したのは私の方だった。
 マンションに帰らないからと生活費も入れずに平然としている夫に、ついに堪忍袋の緒が切れた。どうせ賃貸だし、こんな広いマンションの家賃は私には払えない、ついに自分の荷物だけまとめて一人で引っ越しする。
 その後、離婚の話しあいをしたが夫も姑も「離婚したら、世間体が悪い、出世にもひびくから……」と、それを理由に断固拒否された。
 別居したまま、私は自立した人生のために、正社員として働ける仕事に就いた。

 ――もういいや、こんなクソ親子は放っておこう!

 あれから十年の歳月が流れた。
 私は若者向きのキャラクターグッズを取り扱う大型店舗の店長をしていた。みじめだった結婚生活に終止符をうって、その後は仕事に打ち込んだ、その成果が認められて出世した。
 年俸も一流企業の課長クラスもらっている。マンションも買った、外車にも乗ってる。年に二、三回はバカンスで海外旅行だ。

 そんな私の元に、いきなり夫から連絡があった。
 どこで調べたのか私の店舗に電話があった、店員から「店長にお繋ぎします」といわれて驚いていたようだ。
大事な話があるというので、渋々ファミレスで会うことになった。
 わざと遅れていったら、夫は分厚いステーキにかぶりついていた。しばらく見ない間にかなり肥っている。たぶん20キロは体重が増えてるだろうか? おまけに顔が脂でギトギトして気持ちの悪いおっさんだ、奴を見た瞬間、鳥肌が立った。
 さっそく用件を訊いたら、「おふくろが脳梗塞で倒れて寝たきりになった。実家に戻って姑の介護をしてくれ」という。脳梗塞? 息子の方も血糖値、中性脂肪、コレステロール、血圧とぜんぶ高そうだ。「おまえは嫁なんだからやってくれ」マザコン亭主が勝手なことをいっている。
 元気なときは母親べったりで病気になったら人任せか……なんて薄情な息子なんだ。昔、私にやった仕打ちは忘れない、その後はひとりで生きてきた。どの面さげて『嫁』なんて言葉がいえるんだ!? 私はあまりの怒りに総毛立つ。

 今こそ、この男に長年腹に溜めていた、このセリフを吐き出してやる!
『マザコンのくせに、母親の介護もできないかっ! 偏食ばかりやってる、あんたも成人病で倒れるよ。そんとき私はしらない。自業自得ってやつだ!』
 そういって、さっさっと席を立った。

 この先、なにをいってきても聞く耳もたない。こっちは有能な弁護士を立てて、離婚の話しを勧めるつもりなのだ。今こそ積年の恨みを晴らしてやる。
 偏食、マザコン亭主、ざまぁーみろ!




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   創作小説・詩
by utakatarennka | 2016-12-29 14:55 | 夢想家のショートストーリー集
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    第78話 非モテ系男子4人が聖夜に誓ったこと!?

クリスマスなんか大嫌い! 毎年、この季節になると憂鬱な気分になる。
貧困アニメーターの俺に彼女なんかできるわけない。聖夜はひとりでゲームでもしようとプレステを起動させたら、スマホが鳴った。
「サトシ家にいる?」
大学のアニメ研究会のメンバーだったツトムからだ。
「なんだよ、クリスマスなのにおまえボッチか?」
つい口走った言葉に、気まずい沈黙が流れた。どうやらツトムを傷つけてしまったようだ。
「……そうか、俺もひとりなんだ」
自分からカミングアウト。
「そっか! じゃあ、今からチキン買っていくからゲームやろうぜ!」
「おう、ピザ注文しとくから~」
ツトムはウェブデザイナーでゲーマーなのだ。しょせん俺らは女の子には縁のないタイプだ。

