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ラボ・ストーリー ④

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   Dr.Yamada file.5【 カタストロフィ 】

「発見したぞ―――!!」

 ここはモロッコ領、サハラの砂漠のど真ん中。
 Dr.ヤマダが率いる大和大学考古学発掘隊は、ついに幻の恐竜、地上で最も早く、強く、水陸両用だといわれるスピノサウルスの化石を発見した。
今まで完全な形で発掘されたことがなかったが、今回の発掘でほぼ全貌が判るのだ。 ――まさに世紀の大発見である!
 スピノサウルスの体重は20トン、全長は15メートルを超える、頭はワニのようで鋭い歯が多数あり、魚食性だったと思われる。背中の帆(ほ)のような突起はラジエーターとして体温調節に役立ていたようだ。世界最大のティラノサウルスの標本より2.7メートル長い、体の長さだけなら肉食竜最大である。
 今回の発掘調査で、さらに恐竜絶滅の謎に迫れるのではないかと大和大学考古学発掘隊の隊員たちは高揚していた。

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「Dr.ヤマダ! こんな歴史的な発掘に参加できて光栄です」
 アシスタントのサトウが興奮した面持ちで言った。
「スピノサウルスの化石はいずれ見事な骨格標本となって蘇えるだろう」
 砂漠から掘り起こされた骨は砂など掃ってきれいにして、丁寧に梱包してから、大学に持ち帰り、じっくり研究した後に、恐竜博物館に収められる手配だ。
「この大発見は考古学書の1ページを記載するに相応しいものですね」
 その言葉がDr.ヤマダの学者としての自負心を満たす。
「それにしても博士は、こんな広大な砂漠のど真ん中で、ここにスピノサウルスが埋まっていることが、どうして分かったんですか?」
 サトウの質問に、しばし考えてからDr.ヤマダはゆっくりと口を開いた。
「……何というべきか、私はスピノサウルスに呼ばれたような気がするんだよ。ここに眠っているから掘り出してくれ、というメッセージを心に感じたんだ」
「本当ですか? だったらDr.ヤマダは千里眼だ!」
 ひょろりと痩せた肢体からは学者然としたオーラを放っている。
「恐竜への探求心がそう感じさせたのかもしれない」
 なにゆえ、地上の王者である恐竜が絶滅したのか、6500万年前へタイムスリップして事実を見てみたいと、古代生物学者のDr.ヤマダはいつも夢見ていたから――。

*


 俺は毎日、水辺で魚を獲っていた。
 陸上で狩りをするよりも、水に入って魚を捕まえる方がずっと効率いいからだ。
 遠い昔、俺が卵から孵化して、初めてこの眼で外の世界を見た時、森は青々と樹が茂り豊かな大地だった。俺の兄弟もたくさんいたが、小さい時に翼を持ったケツァルコアトルスにさらわれてしまった。母親が狩り方法を教えてくれたが、いつの間にその母親もいなくなっていて……この辺りには俺しか残っていない。
 どうしたものか、俺が若い頃はこんなに空気が重たく感じなかった。もっともっと身軽に動けたんだ。それが段々と身体が重くなってきて動きが緩慢になり、狩りで失敗することが多くなった。
 ――地球の重力が変化したようだ。

 三本の大きな角を持ったトリケラトプスが、水辺の俺の元にやってきて勝手に喋っていく。図体はでかいが草しか食わない大人しい奴だ。
 今日も俺が水辺で狩りをしていると、
「樹の葉っぱに毒を仕込んだのがある。俺の仲間が知らずに食べて死んじまった!」
 血相変えてやってきて、いきなりそんな話をする。
「お前らがすごい勢いで葉っぱを食い荒らすから、樹も防衛し始めたのだ」
「死んだ仲間の肉をティラノサウルスとかいう、でかい頭の奴が喰ってやがる」
「アイツか。奴はスカベンジャー(腐肉食動物)だ」
 ティラノサウルスは大きな頭のせいでバランスが悪く敏速に走れない。だから待ち伏せて狩りをするか、死肉をあさるしかない能のない憐れな奴だ。
 どうしたことか、草食竜が食べる植物の中に刺や毒を持つものが多くなってきた。
 ――大食漢の恐竜たちに植物が報復を始めたのか?

