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心詠(しんえい) ⑤

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 【 ほおずき 】

花屋の店先に 
ほおずきが売られていた
幼いころ 
母にねだって買って貰ったことがある
ほおずきの実から種を出し 
口に含んでギュギュと音を鳴らす 
ちっともきれいな音じゃない

だけど何処か懐かしい 
橙色のほおずきの実
ほおずきを鳴らしたくて 
小さな穴から種を抜こうと
いつも周りまで破いてしまい 
失敗するわたしを根気がないからと 
笑いながら叱る母

ギュギュと音を鳴らす 
母がほおずきを鳴らす
わたしの知らない 
子供みたいな母の素顔
老いて気弱になったお母さん 
昔はあなたが恐かった
ずっと愛されてないと思っていた 
だから寂しくて反抗していたんだ

母娘だから分かり合える 
そう思っていただけなのかも知れない
ギュギュと口の中で 
ほおずきが哀しい音で鳴いた
あなたの命を見届けるのが 
娘のわたしの最後の務めですか

小さくなったあなたの肩に 
ふわりと幸せの毛布を掛けてあげたいな



 【 嘘つきの国 】

街頭の政治家ポスターに
黒いマジックで「うそつき」と
オデコに書いた者がいる
ほうほう なるほど……
いかにもポスターの男は
嘘つきそうな顔である

ニヤけた善人そうな笑顔が
まさにペテン師面だった
だが しかし……
政治家から嘘を取ったら
何も残らないでしょうが

みんなは知っている
世間に出て成功するのは
頭の固い正直者じゃなくて
柔軟な思考を持つ嘘つきの方

もっと端的に言えば
「正直そうな顔した嘘つき」
それこそが もっとも最強なのだ!

こっそり親たちは
子どもこう教える
「ぼうや、正直はダメよ。上手な嘘をつきなさい」

こんな世間では
正直者は片隅に追いやられて
嘘つきが大手を振って練り歩く
やがて街中に嘘つき共が蔓延して
正直者は嘘つきの言うことを信じて
みんな嘘つきの仲間になっていく

嘘が本当で 本当が嘘になる
真実は数の力で封じ込められた
この国を動かしているのは
政治家なんかじゃない
ただの嘘つきたちの戯言なんだ

ああ この国は病んでいる!



 【 流星群 】

今宵は 天空の星々の祭典
光年の彼方で 流星たちは 
煌く矢となり 地上に降り注ぐ

宇宙は あまりにも無限で 
人類の知己では 推し量れない
その神秘を 解き明かしたい

いつかあの星が いつかあの星が
わたしたちの掌に 堕ちてくる日が
きっとくると願って 信じて……

今日も 星空を見上げる

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 【 しなやかな獣 】

傷ついた しなやかな獣よ
苦しくとも 立ち止まってはいけない
歩き出さなければ 明日は来ない
あの平原に 陽が沈んでも
ふたたび 大地から陽は昇るだろう

傷ついた しなやかな獣よ
哀しみに うずくまらないで
その脚で立って 大地を踏みしめ
熱風に舞う 砂塵を蹴散(けち)らし
果てしない サバンナを駆け抜けろ



 【 ハイヒール 】

あたし ハイヒールの
似合う女になりたかった
白い開襟シャツのブラウスと
黒いタイトスカート
|BLUE NOTE(ブルーノート)クール・ストラッティングの
レコードジャケットみたいな
美しい脚の女に憧れて

真っ赤なハイヒールを履いたら
モンローウォークで街にくり出そう
男たちの視線をさらりと交わす
どう あたしの色気に参ったか
なぁーんて! 心の中で思いながら
不敵の笑みを浮かべて
スイングしながら街を闊歩(かっぽ)する


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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-06-30 23:30 | 心詠(しんえい)

詩集 瑠璃色の翅 ⑦

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 【 踊り子 】

赤と黒が点滅する
トランクルームの一室
思考する夜に
コトバは放射線を描き
空気中を飛び交っている

石膏の中の海馬は
熱を帯びて幻灯機のように
現在と過去を飛来させる
蛋白質 ガーディンは
シナプスをコード化

懐かしいメロディが
耳の奥 蝸牛を擽って
ああ スカーレット!
深紅のフレアーが
くるくると回りはじめる

踊っているのは 誰?
踊っているのは 私?

聴こえない振りをして
笑っただけ

名もない女は踊り子だった



 【 どんぐり 】

コートのポケットに
どんぐりが三つ
入っている

きのうの夕ぐれ
近所の公園でひろった
小さなどんぐりたち

てのひらの上で
ころころ転がしてみたり
両手で温めてみたりする

わたしのあしたに
どれかひとつでも
実を結ぶことを祈りつつ

もう一度
コートのポケットに
しまい込んだ

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 【 プラスチックな夜 】

汚れちまった悲しみに……
中也の悲しみは
なんだったんだろう?

彼は孤独人
人を欲っしながら
人を拒絶していた

誰にも理解されない
運命を受け入れた
その引き換えに
神から創作の種を与えられた

深層に潜む
妄想の中の わたしに会いに行く
彼女はいつも
泣いてる!叫んでる!怒っている!