クリスマスだというのに、野郎二人でゲームで盛り上がっていたら、チャイムが鳴った。ピザ屋だろうと出てみたら、意外な人物が立っていた。
「彼女のいないサトシなら、クリスマスでも家にいると思ってきてみた」
同じくアニメ研究会のメンバーだったシュン。
にこにこしながら、手に持ったクリスマスケーキを高く掲げた。
シュンの家はケーキ屋で、大学を卒業してから家業の店を手伝っている。こいつの趣味ときたら世界の遺跡を見て歩くこと、一年の内三ヶ月は海外で放浪している。そのせいで、きちんとした会社には就職できないのだ。こいつも聖夜のボッチ組だった。
「おまえも彼女いないくせによく言うよ」
「僕は自由が好きなんだ。いつでも世界へ旅立てるようさ」
「ツトムもきてるんだ。一緒にゲームやろうぜ!」
そして非リア充の三人は、ケーキやチキンを食べながら、楽しくゲームを始めた。うん、男同士のクリスマスっていうのも悪くないや。
「おまえら、一生彼女つくらない気なのか?」俺が訊いたら、
「俺はゲームで世界と繋がってるし、自分の好きなことに没頭したい。彼女なんか要らないし、結婚したいとか思わない」
ゲーマーのツトムがそういうと、シュンも自分の意見をいった。
「正直、女の子と付き合うのが怖い、バカにされないか、カモられないか、最後にフラらて失恋するのも惨めだし、やっぱしリスク高いよなぁ~」
俺は彼女が欲しいけど……お金も時間もないから、リア充なんて到底無理なんだ。夢は世界一のアニメ監督になること!

「メリークリスマス!」
突然、窓が開いてサンタクロースが部屋に侵入してきた。
「うわっ! だれだ!?」
「驚かせてスマン! 俺だよ」
サンタ帽と白髭を外したら、アニ研仲間のユウスケだった。
こいつは、アニメキャラクターグッズのお店で副店長をやっている。
「お店のイベントでサンタの格好してたんだ。ほいっ、クリスマスプレゼントよん!」
お店の売れ残り商品だという、アニメキャラのタオルやフィギュア、ゲームなどを配ってくれた。
「クリスマスに一緒に遊べる友達がいて嬉しいよ」
ついに男4人で聖夜を迎えることになった。
「たぶん、来年もこのメンツだろうな」
「女なんか要らない! 俺の嫁は二次元にいる」
ユウスケは二次元キャラが大好きなのだ。
「実際、うちの兄貴みてたら、結婚して幸せになったとは思えない。給料はすべて取り上げられて、わずかなお小遣いでやりくりして、休日もイクメンとか、育児と家事をやらされてる。その間、嫁さんは息抜きに、女子会でホテルのランチ食べてるんだぜ」
「どこの家でも女の方が強いからなぁ~」
うんうん、4人の男が頷く。
「家族のために働いてきたって、年取って定年になったら、家では生ごみ扱いなんだぜ! 結婚とは奴隷契約! 結婚なんか真っ平だ! 」
そう言い切ったユウスケに、俺たちも内心同意していた。

「結婚できなくても、自由がいい!」
「そうだ! そうだ!」

「結婚できなくても、夢を追いかけたい!」
「そうだ! そうだ!」

「結婚しなきゃあ、ゲームがやり放題だ!」
「そうだ! そうだ!」

「結婚できなくても、俺には二次元があるぞ!」
ユウスケが気炎吐くと、
「いやぁ~二次元はちょっと……」
「俺はやっぱり三次元がいいかなぁ~」
さすがに、だれも同意しない。

「結婚できなくても、自分たちの人生を楽しもうぜ」
「そうだ! そうだ!」
「この四人で年をとってからも、支えあって孤独死しないように助けあおう」
「おうっ! 孤独死友の会の結成だぁー!!」
「よっしゃ! よっしゃ!」
そして、非モテ系男子4人が聖夜に『孤独死友の会』の結成を誓ったのである。


その頃、クリスマスの街では――。
「ぜんぜん男が歩いていないよぉー」
短いスカートに生足のギャルが公園のベンチに座っていた。
「こんな可愛い女の子が二人、ナンパ待ちしてるっていうのに……」
「ボッチの男さがしてまーす!」
「寒いし、ラーメンでも食べて帰ろう」
「せっかくオシャレして街に出てきたのに、ねぇ、みんなカップルなの?」

「リア充爆発しろ!!」

どうやら需要と供給のバランスが上手くいっていない、クリスマスの夜でした。




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   創作小説・詩
by utakatarennka | 2016-12-26 14:50 | 夢想家のショートストーリー集
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   第77話 モルフェウス

 僕の天使の話をしよう。
 君が僕の家にきたのは去年のクリスマス・イヴのことだった。
 いつものように大学に通い、レンタルショップのアルバイトを終えて、自宅であるワンルームマンションに帰って来たら、僕の部屋に君が居たんだ。
 君は男か女かもよく判らないが、僕の掌に乗るサイズで白い裸体を隠す薄物を羽織って、背中には小さな翅が生えている。そう昆虫みたいな透明な薄い翅だった。
 実体としては妖精に近いように思えるのだが、そんな君に取り合えず〔angel〕と名付けて〔僕の天使〕と呼ぶことにした。
 蜂のように僕の周りをブンブン羽音を立てて飛び回る君に、最初はうっとうしくさえ思えたことは事実さ。でもね、君はとても美しい声、いや音かも知れないが……僕に聴かせてくれた。その声を聴く度に、まどろんでいつの間にか眠ってしまう、そう赤ん坊みたいにすやすやと――子守唄みたいに心地好い旋律だった。