「最近、流れ星が多いんで気になっている」
 トリケラトプスが夜空を見上げて言う。
「ああ、星でも降ってきそうだな」
 今も視界を星がひとつ流れていった。
「嫌な予感がするんだ」
 奴はそう言い残し、しょんぼりと森へ帰って行った。
 俺は水辺に横たわり眠ろうとするが、なぜか嫌な胸騒ぎがする。

 一瞬、夜空が真っ赤に燃えた!
 激しい衝撃波と熱風で木っ端のように身体が吹き飛んだ。空中を舞った俺の身体は大地に叩きつけられた。その衝撃で骨が何本も折れたようだ。
 森では火の手が上がっている。いったい何が起こったんだ!?

《その時、メキシコのユカタン半島で小惑星が地球に衝突した。》

 俺は不格好なまま、地面に貼り付くように倒れていた。
 意識はあるが身体が動かない、想像以上のダメージを受けたようだ。他の奴らも吹っ飛ばされたり、火に巻かれたりして生死を彷徨っていることだろう。
「あいつ、無事に逃げ延びたかなあ……」
 話好きの草食竜トリケラトプスのことがふと脳裏をかすめた。
 あっちこっちに大型恐竜たちの屍が散らばっている。ガタイが大きい分だけ衝撃波をもろに受けたのだ。
「みんな死んでしまうのか」
 さっきの衝撃波は何か大きなものが衝突せいか? しかし俺たちが終焉に近づきつつある気配はすでにあった。大量の食糧を消費する図体の大きい恐竜たちは、地球にとって負担だったのかもしれない。
 ――だから序々に排除されようとしていた!?

 身動きも出来ないが、まだ意識だけは残っている。巨大なこの肢体を大地に横たえ、滔々とした時の流れに身を任せてしまおうか、この生命(いのち)がフェードアウトするまで――。
 だが最後に一つだけ願いがある。
「ここに俺がいることを、いつか誰かに見つけて欲しい」
 真っ黒な煤煙が降ってきて、空が隠れて太陽が見えない。光合成ができず草木が枯れてしまい、草食竜が死んでいく、やがて肉食竜たちも死に逝く運命なのだ。
 ――ついに地球上から恐竜たちが絶滅してしまった。

*


「山田教授! 起きてください」
 ここは大和大学古代生物研究室である。
 山田研究班の責任者が椅子でうつらうつら舟を漕いでいたら、助手の佐藤が突然入ってきた。
「大変です! また山田研究班の予算が削られました」
「なにぃ!? これ以上予算を削られたら古代生物も飼育できんじゃないか」
 古代生物とは名ばかりの『生きた化石』こと、カブトエビを飼育しているだけの山田研究班である。
「古代生物っていっても、田んぼにいるようなエビの飼育なんか嫌になります」
 助手の佐藤が不満を口にする。
「カブトエビだって立派な古代生物だよ。ジュラ紀から進化してないんだから」
「だったら、せめてカブトガニくらい飼育したい」
「いかんせん、あれは天然記念物だから手に入らないんだよ」
 教授の言葉に、フンと佐藤は鼻を鳴らした。

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「僕が研究室に入った頃、教授は言いましたよね? 佐藤君、いつか君を恐竜の発掘調査に連れてってやるよ。って!」
「ああ、そんなことを言ったかもしれん」
「恐竜の発掘とかやりたいです!」
「私も恐竜の発掘をやりたい。だが、予算もスポンサーもいないので到底無理だ」
「第一、カブトエビなんか飼育して、いったい何になるんですか?」
「カブトエビから、いつか恐竜に行き着くかもしれん。希望を捨てずに頑張ろうなぁー。佐藤君」
「ああ~あぁ!」
 頭を掻きむしり、大きな声で佐藤は溜息を吐いた。
「恐竜の発掘調査に連れて行ってくれるって聞いたから、古代生物研究室に入ったのに……山田教授に騙された……こんなの詐欺だよ!!」
「いやぁー、詐欺だなんて……そりゃあ人聞きの悪い」
 えへへと山田教授は曖昧に笑った。
「なあ、佐藤君、恐竜たちは絶滅することを予感したと思うかね」
「はあ? 恐竜には知性はなかったでしょう」
「もし絶滅してなかったら、地球人はトカゲ人間になってたと思うか?」
「教授! 何をふざけたこと言ってるんですか?」
「恐竜になる夢をみたんだよ」
 佐藤は唖然とした顔になった。
「ああ~、こんな研究室やめたい!」
「君しか助手はいないんだから、辞められたら困るよ」
「いぃやっ! 絶対にやめてやる。こんなしけた研究室なんか、お断りだ!」
 部屋から出て行こうとする佐藤の背中に向って、
「カブトエビの水槽の水を交換して置いてくれ」
 その言葉に佐藤は肩をいからせ、チッと舌打ちして乱暴にドアを閉めた。
「……今日びの若いもんは辛抱が足りない」
 そう呟いて、まったく動じる風もない。
 さっきみていた発掘調査の夢の続きをみようと、山田教授は再び眼を瞑った。
 眼孔の奥で黒い線がグルグルと渦を描いている。――カタストロフィ、巨大な終焉に恐竜たちは何を思ったのか? 夢の中でもう一度訊いてみたい。