解放されない言葉は 澱のように淀んで
寸断された思考は 赤く錆びていく

優しさなんか もういらない!
生きる方法より 楽な死に方を
激しい感情の起伏に疲れ果て
蓑虫みたいに 殻に閉じ篭る

灰色の孤独が骨に
染み込んで
神経を腐蝕させいく……

プラスチックな夜
干乾びた魂が震えだす
無機質な抱擁で どうか包みこんで!



 【 スイーツ♡ウインター 】

いそぎ足でやってきた
冬が
粉砂糖みたいな
パウダースノーを
街中に降りかけていった

私の黒髪にも白く積って
ガトーショコラみたい
綿菓子みたいな吐息が
凍える指先を温める
北風に飛ばされた落葉が
マカロンみたいに転がっていく

異国の森から届いたのは
メイプルシロップの小瓶でした
焼きたてのパンケーキに
たっぷりかけて
召し上がれ

幻冬の街に
降りそそぐパウダースノー
金平糖みたいに
きらきら光る
結晶に変わったら

スイーツな
とってもスイーツな
白夜の始まりです



 【 結晶 】

ひとつ ひとつの
哀しみと

ひとつ ひとつの
喜びを

透明の結晶にして

華のように
星のように

この躯に降り注げ

言葉にならないコトバを
小さく折り畳んで
胸の中にそっと仕舞う

悴む掌で温めた
白い吐息が
冬の情景へ溶け込んでいく

ひとつ ひとつの
哀しみと

ひとつ ひとつの
喜びを

透明の結晶にして

華のように
星のように

この躯に降り注げ


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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-06-30 21:01 | 詩集 瑠璃色の翅

心詠(しんえい) ④

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 【 途上の人 】

プライドや
スキルや
イデオロギーといった
後付けアイテムで体裁を整え
何層にも膜を張って
“ ハッタリ ”という殻で
コーティングしたら
実物より 
やや立派に見えた

だが
本質と虚構との間に
隙間ができている
ヒビはどんどん広がり
深淵のクレバスが口を開いて
冷めたい空気が流れ込んだ
自分を見つめる
もう一つの眼がある

“ 非 ”だった

葛藤や
ジレンマや
躊躇してはいられない
いろんな物を身に付けたつもりで
実は何一つ掴めていなかったことを……
ここに来て気が付いた
“ カラッポ ”の箱
自分を律する
意思の強さを身に付けたい

進むべき道はある
さらに内なる宇宙へ旅をする
創作に終わりはない
自分探しは
まだ終わっていない
私は“ 途上の人 ”なのだ

怖れてはいけない
振り向いてもいけない
前に進めば
それが道となる



 【 肌色のクレヨン 】

私が子どもだった頃
12色のクレヨンの中に「肌色」があった
その色を使って絵を描いていた

黒いクレヨンで輪郭を描いて
肌色で顔の中を塗りつぶす
手も足も全部肌色を塗った
何も考えずに無邪気に
人の顔は肌色だと思っていた

それが突然
肌色を使ってはいけません!
「肌色」は人種差別の色だと
誰かが言い出した

そして肌色の代わりに
「ペールオレンジ」や「うすだいだい]
という名前に変わっていった
ついに「肌色」が廃止になってしまった

なんだか釈然としない
白い肌 黄色い肌 黒い肌
確かに肌の色は千差万別だけど……
だから日本人の肌を基準にして
「肌色」と言ってはいけないらしい

それって単なる
「言葉狩り」ではないだろうか
私たちが慣れ親しんだ
「肌色」がまるで悪者扱いだ

もう使ってはいけない
レイシストの「肌色」だけど
12色のクレヨンの中に居たことを
私は絶対に忘れたくないのです

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 【 慈雨 】

「梅雨は嫌い」と言ったら
おまえはそうでも
俺たちは雨が降らないと困るんだ
紫陽花の葉っぱに隠れていた
一匹のカタツムリに
小さな声で抗議された

「洗濯物が乾かない」と嘆く
なにを言ってる
雨が降らないと俺たちは
干からびて死んでしまうんだぞ
ムッとした声で
土の中のミミズが応えた

「ごめんなさい」
わたしって人間は
いつも自分の都合ばかり
嫌なことも 辛いことも
視点を変えてみれば
それは誰かの役に立っていることなのだ

この降り続く雨が
大地を潤し 草木を茂らせて
小さな生き物たちを育んでいる
そして地球の生態系を回している
雨粒の一滴 一滴が
命の水となって土の中に滲みこんでいくから

これは豊穣の雨 慈雨(じむ)なんだと
今 分かったよ



 【 Are you ready? 】

ピピピピピ―――

心のアラームが鳴りだした

頭の中で
コトバたちが
跳ねまわっている

このムズムズ感は
脱皮の前の予兆なのかな

 Are you ready?

変化するために
小さな自分を壊せ!

プライドなんて
えらそうな鼻っ柱は
へし折ってやる!

 mission
 ideology
 motivation

――とか、

そういう心を動かす
エネルギーが充電されてきたら

ピッピッピッピッピッ……

心の点滅が始まる

 Are you ready?