 僕らは同じ部屋でずっと暮らしていたが会話すらなかった。
 君はしゃべらないけれど、空気を微かに揺らす、その翅音から君の感情が手に取るように僕の脳に伝わってくるから――言葉なんか必要なかった。
 僕も君もお互いの領域を荒らさないように、尊重し合って小さな部屋で呼吸をしていた。けれど窮屈だなんて思っちゃいない、君が居ると僕は寂しくないし、すごく癒されているんだ。いいようのない幸福感が僕を包み込み、この部屋から出て行きたくなくなる。
 時々、君が僕の肩にとまって、奏でる天使の歌に僕の魂は昂揚してふわふわと空中を漂いたくなってくる。
だから、君は〔僕の天使〕なんだよ。

 ――輪を描くように繰り返される日々。
 僕は目を覚ますと大学へ通い、レンタルショップのアルバイトを終えて、ワンルームの部屋に帰るという単調な日々の繰り返しだった。
 ただし、それらの行動をした自覚はなく、疲労感も全くない、ただ記憶の海馬がそうだと僕の頭の中に描くから実体験だろう。時々、僕の記憶が途絶えるのは同じ生活を繰り返しているせいかもしれない。
 以前、銀色のスクーターを僕は持っていたように思う。いつからだろう? なくなってしまっている。そういえば、携帯電話の日付と時計もずっと止まったまんまで――2015年12月24日 PM10:18――無限ループのような毎日、一秒として時計の針が進んでいないのは、なぜだろう?
 そして、僕の天使……いや、君はいったい何者なんだ?

 或る朝、僕の頭の中に不思議な声が聴こえてきた。
「さあ、もう目覚めなければいけません」
「――えっ?」
「あなたは目を覚ますのです」
「――君はだれ? 僕なら起きてるよ」
「いいえ、夢の世界ではなく。現実の世界におかえりなさい」
 まるで天上から聴こえてくるような美しいソプラノだった。その声はたぶん女神のような尊い人の声なのだろう。
 あっ! 僕の身体がふわりと浮きあがった。あれっ! 部屋の中に君がいない。いつも部屋の中を飛び回っている君の姿が見当たらない。
「僕の天使はどこなんだー!?」
 大声で叫んだ。その時、知恵の輪が外れるように、僕の目の前がパッと明るくなっていく……。



「うぅぅーん」
 伸びをするように身体に力を漲らせて、僕はゆっくりと瞼を開けた。
 白く無機質な空間である――どうやら、そこは病院のようだった。白衣を着た医師と看護師が二、三人で僕を取り囲むようにして覗きこんでいる。
「○○さん、目が覚めましたか?」
「一年振りに意識が戻った!」
「凄い、これは奇跡だわ」
 そんな会話が矢継ぎ早に交わされている。僕は何のことか分からずに瞼を瞬いていた。その時、病室のドアが開いて、だれかが駆けこんできた。
「○○!!」
 たぶん、名前と思われる固有名詞を発し、僕の手を握ってぽろぽろ涙を流している。どうやら、その女性は僕の“お母さん”のようだ。

 意識が戻った僕は周りから詳しい事情を聞いた。
 去年のクリスマス・イヴの夜、銀色のスクーターがトラックと接触、スクーターは大破して、道路に投げ出された僕は頭部を強打して昏睡状態に――こんこんと眠り続けていたが、一年後のクリスマス・イヴに目覚めたのだ。
 僕の身体は日々回復して、リハビリを始めて歩けるようになった。もう少しで退院して社会復帰できそうだ。
ただ、ひとつ、僕はまだ自分の名前を取り戻していない。
 周りが僕の名前を呼んでも、いまいちだれのことだか分からない。自分の名前を自覚できずにいる。たぶん、それが戻ったら君との記憶もリセットされて全部消えてしまいそうな気がするんだ。――あの朝、僕に目覚めることを促したのは君だったの? もしかしたら、君は『僕の魂』が黄泉の国の逝かないように、ずっと守ってくれていたのかなあ?
 僕の頭の中に新しい情報や記憶が増えてくる度に、〔僕の天使〕の記憶がだんだんとかすれていく……。
 単調な日々だったが、僕にとっては幸せな時間だった。天使の君と過ごした、夢の中の僕らの世界――。
 
 僕の記憶が消えてしまう前に、僕の天使の話を聞いてくれないか?