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創作小説・詩

# by utakatarennka | 2019-02-22 16:19 | SF小説

ラボ・ストーリー ③

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   Dr.Yamada file.3【 UFOが降ってきた日 】

 その日、人類は驚きを持って迎えた。 天空から無数のUFOが地球に向って降ってきたのだ。銀色に輝く円盤がいきなり現れて地上に着陸していった。それは各国の軍事レーダー網にも引っ掛からず、突然出現したステルス型のUFOだった。
 その数、おおよそ10万機、直径50センチほどの超小型UFOである。町外れにある小高い丘の上に集結していたが、今のところ動きもなく、なぜ、こんなにも大量のUFOが舞い降りてきたのか、まったくもって謎である。

 この非常事態に、世界的なUFO研究家として知られるDr.ヤマダが召喚された。
 彼は民間組織『UFO倶楽部』の主催者で、数多くの著書があり、TVのUFO特番では必ずコメンティーターとして出演する有名人なのだ。
 ユニークなキャラクターで知られる彼は、UFO研究の第一人者として宇宙人とコンタクトをとる方法を熟知していると思われている人物である。
 時々、NASA(アメリカ航空宇宙局)にも呼ばれているという噂もあり、ひょろりと痩せた肢体からは常人ならざるオーラを放っていた。

 近隣住民が避難した丘の上で、Dr.ヤマダとそのスタッフはマスコミのカメラが見守る中、人類初の未知との遭遇イベントを粛々と始めた。日が沈んだ暗闇に篝火を焚き、シンセサイザーが創りだす幻想的な音楽を流しながら、無数のUFOの前でDr.ヤマダは大声で意味不明な言葉を発している。
 スタッフの説明によると、宇宙人の言語で『いらっしゃいませ。地球人はお友達だよ。仲良くしましょう』と言っているそうだ。
 Dr.ヤマダは全身を銀色ラメの衣装に身を包み、ライトが点滅する帽子を被っている。しかも大げさな振りを付けて喋っているものだから、さながらボードビリアンのコントを見ているようで、これが有事だという緊張感すらなかった。

 TV中継を観ていた世界中の人々はDr.ヤマダのパフォーマンスに爆笑しながらも、何が起こるか分からない展開にドキドキしていた。
 ――だが、UFOから反応が全くない。
 小一時間、コンタクトを取り続けるが微動だにしない、ついに業を煮やしたDr.ヤマダは太鼓や銅鑼を叩いてドンチャン騒ぎを始めた。
 すると突然、夜空に巨大UFOが出現した。
 これは小型UFOの母船だろうか? 旋回しながら円盤の底から青白い光線を発した。すると、小型UFOの中央部がパカッと口を開いて、中から閃光を放つ小さな球体がいっぱい飛び出してきて、一目散に空へ向って上っていった。
 何が始まるのだろうか? TVの前で人々はかたずを呑んで見守っている。

 なんと驚くなかれ、夜空をスクリーンにして、宇宙のイリュージョンが始まった。
 閃光を放つ球体は色彩を変化させながら、七色の虹を夜空に架けた。次に揺れるカーテンのように光り輝くオーロラを創った。
 その幻想的な美しさに、思わず息を呑む。TVの前の人々は慌てて屋外に飛び出し夜空を見上げた。
 まだまだ続く宇宙のイリュージョン。次々に繰り出される閃光のマジックに世界中が時間を忘れた。終盤にはディズニーやジブリのアニメキャラまで精密な立体画像で描き出して、アニメファンたちを歓喜させた。
 どうやらUFOは地球の電波を受信しながら、地球人がどんな演出を喜ぶか、リサーチしていたようだ。なかなかサービス精神旺盛で気の利く宇宙人だと感心させられる。
 そろそろ首が痛くなる(夜空を見上げ過ぎた)二時間を経過した頃、母船のUFOからアナウンスが流れた。