もう覚悟を決めて
後戻りはできないから

無鉄砲だから壁の向うへ
ジャンプするよ

 1.2.3……

助走を付けて

そおれ! 飛び上がれ!
青い空を独り占めするんだ



 【 極楽 】

温かいご飯
温かいお風呂
温かい布団

この三つは
心まで温めてくれる

寒い冬の夜
わたしは寝る前に
下布団とシーツの間に敷いた
電気毛布のスイッチを入れておく

しばらくして
布団に入ると中はぽっかぽか
包まって朝まで眠るんだ<

温い布団は気持ちいい
疲れた身体に心地よい

ああ~ 極楽 極楽

わたしの極楽は
こんな身近にあった!


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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-06-30 12:33 | 心詠(しんえい)

詩集 愛の言霊 ⑬

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 【 プラネタリウム 】

夜空に煌く星々は 
光年の時を経て降りそそぐ
掌で受けとめた 
粉雪は瞬き一つで消えてしまう
久遠の奏で 
宇宙の時はワープしてリンクする

冬の星座たち
プロキオン・ベテルギウス・シリウス
アストロノートたちは 
星々に想いを馳せる
遥か未来 
この足で踏みしめたいと夢みる

アルタイル・ヴェガ 
永遠に惹かれ合う恋人たち
今宵 星々の吐息を聴きながら 
静かに瞳をとじる
掌を伸ばせば 
あなたの心に触れそうな気がした


 【 七夕 】

七夕の星空に煌く
アルタイル ヴェガ
永遠に愛し合う 恋人たち

『 逢いたい 』

その一途な想いだけで
今宵 天の川を渡っていく

たとえ神が
ふたりを引き離しても
心まで裂くことはできない

『 永遠の愛 』

深い深い絆で結ばれた
ふたりの愛は 天空を駆ける

『 永遠は時間の長さではなくて
  愛の深さを表す言葉なんだよ  』

そう今宵の月が囁いた



 【 溺れる魚 】

ベラドンナの毒が廻って
頭の中が痺れてきた
万華鏡くるくる回して
違う局面を探してみるけれど
見えるのは黒い★ばかり

ああ 自嘲的になっていく
わたしの鰭はうまく泳げない
愛という津波にのまれて
何度も 何度も 溺れた

愛を失うのは怖い
だから告白なんか聴きたくない

知らないままで 沈んでいく
暗い深海に沈んでいく
あなたという海に
沈んでいく

不様(ぶざま)な人魚は嗤いながら
海の泡になって消えていく



 【 Rain of June 】

午後から晴れるといっていた
天気予報があたらなくて
午後になっても
憂鬱な雨が降り続く

湿った食パンは味気なくて
作りかけのジグソーパズルに
八つ当たり
床中に散らばったピースたち
もう一度 最初から……

やり場のない感情
崩れていく理性
黒いクレヨンが心を塗りつぶす
この憂鬱さに
圧し潰されてしまう

きっと 
こんな雨の日にも黒い蝙蝠を差して
あなたは出掛けていくんだ
傘の中の自由な空間
そこが 心地よいのなら……
雨に閉じ込められた部屋の中で
わたしは自分と遊ぶ

未完成のジグソーパズルがある
指で摘まんだピースは
居場所を探して
雨の中を彷徨っているのに

無関心な
あなたの黒い蝙蝠が
わたしの心に水滴を零す

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 【 Long parting 】

降り続く雨のせいで
君は憂鬱な猫になった
小さな溜息を漏らして
物憂げな瞳で僕を見つめるから
雨雲の中へ 引きずり込まれていく

湿気で重くなった
躯を横たえるようにして
君は部屋の片隅で
ジグソーパズルに興じている

だけど 
その背中はいつだって
僕を見張っているのだ!

『愛』という 
ジグソーパズルのピースを
君はいつも探している
形のない感情に『愛』と書いて
そのピースを手渡せば
きっと君は喜ぶのだろう

だが
そんなに僕は優しくない
君の空間に嵌めこまれる前に
僕は僕の黒い蝙蝠で
独りの空間を創り
その中で心を遊ばせる

孤独な君の涙が僕に滴る

インディゴブルーの扉を開けて
君の陰鬱から逃れるように
この雨雲を突破して

青空を求めて
僕の黒い蝙蝠が飛んだ

adieu!



 【 凪 】

通り縋りの街に
何処か懐かしさを覚えて

忘れていた記憶を思い出そうとする
ふと浮かんだ笑顔に
少し胸が痛くなるけれど
明日のお天気のことを考えてみよう

幸せは無味無臭だから
気づかないで粗末に扱ってしまう
時々
掌の上で転がしてみたり
生命線の長さを確かめてみる

特別な人じゃない
ただ
笑顔が素敵なあなたに


  また会えますか?



 【 砂の記憶 】

口角からはみ出た口紅を
小指の先でそっと拭う
赤い口紅は
いつも私を強気な女に変える
呪文のように
優しい嘘を口から吐く

独りぼっち
砂の上を歩いていた
彼方にオアシスが見えるけど
近づけば 
近づくほど 遠くに逃げていく

凝視する男の眼
その手に持ったグラスに
発酵した嘘が注がれている
白い泡が唇に付着して
嘘つきの道化師
信じたら方が
負けだと分かっていた

ふたりは
砂の上を歩いている
果てしない砂の海の漂流者
歩いても
歩いても どこにも辿り着けない

灼熱の太陽の下
点々と残る足跡は
私に打ちこまれた愛の楔
漠として
時が経てば
黄色い砂嵐がさらっていくだろう
失くしてしまった
片っぽのハイヒールはどこ?