   ※ モルフェウスとは夢の神のことです。 
     古代人の間では夜と眠りと夢と死は一つの輪をなしており、モルフェウス自身が眠りの神とされています。
     ちなみにモルフェウスは『モルヒネ』の語源と言われています。




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ピエール=ナルシス・ゲラン 作『モルフェウスとイリス』(1811年)
モルフェウス(夢の神)をイリス(虹の神)が起こそうとしている。




   創作小説・詩
by utakatarennka | 2016-12-25 14:32 | 夢想家のショートストーリー集
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    第76話 愛のサンタ♪

「メリークリスマス」
 いきなり暗がりから声が聴こえてきた。
僕はバイト帰りの道を一人で歩いていたが、その声は僕以外の誰かにかけたものだろうと思って無視して歩いていた。
「ちょっと、三輪守くんだよねぇ?」
「はぁ? そうだけど……だれ?」
 自分の名前を呼ばれて驚いた。振り向くと若い女が立っていた。
「あたしサンタだよん」
 見れば、真っ赤なサンタ風の超ミニスカートをはいて、頭にはサンタ帽を被っている。化粧の派手な女で居酒屋の客引きか、キャバクラ嬢かもしれない。
 ひょっとしたら悪質なキャッチセールスかも、あんまり関わりたくないので僕は足早に歩いた。
「ちょっと、ちょっと待ってよ。シカトはないでしょう?」
「な、なんですか? 僕は急いでるんです」
「嘘つけ。彼女もいないくせに帰っても部屋でボッチじゃん」
 うっ! 図星だ。だが、ムッとした。
「そんなの関係ないでしょう? 君は……知り合いでもないのに馴れ馴れしくしないでくれ」
 僕が怒るとその女はニヤリと笑った。いけすかない奴だ!
「守くんって、彼女いない歴三年だったよね」
「うるさい!」
「あははっ、あんたって2ちゃんねるで『クリスマス爆発しろ!』とか書き込むタイプでしょう」
 いったい、こいつは何者なんだ。
「……だれかに頼まれたイタズラですか?」
「だから、あたしは愛のサンタだよ。クリスマスに彼女のいない、さみし~い男の子に愛を運んでるんだってばぁ~」
 どうもメンヘレみたいなので、これ以上相手にしないでおこう。
「あっ、手に持ってるの、それケーキ?」
「そうだけど……」
 僕のケーキをギラギラした目で狙っている。

 僕の実家は祖父の代から老舗のケーキ屋である。
 上京して大学で勉強していたが、中退して、今はお菓子作りの専門学校へ通っている。元々勉強よりケーキ作りが好きだったし、ある理由で大学を辞めようと決心した。それは当時付き合っていた彼女のひと言だった。
 彼女はスレンダーなスタイル美人で、嫌われないように必死だった。家業がケーキ屋なので『門前の小僧』の僕はケーキ作りが得意だし、スイーツ好きの彼女のためにデートの度にケーキをプレゼントした。
 僕の焼いたケーキは美味しいと大喜びの彼女だったが、ある日――。
「守とは別れる!」
 いきなり言われた。
「えっ! どうして? 僕のどこが嫌いになったの?」
「あなたのケーキが美味しくて、私、5キロも肥ったのよ!」
「まさか?」
 そういえば、付き合い始めた頃に比べてポッチャリしてる気がする。
「気にするほど肥ってないよ」
「いいえ! 守の焼いたケーキは女の子をブタにするのよ」
「そんな言い方はひどいなあー」
「もうお別れよ! 私、これ以上肥りたくないの」
 そんな理由で僕はフラれてしまった。それなら大学中退してお菓子の専門学校に通うことにした。僕の焼いたケーキは女の子を肥らせるくらい美味しいのだという自信があったからだ――。