『地球の皆さん、宇宙のイリュージョンをご覧くださりありがとう! さて観覧料は、この惑星の化石燃料三年分でございます』

 化石燃料って、石油や石炭や天然ガスのことか!? 人類の生活に欠かせない化石燃料を三年分も搾取されたら、地球は資源不足で滅亡してしまうじゃないか!!
 勝手に、宇宙からやって来てイリュージョンを観せたくせに……いきなり観覧料をよこせだと? このやり方は勝手に電波を流して聴収料を請求する、某国営放送と同じだと人々は思った。
 その時、母船に向って一人の男が大声を張り上げ抗議した。
「アンタたち! 地球には著作権という法律があるんだ。有名アニメを無許可で使ったら、立派な犯罪なんぞぉー!!」
「ディズニーやジブリのパテント料を舐めんなっ!!」
 みんなイリュージョンに見惚れて、その存在すら忘れていたDr.ヤマダが良いことを言った、まさに正論だ。
 母船はしばらく沈黙していたが、

『そういう法律が地球にあると知らなかった。銀河連合憲章に、その惑星の法律を遵守するという規則がある。謝罪して、観覧料は無料とする。迷惑をかけて申し訳ない。ならば我々は引き揚げるとしよう』

 母船は閃光を放つ小さな球体を小型UFOに戻し回収を始めた。

 飛んでいた謎の球体をDr.ヤマダは虫取り網で捕まえた。それは黄金虫くらいの昆虫で、透明な体の中に発光体があり、いろんな色に変化していた。
《この虫を調教して芸をさせていたんだな。まるで蚤のサーカスじゃないか》
 撤収して、宇宙へ旅立とうとする瞬間、Dr.ヤマダが叫んだ。
「おーい、俺も連れていってくれ! 宇宙に旅立ちたいんだ!」
 その叫び声に母船が空中で停止した。
『我々と共に宇宙を旅したいというか?』
「そうだ! 俺も宇宙船の乗組員になりたい」
『自分の星に二度と帰れないかもしれないが、それでもよいのだな?』
「構わない。銀河の果てをこの目で見たいんだ」
『君のパフォーマンスはユニークだった。では特別に許可しよう』
 UFOの底から光の柱が放射され、その中にDr.ヤマダが吸い込まれていった。そしてTVを観ていた人々が瞬きをした瞬間、巨大UFOはTVの画面から突然消えていた。

 UFOが降ってきた日、地球から一人の男が宇宙へと旅立った。
 その後、その男がどうなったか知る由(よし)もない。果てしない銀河の果てを彷徨っているのかもしれない。そして、いつの日にか宇宙から舞い降りたDr.ヤマダが人類と宇宙人との架け橋となることだろう。

 See you again!




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創作小説・詩

# by utakatarennka | 2019-02-21 20:09 | SF小説

ラボ・ストーリー ②

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   Dr.Yamada file.2 【 遺跡ラーメン 】

 21世紀、南海トラフ大地震による巨大な地殻変動で日本国は海底に沈没した。
 わずかに、海面に残った国土である北海道はR国が支配し、沖縄はC国が領土主張をして取り上げられた。本州では富士山山頂だけが海面に沈まず、そこに『大和民国』と称して、わずかに生き残った日本人たちが住みついていたが……やがて、凶悪な隣国Kの手ですっかり駆逐されてしまい。
 ――ついに日本国は世界地図からも歴史からも消滅してしまった。

 25世紀、再び地球に大規模な地殻変動が起こった。
 それによって海底に没していた日本の領土が再び隆起したのだ。400年振りに海面に姿を現した、“幻の国Japon”に世界中から学者たちが調査のために次々と上陸した。
 この時代、世界情勢は変化して国家は大きく分けて5大陸国がある、アジア、アメリカ、アフリカ、ヨーロッパ、ユーラシアに分かれていた。コンピューターによる情報や流通が進歩したため分割して国を統治する必要性がなくなり、国家を有する利権性も共有されることになった。
 そういう意味で25世紀は世界国家として平和な時代であった。