私の海馬
砂の記憶の中で眠っている


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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-06-29 10:43 | 詩集 愛の言霊

詩集 愛の言霊 ⑫

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 【 愁雨 】

一片の未練もなく
人を切ることができるなら
こんな憂鬱な雨の中だって
やすやすと泳いで渡っていけそうだ

あなたは繊細だから、と
人にいわれた
それは褒め言葉ではなく
弱い人間だと露呈してしまった
脆弱過ぎる心の在り処

雨に閉じ込められた
閉塞感に苛立ち
窓硝子を伝う
水滴を数えている
一滴 一滴と零れていく

空気遠近法は
遠くのものがぼやけて見えて
近くのものははっきり見える
心の雨が映し出す風景は
なぜか 遠い出来事ほど
鮮明に蘇るのは
どうしてなんだろう

もう空の色なんか
とっくに忘れてしまっているのに
明日は晴れるという希望だけが
捨て切れない

ほんの少し夢をみて
それを壊してみただけの
梅雨の晴れ間に
ぽっかり浮かんだ
――灰色の雲



 【 紅緋色 】

沈みゆく夕陽の
叫びにも似た紅緋色(べにひいろ)
世界を燃やし尽くすように染めていく

心の渇望(かつぼう)は際限なく
乾いた土が水を欲しがるように
あなたの言葉に耳を傾ける

わたしの葛藤は……
ざわめく言霊たちが交差する
未完成な箱庭の中にあって
小さな隙間には
希望が封じ込められている

あなたの差し出すパレットには
様々な色が塗り込まれていて
わたしの心に触れて
また新しい色に変わる

言霊はわたしの躯を廻り
群青の空へと解き放つ
紅緋色の胸 
『 愛の言霊 』を抱く巫女

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 【 白夜 】

恋人よ
その唇に
甘き吐息を重ねよう

永遠の時は
数えられないけれど
砂時計は刹那を刻む

明けない夜
ふたり魚になって
白い川を泳いでいく

愛染の
罪は深まりつつ
快楽は心を失くす

もう何処にも
逃げ場などない
針一本の隙間さえない

白い夜
ふたり重なり合って
波に揺られ溶けていく



 【 月の光 】

月の光に照らされた 
君の白い肌
強く抱きしめると 
壊れそうな細い肩
抱き寄せて 
両の腕(かいな)に包み込む

『 寂しかった…… 』 君はつぶやく
逢えないのが寂しいのではなくて 
私を忘れていたことが
『 寂しいの…… 』 君の瞳から
涙の雫があふれだす

月と星のように惹かれあっている
ふたりなのに
どうして君は 
そんなに不安がるのだろう

その桜色の耳たぶを 
強く噛んで僕のしるしをつけよう
たとえ逢えなくても
いつも僕が想っていることを
君が忘れないように 
その肌に刻み付けよう
重なり合った二人の吐息が 
夜の静寂(しじま)に溶けていく

今宵 君の涙で 
月の光が霞んでみえたなら
君の頬に優しくキスをして 
僕は君の寝息で静かに眠ろう



 【 告白 ~風のささやき~ 】

誰にも知られたくないんです 
午後の公園での出来事を

ベンチにならんで座っていた
ただ ふたり視線を外して
別のところを見ていた

あなたの言葉を待ちました
アポリネールの詩を3ページ読んだとき
あなたの呟きが聴こえて……
詩集から顔をあげたとき
そっと 頬に触れた唇の感触

あれは風のささやきかしら
あなたの優しい声に
桜色に染まる わたしの耳朶

それは静かな昼下がり
風が吹いて 詩集のページをめくる
白いパラソルが風に飛ばされ
ベンチで抱き合っている ふたりを
塀の上の黒猫だけが見ていた

誰にも知られたくないんです
あの告白は永遠の秘密だから


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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-06-28 20:47 | 詩集 愛の言霊

心詠(しんえい) ③

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 【 えんどう豆 】

春になるとお母さんは
いっぱいえんどう豆を買ってくる
それを いつもふたりで
キッチンのテーブルで殻をむいた
学校のは話をしながら
近所の噂話を聴きながら
零れ落ちた えんどう豆を拾っては
ふたりで笑った 春のひととき

炊きたての炊飯器の中で
えんどう豆が光ってる
お兄ちゃんは豆ごはんが
嫌いだって ほっぺた膨らませた
あたしが殻むいたんだからね
お手伝いを自慢気に 鼻膨らませる
いつもより すこし多めにおかわりして
家族欄団で食べた 豆ごはんの味

今は病気のお母さん
もう あなたが炊いた豆ごはんを
家族で食べられないけど……
掌から零れ落ちた えんどう豆の粒
あなたの豆ごはんの味を想い出しながら
母から娘へと伝わる 豆ごはんの味
母の愛と共に わたしの心に伝わった



 【 I wish my wish 】

I wish my wish  I wish my wish
宗教や人種の違いで 人々が争い血を流さないように

I wish my wish  I wish my wish
幼い子供たちが 貧困や虐待で空腹に泣いていませんように

I wish my wish  I wish my wish
イジメに絶望して 若い命を自ら絶つ子がおりませんように

I wish my wish  I wish my wish
疲れて渇いた大人の心に 優しい潤いが戻りますように

I wish my wish  I wish my wish
人類の進む未来が 希望に満ち溢れていますように

I wish my wish  I wish my wish
わたしの愛する人たちが いつも笑顔でいられますように

I wish my wish  I wish my wish
どうか神さま みんなの願いを叶えてください!