「メッチャ美味しかったぁー」
 僕から引ったくったケーキを全部平らげて女サンタは満足そうだった。眉つばだが、彼女はサンタクロースの孫娘らしい。
 僕がバイトしているティー&スイーツのお店のマスターにクリスマスだからとケーキを持って帰らされたが、自分で焼いたケーキを自分で食べるのもなんかなぁ~と思っていたから食べてくれる人がいて良かった。
「ホントに守くんのケーキは最高だよ」
「そうかい」
「お礼に素敵なプレゼントあ・げ・る」
「なに?」
「それはひ・み・つ」
 いちいち勿体つけたがる、ウザイ女だ。
「教えろ!」
「じゃあね。バイバーイ」
 女サンタがスッと目の前から消えてしまった。
 どこかでシャンシャンと鈴の音が聴こえたような気がしたが……僕は首を傾げながら自分の部屋へ帰っていった。
 ドアの前でポケットから鍵を探していると、背後で人の気配を感じた。

「あの……」
 若い女が立っていた。その人はティー&スイーツのお店の常連客のひとり。二十歳くらい、色白で化粧気もなく、ちょっとポッチャリ系だけど純朴な感じがする人だ。
「三輪守さんですか。私、あなたのケーキの大ファンなんです」
「そうだけど、ありがとう」
 ケーキを褒められると嬉しい。
「実はクリスマスケーキを作って欲しくてお願いにきました」
 マスターに住所を訊いて、僕に直接注文にきてくれた。
「予算は幾らくらい?」
「ちっちゃくていいんです。だって、私ひとりで食べるんですもの」
「そうですか」
 その返答に熱く彼女を見つめてしまった。
「僕もクリスマスはひとりです」
「良かったら、ご一緒にケーキ食べてくれませんか?」
 そう言った後に、彼女の顔が見る見る桜色に変わった。なんて可憐な乙女なんだ!
 僕らはティー&スイーツのお店で一緒にクリスマスを祝う約束をした。もう来年からボッチのクリスマスは来ないような気がする。
 なぜだか、彼女が僕の『運命の人』って感じがするんだ。



「あのふたり上手くくっつきそうだぜぇ」
 咥えタバコにグラサン姿のやさぐれトナカイが言うと、
「女の子は性格も良いし、守とはお似合だよ。――けど結婚したら、彼女が『幸せ激肥り』するってことは、ナイショさ」
「あははっ、ボッチでよりマシだろう」
「世の中には恵まれないガキより、モテない男の方がずっと多いんだ。あたしからのプレゼントは愛だよん」
「愛のサンタ♪ イェーイ!」

 降誕祭の夜、超ミニスカートの女サンタは、相棒やさぐれトナカイのソリに乗って、ボッチ男子に愛のプレゼントを届けてゆくのです。




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   創作小説・詩
by utakatarennka | 2016-12-24 14:22 | 夢想家のショートストーリー集

貴船神社 31

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貴船神社


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貴船神社(きふねじんじゃ)は、京都府京都市左京区にある神社。
式内社(名神大社)、二十二社(下八社)の一社。
旧社格は官幣中社で、現在は神社本庁の別表神社。

全国に約450社ある貴船神社の総本社である。
地域名の貴船「きぶね」とは違い、水の神様であることから濁らず「きふね」という。



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神馬の像があった


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御手洗は水神なので龍でした


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 主祭神

高龗神 (たかおかみのかみ)

 歴史

創建の年代は不詳であるが、社伝では反正天皇の時代の創建としている。
社伝によれば、神武天皇の母である玉依姫命が、黄色い船に乗って淀川・鴨川・貴船川を遡って当地に上陸し、
水神を祭ったのに始まると伝えている。
社名の由来は「黄船」によるものとし、奥宮境内にある「御船型石」が、玉依姫命が乗ってきた船が
小石に覆われたものと伝える。
「気の産まれる根源」が転じて「気生根」になったともいう。

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FacebookやTwitterなどネット社会にも対応している


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せり出した舞台がある


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貴船神社の御朱印


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 アクセス

叡山電鉄鞍馬線 貴船口駅から
バス:京都バス(33系統)「貴船」バス停下車 (下車後徒歩約5分)

貴船口駅からのバスは、春分の日から11月末日頃の日曜日および年始(初詣時期)に運行
徒歩:片道約25分(2.1Km)

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by utakatarennka | 2016-12-24 13:57 | 神社参拝

由岐神社 30

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由岐神社


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由岐神社(ゆきじんじゃ)は、京都市左京区鞍馬本町にある神社である。
鞍馬寺の鎮守社である。通称靫明神(ゆきみょうじん)。




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鞍馬山にあります


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 主祭神

大己貴命と少彦名命を主祭神として「由岐大明神」と総称し、八所大明神を相殿に祀る。

 歴史

祭神は元は宮中に祀られていたが、都で大地震・天慶の乱が起き、当時の天皇である朱雀天皇の勅により、
天慶3年(940年)、鞍馬の地に遷宮をし、北方鎮護を仰せつかった。
例祭の鞍馬の火祭は、そのときに里人がかがり火を持って神霊を迎えたことによるものである。