 “幻の国Japon”調査委員会の隊長であるDr.ヤマダは日本人の血を継承する人物である。
 25世紀、民族間の混血化が進み様々な人種の特徴を優した人種がいるが、Dr.ヤマダ一族は純血日本人との婚姻を繰り返して、誇りある大和民族のDNAを後世に残した。
 Dr.ヤマダにとって幻の祖国、日本領土の遺跡調査は実に感慨深いものであった。
 祖国と領土を失った日本人は放浪の民となり、長い間、世界中を彷徨ってきた。いろんな国で迫害されたり、差別を受けたりして、辛い辛い試練の時代を過ごしてきたのだ。
 最終的にはモンゴル地区に小さな自治区を作って、生き残った日本人たちはそこで身を寄せ合っていたが、実に惨めな暮らしであった。日本の領土に戻ることは日本人にとって悲願であり、渇望だったのである。
 先祖である日本人の遺跡を調査することに、Dr.ヤマダはただならぬ情熱を燃やしていた。
 しかし遺跡といっても長く海水に浸かっている間に浸食されてしまい。建物の跡地ぐらいしか残ってはいない。だが、レーダーを使い地表を細かく調べていくと地下に都市があることが分かった。
 南海トラフ大地震で地下へ行く入口が塞がってしまい、そのまま生き埋め状態となり海底に没した。シェルター装備の地下都市は海水の浸入もなく、完全密封状態のままで残っていたのだ。――それは“幻の国Japon”の文化を識(し)る上で素晴らしい発見だった。

 さて、説明が長くなった――が、いよいよ謎に包まれた『地下都市遺跡』へと調査隊は入って行った。
 メンバーは隊長のDr.ヤマダとその助手が3名、アクロポリス・アメリカやヨーロッパから考古学者2名と地質学者1名、言語学者1名と医師も同行。他に民間団体やマスコミ関係者など数十人と掘削用ロボット3機、アンドロイド2体が参加した。
「みなさん! いよいよ“幻の国Japon”の神秘のベールが剥がされます」
 隊長のDr.ヤマダが興奮した面持ちで隊員たちにスピーチした。
 掘削用ロボットが入口と見られる付近に穴を開けていく。もう少しで地下都市はその全貌を現す。
 ついに入口へ続く穴が開いた、まずアンドロイドが有毒ガスや落盤の危険がないか調べるために内部に入っていった。約3時間後に無事に戻ってきた2体のカメラを解析して中の様子を覗いて見た。
 地下都市は海水に浸からなかったお陰で非常に良い状態で保存されており、ここはショッピングモールと呼ばれる商業地区であったようだ。

 そして隊員たちは『地下都市遺跡』へと降りて行った。
 地下は漆黒の闇だがアンドロイドがサーチライトのように灯りを放って地下都市を照らしてくれた。内部は広いが大地震の衝撃で激しく壊れていた、建物が倒壊して、瓦礫に埋まり、マネキン人形が散乱し行く手を阻む。これを調査するには膨大な時間が掛かるだろうDr.ヤマダは思っていた。
 更に奥へと調査隊は進む、そこで赤い扉の建物を発見した。
 看板と呼ばれる板に文字が書いてある。言語学者の解読によると『ラーメン天国』と読むらしい。
《らーめんてんごく?》ここは教会だったのか!?
 キリスト教ではお祈りの言葉に、『らーめん』と言ったと聞いたことあったが……ほとんど、この時代の人々は無宗教なのだ――。
 建物の中では、どんぶりを持った人骨が数十体発見された。
「Dr.ヤマダ、彼らは死の直前まで何をしていたのでしょう?」
 助手のサトウが質問した。
「ふむ、何か重要なことが行なわれていた様子だが……」
 室内を見回すと、テーブルや椅子が散乱している、そこに人々が座っていたようである。
「テーブルがあるということは集会をやっていた?」
「宗教的儀式を行なっていたみたい?」
「どんぶりを頭に被って祈っていたのかな?」
 三人の助手たちが口ぐちに喋る。
「どうやら、そのどんぶりの中には食べ物が入っていたようだ」
 奥の厨房では大きなズンドウに圧し潰された人骨があった。その手には何かが握られている、それはフロッピーディスクだった。Dr.ヤマダは誰にも見つからないようにポケットにそのFDをそっと隠した。
 そこには未来に伝えたいメッセージが込められているような気がしたのだ。日本人の子孫である自分にこそ、それは託されるべきであろう。――そう直感したDr.ヤマダである。

『地下都市遺跡』調査から帰ったDr.ヤマダはそのFDの解析を始めた。
 それはシェフが自慢のラーメンのレシピを記録したものであった。その謎の食べ物を再現するためにDr.ヤマダは何度々も試行錯誤を繰り返し調理をおこなった。
 ついに完成したラーメンを考古学会で発表したDr.ヤマダは、その美味しさに世界中から大絶賛を浴びた。

 400年の時を経て、日本人の心の味『ラーメン』が25世紀に復活したのだ!