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 【 陽だまりの部屋 】

朝起きて お天気がいいと
布団を干そうと 張り切ってしまう
ワイドショーに 好きなタレントが出ていたら
めっちゃ嬉しくて 一日中ハイな気分
クッキーと紅茶で 午後のティータイム

仕事という 鎖から解き放たれて
きのうと今日の 境目がなくなった
ささやかな幸せで 心を潤して
ひとりの時間が ゆっくりと流れていく
そんな贅沢を いま手に入れた

陽だまりの部屋 窓辺に腰かけて
大きなあくびをしたら なぜか涙がでた
陽の射すほうへ 掌を翳(かざし)してみる
あれ 爪が伸びてるよ 『 楽 』しすぎかな
こんな風に 生きてるんだな あたし

                -プー姫 独り言ポエムー



 【 孤高の花 】

誰にも触れられない場所に
花が咲いていた

切り立った崖の中腹
そこには
誰も登って来れない
誰も降りて行けない

そんな場所に独りぼっちで
花は気高く咲いていた

小鳥の囀りに耳を傾け
そよ風が頬を撫でていく
瞑想の空間がある
花は孤独を愛していた

それなのに
静かな日常が突然奪われた
乱暴な疾風が吹き荒れて
花びらを散らし
全てをむしり取っていった

切り立った崖の中腹
そこには
花は咲いていない
花のことを誰も知らない

たとえ形がなくなっても
『信念』と言う根が残っている限り
来年もきっと
あの花は
この場所で咲いているだろう



 【 電球 】

普段の私は40Wくらいの明るさで
人に会う時は60Wになる
さらに仕事中は
100Wの明るさで全開だ!

しかし100Wの電球は
消費電力が大きい過ぎて……
電球がすぐに切れてそうになり
その後 灯らなくなって
真っ暗になる!

願わくばLED電球のように
少ない電力で長持ちする
省エネタイプの
明るく輝く私にないたいなあー


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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-06-28 17:54 | 心詠(しんえい)

心詠(しんえい) ②

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 【 愛でし國 】

わたしの生まれた国には
四季があります


春 桜舞う
人は優しく笑い
肩にかかった 花びらはらりと払う
門出の時 別れの時
感極まって 涙する人よ

夏 蝉時雨
突然の夕立に 驚いて 逃げ込む廂(ひさし)
洗われた街には 虹が架かる
よしずに涼風 ゆれる風鈴

秋 十六夜
静かな夜更けは
虫たちの音色に 耳を澄まして
今は遠き 友の安否を想う
すすきの穂を照らす 上弦の月

冬 木枯らし 
冷たい早朝に 厨房に立ち
母が家族の朝餉を拵える  
お早うの挨拶と 温かなお椀
忘れないよ お母さんの深い愛


日本人は心に触れて 想いを知る民族なんだ
あなたと出会えた
わたしの美しい国だから

人を愛し 国を愛す
この国に生れて良かった
日の出ずる國 わたしの日本



 【 真実について考えてみた 】

日常のいろんな事柄について
誰もわたしを見ていない
わたしだって誰も見ていない

 ―― 決して 心まで見ようとはしない

人は時々 したり顔で頷くけど
どれだけのことを分かっているの?
いったい なにを知っているんだろう?

分かってる 知ってる
それは単なる思い込みで 錯覚かも知れない

 ―― ひとは見えるモノしか信じない

それが『 嘘 』でも 
形のあるものは『 事実 』だし 
それが『 真実 』だと勘違いをする

見えない『 真 実 』なんて
誰も探せなくて とうとう諦めてしまい

 ―― 結局 見える『 事実 』をだけで

それが『 真実 』だと
主張する奴らの なんと多いことか!