「靫明神」という社名は、天皇の病や国難時に神前に靫(ゆき)を献じて平穏を祈ったことによる。
洛中の五条天神社は、国難時にその責任を取って「流罪に処す」として国の役人が神社の扉に靫を架けて
閉じるということが行われていたが、『徒然草』によれば由岐神社でも同様のことが行われていたという。
由岐神社と五條天神社は祭神が同じである。

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大杉社の神木は、京都市指定天然記念物


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由岐神宮の御朱印


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 アクセス

京都市左京区鞍馬本町1073番地

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by utakatarennka | 2016-12-23 13:55 | 神社参拝

サンマルク

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12月は私のお誕生日月なので、サンマルクからはがきが届きました。

職場の同僚三人とスーパー銭湯に行った帰りに、香里園にあるサンマルクで
ランチを食べてきました。

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サンマルクは焼き立てパンが食べ放題なのだ


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ゴボウのスープが美味しかった!


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メインディッシュはボリューム満点のポテトグラタンでした。

最後に ♪Happy(。´_●`)ノ゛┌iiii┐ヾ(´○_`*)Birthday♪
と書いたプレートのデザートが出てきました。


ベーカリーレストランサンマルク 枚方香里園店
ベーカリーレストランサンマルク 枚方香里園店
ジャンル:ベーカリーレストラン
アクセス:京阪本線香里園駅 バス10分
住所:〒573-0084 大阪府枚方市香里ヶ丘3-3-3(地図
ネット予約:ベーカリーレストランサンマルク 枚方香里園店のコース一覧
周辺のお店:ぐるなびぐるなび 枚方・交野×ビストロ
情報掲載日:2016年12月22日


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by utakatarennka | 2016-12-22 15:57 | 食べ歩き・グルメ

白浜・千畳敷

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「体験宿泊」の別荘の近くに、千畳敷という地形の岩場がありました。

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千畳敷についての説明なので読んでみてください


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ゴツゴツした岩場でした


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ここは和歌山県の朝日夕陽百選らしい


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空も海も真っ青な晴天でした。
遠くの方まで見晴らしが良かったです(๑´・ᴗ・`๑)

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海の近くの海産物のお店


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ここでは獲れたての魚介類をその場で料理して食べさせてくれます


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新鮮なマグロのお刺身が美味でしたd=(・ω-`o)グッ♪

きれいな空気と美しい風景、おいしい魚料理があって
ここ和歌山は最高だね!!

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by utakatarennka | 2016-12-21 20:31 | 旅・紀行文

体験宿泊

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12月は私の誕生日月でして、楽天カードから誕生日のお祝いに
一人一泊500円からの「体験宿泊」の申し込みがきました。
しかも、それに参加すると楽天から1000ポイントもらえるというお得な情報です。

ポイント バケーション リロという、別荘のオーナーを募る会社が主催の
「体験宿泊」ということなので、ちょっと心配になってネットの評判を調べてみました。

いくつか検索に引っ掛かり、「体験宿泊」をした人のブログを読みましたが
概ね、評判が悪くなかったので申し込んでみることにしました。

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宿泊先は京都と和歌山県白浜の二箇所でしたが、白浜の方に当選しました。
私たち夫婦は仕事の都合で日曜日に宿泊したので、費用は一人1000円でした。

↑ 上、二枚の写真は夕食のお弁当です。

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大きなダイニングテーブル


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自炊ができるようにシンクがある


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夫婦二人で4LDKくらいの広い間取りの部屋に宿泊しました。
別荘なのでキッチンもあり、冷蔵庫、炊飯器、食器類、洗濯機もあってここで生活ができます。

別荘なので基本的に食事はついていませんが、「体験宿泊」の人には食事が二食付きました。

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和室です


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清潔な洗面所


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ベッドルームは二部屋ありました


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施設の説明DVDを30分くらい見て、営業さんの話を聞いて、だいたい一時間くらいでした。
まったく会員になる意思がないので、その後しつこく勧められることはなかったε=( ̄。 ̄;)フゥ

別荘の体験宿泊中は何をするでもなく、部屋でテレビ観ながら、のんびりしてました。
くつろげる空間でした、株式会社 リロバケーションズさん、お世話になりました。

どうも、ありがとうございまーすO┓ペコリ

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by utakatarennka | 2016-12-20 08:26 | ブログ