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創作小説・詩

# by utakatarennka | 2019-02-20 20:17 | SF小説

ラボ・ストーリー ①

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   Dr.Yamada file.1 【 夢の格闘者 】

「ずいぶんストレス指数が高いですね。98%もありますよ。放って置いたら大変なことになるところでした」
 白衣を着た怪しげな男は、俺の頭にヘルメットのような器具を被せて、その機械が弾き出した数値を見てそう呟いた。
「やっぱり、そうか……放っていたら、どうなっていた?」
「希死念慮や殺人衝動という危険な行動に出るところです」
「このままだと壊れそうだと俺も思っていたよ」

 俺は平凡なサラリーマンだった。 入社以来ずっと総務の仕事をしてきたが、どういう訳か営業部に配置転換させられた。酒も飲めない、人付き合いも苦手、口下手であがり症、こんな俺に営業は向いていない。
 知らない会社に名刺ひとつで営業するなんて、小心者の俺には到底無理だった。
 営業成績は社内でビリッケツ、鬼の営業部長から「おまえは無能だ!」「この給料泥棒めぇ!」「さっさと辞表を書けっ!」と、みんなの前でいつも怒鳴られていた。
 会社に行くのが苦痛だった。朝起きて会社に行こうとすると腹が痛くなり、下痢になる。
 無理して出社しても、鬼の部長の顔を見た途端に胃がキリキリ痛みだし我慢できない。俺のストレスはもう限界だった――。
 何度も辞表を出そうと書いてはみたが……家のローンや子どもの教育費、今後の生活など考えていたら、どうしても会社を辞めることができない。
 ああ、どうしたらいい? 今日も家を出たが会社にも行けず、ただ街を彷徨っていた。
 フラフラと見知らぬ路地に迷い込んだら、奥の方で看板がチカチカしている。何だろうと近づいてみたら、〔Dr.Yamadaメンタルクリニック〕と書かれた電飾が派手に点滅していた。
 看板はデジタル式で文章が変っていく。

〔ストレス溜まっていませんか?〕
〔スカッと発散させましょう!〕
〔あなたの悩みを、Dr.Yamadaが解決します 。〕

 それらの文字に目が釘付けになった。
 今の俺の苦しみを解決する方法があるのだろうか? 気になって看板の前に立っていたら、白衣をまとった、ひょろりと痩せた中年の男が建物から出てきた。
「ご用ですか?」
「あっ、いや、何だろうと興味が湧いたので……」
「そうですか」
 値踏みするように、ジロジロと俺は観察された。
「お試しだけなら無料ですよ。どうぞ」
 男が手招きをして、その声に曳かれるように後ろを付いて行ってしまった。
 10畳くらいの狭い部屋に医療器具のような機械が何台も置いてある。雑多な感じで、あまり病院という感じがしない、奇妙な診察室だった。
 その男が「私はこういう者です」と名刺をくれた。
 そこには〔 睡眠医学博士 Dr.Yamada 〕と書かれていた。睡眠医学博士? そんな医学があるのか? だとすると、この男は本物の医者かな?
 ちょっと胡散臭い感じがしたが、堂々とした男の態度に縋ってみたいと思うほど、俺の神経は消耗していた。
「まず、検査をしましょう」
 そして診察台と思しきカウチソファーに身体を横たえ、ヘルメットのような器具を頭に被せられた。

 「どんな方法でストレスを発散させてくれるんだ?」
「格闘技です!」
「えっ? 俺は腕っ節には自信がない、喧嘩なんかやったことがないんだ」
 小心者の俺は何を言われても、いつもただ黙って耐えてきた。
「長年、私は夢の研究をしてきました。そして見たい夢を自由に見られる機械を開発したのです。名付けて【スリープメーカー】夢の世界で格闘して、心の憂さを晴らすのです」
「夢の世界で戦うのか? この俺が……」
「はい、あなたに一番ストレスを与えた人物と戦います。大丈夫、絶対に勝つように設定してあります」
 夢で戦うだけなら安心だと俺は思った。
「さあ、【スリープメーカー】のリングへいってらっしゃい!」
 男が機械のスイッチを入れた。――その声に背中を押されるように、強烈な睡魔に襲われて深い眠りに落ちていった。