 【 地球 】

暗黒の宇宙に漂う 青い星
46億年前に誕生した 小さな惑星
我らが地球 70億の人類を乗せている

白い人 黒い人 黄色い人
国も習慣も宗教も違うけれど
みんな地球が育んだ生命なんだ

地球を愛する心があれば
きっと人類はひとつになれる
母なる地球はみんなに平等だから

光年の彼方に想いを馳せる
我らを乗せた 宇宙船地球号
時空の砂はさらさらと未来へ進む

人類のメッセージを書いた
紙ひこうき 遥か宇宙に飛ばした
未知なる生命は拾ってくれるかな

森羅万象 進化と淘汰は繰り返す
因果応報 過ちはやがて身に罹る
輪廻転生 終わりなき生命の営み

ちっぽけな命だから
わたしは生きることを愛する

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 【 oneself 】

有刺鉄線を張り巡らし 
囲いの中でわたしは 
小さなプライドを守っていた
感情に触れたモノには 
鉄の棘(いばら)で傷つけた

人の言葉に耳を塞ぎ 
空想の世界で呼吸していた
小さな砦の中では
自分の声しか聴こえてこない
孤独な魂は震えていた

寂しさから縛ろうとした 
弱さからすがろうとした
そして……
振りまわし 優しいあの人を
疲れさせてしまった

道の途中に立ち止まり 
行くべき道に迷っている
『 自分なんかいらない 』 
そう呟いて ぬかるんだ道を 
一歩だけ前に進む……



 【 掌 】

暖かい掌 冷たい掌 柔らかい掌 硬い掌
掌には いろんな感触がある

幼子のちっちゃな 紅葉の掌
老人の節くれた 皺だらけの掌
掌には いろんな人生がある

愛し合う恋人たちが 握り合った熱い掌
逃げ出しそうになったとき 引っ張ってくれた強い掌
掌には いろんな想いがある

深夜の病室で 死に逝く人の掌を握り
その人の 名を泣き叫んだ
やがて ひとり冥界(めいかい)に旅立って逝った人の
乾いた冷たい掌の感触を 今も忘れられない

願わくば わたしの魂が天国に召されるとき
誰かに この掌を握っていて欲しい
愛する人に 強く握って貰いたいと願う

わたしの この小さな掌が
いつか 誰かを支える掌になれたらいいな
これから どんな掌に出会っていくのだろうか


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亡くなった母の掌を握っていた



創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-06-28 15:49 | 心詠(しんえい)

心詠(しんえい) ①

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 【 evolution 】

生きてる意味を知るために
確かなものを探していた
信じたい言葉があった

『 愛 』『 希望 』『 約束 』

だけど解っているんだ
そんなものを信じるから 
いつも傷つくんだってことを

わたしは何かにすがっていた
それは誰かの優しさだった
そして誰かの犠牲だった

輪郭のない憂鬱
強い言葉に脅えた
『 依存 』は やがて破滅へ

わたしを縛っていたのは
その弱い心なんだと気づいて
苦い思いを噛み砕いた

そんな自分はもういらない
今なら走りだせそうな気がした
迷いの中で見つけるんだ

いろんなものを捨てていく
いろんなことを忘れていく
いろんな壁を乗り越えて

少しずつ変化していこう
あらゆるものを吸収して
揺るぎない自分へと進化する

          ―evolution―

それは 過去の自分を壊すこと
     そして 新しい自分を創り始めること



 【 つながれっぱなしの犬 】

つながれっぱなしの犬がいる
中型雑種茶色の犬だ
散歩してるのを
一度も見たことがない

コンクリートの駐車場の中
小さな犬小屋で暮らしてる
動けるのは鎖の長さだけ
その空間の中で
おまえは餌を食べ排便をし
うずくまるように眠る

道の前を通るだけで
牙を剥き けたたましく吠える
そんな おまえが嫌いだった
放置された糞尿の臭いに
いつも わたしは顔をしかめた

やがて おまえは老犬になり
弱って吠えなくなった
暑い夏には憔悴しきって
動かなくなり
死んでいるのかと
立ち止まって
様子を見たこともある

駐車場の片隅で
鎖につながれ 自由のない暮らし
おまえは鎖を外して
外へ飛び出したくはないのか

一度でいいから
広い野原で遊ばせてやりたい
もう先が長くないのに……

つながれっぱなしの犬
おまえが憐れで仕方がないんだ!

ある日
外出から帰った飼い主に
犬小屋から飛び出し
嬉しいそうにシッポを振る
おまえを見た

散歩もさせてくれない 飼い主なのに
おまえはめいっぱい愛情を示す
散歩もさせない 飼い主のくせに
おまえの頭を撫でていた

分からないものだ!
まるで男女の愛のように
他人の尺度では測れないものだった

この犬は飼い主に満足していたのか
だって 他の暮らしを知らないから
毎日ペットフードをくれる 飼い主を
きっと 神さまだと思っているのだろう

ごめんね!
わたしが憐れんだから
おまえは憐れな犬にされてしまった

つながれっぱなしの犬
ホントのところ
名前さえ知らないくせに……



 【 さよなら、つながれっぱなしの犬 】

一匹の犬が死んだ
中型雑種の茶色の犬
なんのへんてつもない平凡な
そして よぼよぼの老犬だった

おまえは狭い駐車場の中で
いつも鎖に繋がれて暮らしていた
つながれっぱなしの犬
その呼び名は わたしがおまえに付けた

今年の夏は とりわけ暑かった
木で囲っただけの粗末な犬小屋の中で
おまえはうつろな目で
苦しそうに ハァハァ……と喘いでいた

あぁ もうダメかも知れないなぁー
わたしの心配は的中した

二、三日経って……
犬小屋を覗くと空だった
おまえを繋いでいた鎖が落ちていた
餌入れの器がひっくり返ってる

つながれっぱなしの犬!
おまえは死んでしまったのか?

ごめんね
なにもしてあげられなくて……
わたしは想うことしかできなかった
空っぽの犬小屋が悲しすぎる
おまえのことは忘れないから

暑い 暑い 夏の日に
おまえは飼い主にホースで
ジャージャー お水をかけて貰っていた
ピョンピョン 跳ねまわって嬉しそう
尻尾フリフリ 飼い主にじゃれていた
犬なのに笑っているようだった

幸せそうな おまえの姿を見て
わたしも幸せな気分になれたよ
つながれっぱなしの犬
おまえは幸せだったの?

いつも鎖で繋がれていたけれど
おまえにはおまえの幸せがあったはず
飼い主のことも大好きだったんだね
きっと満足していたのだろう

立派な飼い主とはいえないが……
仔犬のころからずっと飼ってくれていたんだ
おまえにとっては 唯一無二の飼い主
そこに 深い『 絆 』があったかも知れないのに

それを不幸な犬と決めつけた
わたしこそ 傲慢な人間だったかも知れない

おまえを通して
わたしはいろんなことを考えた
犬の飼い方
犬と飼い主の関係
そして おまえの幸せについて

そう おまえが居たから気がついた
数々の事柄があったんだ

『 事実と真実 』は 違うってことも

ありがとう!
つながれっぱなしの犬
おまえの魂は決して繋がれてはいなかった

さよなら……
つながれっぱなしの犬よ
天国にはおまえを繋ぐ首輪も鎖も
もうないんだ!

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 【 詩人 】

いつも相反する感情がある

笑いながら泣いていた
泣きながら笑っている

幸せだけど不幸になりたい
不幸なのにとても満足してる

不思議な感情の揺れが
わたしの創作の源だった

出来上がったプラモを壊して
バラバラの欠片を集めるように

心の空白感を埋めるために
言葉の粘土をひとり捏ねていた

渇いた心を潤すような わたし詩人


いつも『 意味 』を考えていた

生きる意味 愛する意味
孤独の意味 死んで逝く意味

何故だろう どうしてだろう
そこにどんな『 意味 』があるんだろう

在りもしない答えを探してた
そんな自分にいつも苛立ってる

月の裏側から見える星なんて
本当はないんだってこと解ってた

だけど欲しいんだ 誰かに
わたしの存在の『意味』を解って欲しい

優しさばかりをねだる わたしは詩人



 【 母ちゃんの唄 】

母ちゃんと旅に出る
鞄に歯ブラシ、着替え、切符と
最後にわくわくを詰めて チャックを閉める

朝一番のバスに乗り込んだ
母ちゃんと座席に並んですわる
乗り物酔いの薬あるよ
切符は持ったかい?
酢昆布食べる?

いちいち、うるさいけど……
機嫌の良い母ちゃんは
古い唄を口ずさんでいる
わたしの知らない 
ずっとずっと昔の唄だね

呼吸器が止まった 心臓が止まった!
瞑目して動かない 母ちゃんが……
お医者さまが時計を見て時間を告げた
母ちゃんの時間が止まった
わたしは凝視したまんま……

昔、一緒に行った町を歩く
母ちゃんの思い出を辿りながら
心の中の母ちゃんとおしゃべりしながら
この旅から帰ったら

きっと わたし元気になるから……
母ちゃん もう心配しないで


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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-06-27 15:55 | 心詠(しんえい)

詩集 瑠璃色の翅 ⑥

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 【 風の栞 】

夕暮れの窓辺
瑠璃色の切子硝子の一輪ざしに
梔子の白が映える
夕凪 無風状態になれて
心が弛んできたら
闇が迫る少し前 風が頬を渡る
どこからか声を運んできた

楽しい声 悲しい声
美しい歌声 断末魔の叫び
知らない街の言葉たち
風は旅人
世界中の空を彷徨っている

群青色に染まりゆく
今日という昨日に
新しい栞をそっと差し込む
瞬き 閉じてしまった頁たち
私は大事な思い出を
風の粒子に混ぜて飛ばしてしまった
螺旋を描いて舞い上がっていく

「サヨナラ」と言って
二度と還ってこなかった
大事だけど
忘れてしまいたい記憶もあった
風は知っていたんだ
感傷なんかで振り返らない
さようなら……

天空高く 地を這うように
縦横無尽に飛びまわる
心の頁を捲っていく風よ
その自由さに翻弄されながらも
背筋を伸ばして
立ち向かっていく

未来という栞を
挟む頁を私は探している



 【 メビウスの輪 】

メビウスの輪 
始まりも 終わりもない
時はループして 無限となる

愛することも 生きることも
この世は 何もかも笑える
追っているのは 幻想にすぎない

しょせん 人は独り
そう 完璧に孤独だから
ニヒリストは 絶対に泣かない

メビウスの輪 
喜びもない 悲しみもない
時空の魔女 年齢は永遠なのさ



 【 Empty Sky 】

鉛色の空に佇む
影法師がひとつ
アスファルトに落ちる
希薄な空気を呼吸をして
吐く血痰

地べたを這う風に
ゆらゆらと揺らめいて
逃げ込める隙間を探している

瑕疵な魂は
誰にも祝福されない
愛情の意味も知らずに
ちっぽけな存在を隠すように
隅っこで生きてきた
息を殺して……

灰色の孤独が
骨に滲み込んで
神経組織を浸食していく
すべての視界を遮る

わたしには
何処にも居場所なんかない

心に出来た
大きな洞には
時おり風が抜けて
ヒューヒューと
悲しい声で共鳴するから

この空の広さも
降りそそぐ陽の光も
小鳥の囀りさえ
実感できないままで
老いていく…… 

わたしの瞳には

Empty Sky

うつろな空しか
映らない


もう死んでもいいですか?

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イラスト素材屋「もずねこ」様よりお借りしました。http://mozneko.boo.jp/sozaiframe01.html

 【 手風琴 】

雲が流れて
空が澄み渡る
さわさわと街路樹が揺れて
葉っぱが一枚 宙を舞う
風の歌で季節が変わった

そんな時
優しい音に包まれてたい
晩夏のメランコリー

ぽろろん

音を奏でる
琴線を 掻き鳴らし
掻き鳴らして……
心の絃が揺れる度
美しい音が弾きだされる

ぽろろん

白いサンダル
街の風景が変わる
蛇腹の中に風を閉じ込めて
その鍵盤を指で触れると
柔らかな音を奏でる

手風琴
私は風に恋して楽器になった
過ぎ去る夏に さよならを


   ※ 手風琴(アコーディオン)



 【 レジリエンス 】

誰かの溜息で
紅く染まった紅葉
風に巻き散らされて
紅い絨毯が敷き詰められた
一歩 歩む度に
カサッ カサッ 
と、小さな悲鳴を上げる
その一枚を拾って
空に翳してみれば
紅い残像が
瞼の裏に焼きついた

季節を追うと
遠くへ 遠くへと
逃げていってしまうから
この寂しさは
何処へ捨てにいこうか

静謐な秋の日に
掌の中で光を放つ
朱色の実が甘く熟れてゆく
季節はいく度も再生しながら
真っ白に純化する
気持ちひとつで
寒い季節も越えていけると
折れない心
拳を握り
空を見上げて
雲の行方は風に訊けばいい


 【 楓 】

晩秋の頃
血を吐くように
楓は赫(あか)く染まる
握り拳ほどの肉塊
女は躯(からだ)に楓を孕(はら)んだ
命の蘇生
輪廻転生する魂
春になれば
再び芽吹いて
小さな掌を展(の)ばす


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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-06-27 10:39 | 詩集 瑠璃色の翅

詩集 愛の言霊 ⑪

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 【 デフォルト 】

あなたに逢えなくて
分かったことがひとつある
わたしの日常は
あなたを中心に廻っていたことを

トーストとハムエッグにサラダ
当たり前に並べられた朝食も
ひとりで食べると
なんだか味気ない
楽しく食べるのが食事であって
空腹を抑えるために食べるなら
単なる餌でしかない

この寂しさはあなたという
心の軸を失ったせい?

輝きを失ったわたしは
鈍色の惑星になってしまった
凡庸(ぼんよう)な日常の中にあって
主婦は輝くのだと
そのことに
――今 気がついた



 【 嘘つきゲーム 】

 わたしを傷つけないように
  あなたが優しい嘘をつく
   嘘だと分かっていても
    わたしは騙された振りをする
     あなたが まだわたしを
      愛していると信じていたいから
       ふたりの心を繋いでる
        嘘つきゲームは終われない



 【 sofa 】

お気に入りのsofaは 
仄かな光沢を放つ
手触りがよくて 
硬すぎず 柔らかすぎない
丁度よい弾力で 
わたしを包みこんでくれる
あまりの心地よさに 
甘美な夢に誘われそう
やっと手に入れた 
この安らぎ この力強さ
熱い想いがこみあげる 
もう止められない
わたしの心は 
あなたというsofaに
すっぽり囚われてしまった

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 【 むかえにいくよ 】

「むかえにいくよ」と
男がいう。
「きっと、むかえにいくから」
そう、いつも私にいうので、
「いつむかえにきてくれるの?」と、
訊いてみれば、
「ロトシックスが当たったら!」
大真面目に男が答えた。

夫がいる私を奪うのに……
そんな奇跡みたいなことを真剣にいう
この男が滑稽だ。
なぁ~んだ、その程度の想われ方かと
呆れてしまった。

私が怒り出すと、
ひたすら謝る。
拗ねると……
「愛している」とか調子のイイことをいう。
別れを切りだしたら、
「だって、俺たち友だちだろう?」
などと、私を煙に巻く!

――とにかく変な男なのだ。

しょっちゅう
用もないのに電話を掛けてきては
「寂しい」と泣きを入れたりして
甘えん坊さんだし
なんだか不憫な奴
但し、私の健康だけは心配してくれて
「事故・怪我には気をつけてくれよ」と、
そう、言葉だけはいつも優しい。

この年齢になったら、恋よりも
健康と年金の方が私にとっては重要な問題だ。
「むかえにいくから待っててくれ」
なんの根拠もなく、そんなことをいう男。
のらりくらりと私を縛る
毒にも薬にも成らない男だ。

だから、その珈琲は飲まずに
香りだけを楽しんでおこう。

――もう、そんな恋で十分なんだよ。



 【 恋患い 】

病気になりました かなり重症です
    身体が熱いんです 微熱があるみたい <のぼせ?
胸がドキドキして 心臓が苦しいの <ときめき?
    おまけに眼も悪くなって 周りがよく見えない <夢中?
些細なことで すぐ怒ったり泣いたりします <情緒不安定?
           せんせい これって病気ですか?

なかなか逢えないと 病気が進行しちゃうんです
    イライラして 八つ当たりしたり <欲求不満?
勝手に想像して 疑ってみたり <疑心暗鬼?
    自分はダメだと 落ち込んでしまって <自信喪失?
あげく投げやりになって 何もしたくなくなる <無気力?

       せんせい 効く薬ありますか?

ねぇ 分かってる? 世界中どこを探しても
    この病気を治せる名医は あなたしかいないってことを!


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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-06-26 14:59 | 詩集 愛の言霊