 気が付いたら、四角いリングの上に立っていた。
 会場には観客がひしめいている。黒いタイツを穿いた俺はプロレスラーだ。レフリーが試合の開始を告げるゴングを鳴らす。と、俺の前に対戦相手が現れた。
 なんと! そいつは俺をイビる鬼の部長だった。
 その顔を見た瞬間、胃がキリキリ痛み出したが……待てよ。――これは夢の世界なんだ。しかも絶対に俺が勝てる設定になっていると聞いたぞ。
 手始めに鬼の部長の腹を拳骨で殴った、すると奴は大げさに痛がってリングに倒れる。その顔をブーツの踵で踏みつけてやった。頭を掴んで起き上がらせロープに向かって放り投げ、反動で戻ってきたところにキックをお見舞いしてやった。
 ――夢の世界とはいえ、俺は圧倒的に強い!
 そして鬼の部長を痛めつけると、ファンの歓声で会場は盛り上がる。現実の世界では小心者の俺だが、夢の格闘技では残酷な暴君なのだ!
 相手に罵詈雑言を浴びせながら執拗なまでに攻撃を加える。鬼の部長の顔が血潮で真っ赤に染まっている。無抵抗な人間を痛めつけるのがこんなに楽しいとは思わなかった。俺ばかり怒鳴りつける部長の気持ちが少し分かった気がする。
 いつも俺をバカにして、みんなの前で恥をかかせる部長に復讐ができて、これは愉快で止められない、腹の底から笑いが込み上げてくる! あはははっ

「やっと目覚めましたか? なかなか起きないので心配でした」
 白衣の男が俺を覗きこんでいた。
「気分爽快だ!」
 晴れ晴れとした顔で俺は目覚めた。
「夢の中で憎い奴をやっつけられて胸がスカッとしたよ!」
「暴力は一番のストレス解消法ですから……ただ【スリープメーカー】は、まだ開発中なのでひとつ問題がありまして……」
「もういい!」
 俺は男の声を遮った。
「よしっ! 気分が良くなったので会社にいくぞぉー!」
 そう言って飛び出して行った。

「――実は、強烈にストレスを感じる相手を見ると、脳が勝手に【スリープメーカー】のスイッチを入れてしまうんですよ」

〔○○市の会社で仕事中に部長の○○さんが、いきなりナイフを持った男に襲われた。○○さんはナイフで数箇所刺されて重体である。犯人は同じ会社に勤める男性で、日頃から被害者と反りが合わず悩んでいたという。逮捕時、犯人は夢遊病状態だったため警察では詳しい事情徴収ができない〕


 その新聞記事を読んだ、Dr.Yamadaは【スリープメーカー】の人体実験が少し早かったことを後悔した――。




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創作小説・詩

# by utakatarennka | 2019-02-19 17:00 | SF小説

米津玄師 ②

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 ■ 米津 玄師 ■ 出典: フリー百科事典 『ウィキペディア(Wikipedia)』

1991年3月10日に徳島県にて誕生し、長らく県内で暮らす。当時は漫画家を志していた。
小学5年生次、当時インターネットで流行していたFLASHアニメーションを視聴し、使用されていたBUMP OF CHICKENの楽曲に感銘を受ける。
中学3年生の末期からMTRを用い、オリジナル曲の制作を開始する。平行してアマチュアバンド「late rabbit edda」を結成、2008年には10代限定ロックフェス第1回「閃光ライオット」へ応募し、デモテープによる1次審査を通過したものの、スタジオでの2次審査は落選した








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 ■ 現在 ■

2018年3月14日に8thシングル「Lemon」をリリース。表題曲はTBS系列ドラマ『アンナチュラル』の主題歌として提供された。TVドラマへ楽曲を提供したのはキャリア初のことだった。
「Lemon」は発売年内にフィジカル、配信にて累計200万セールス超を記録、Billboard JAPAN Hot 100の年間チャートでは単独1位を獲得、2018年度最大のヒット曲となった。
山田智和が監督を務めたミュージックビデオは6月12日にYouTube上での再生回数が1億回、12月までに2億4千万回、翌年2月9日には国内のMVでは初の3億回再生を突破した。
米津の手がけた曲が1億回再生を記録したのは今回で3度目であった。これにより日本人の作詞・作曲者による1億回再生達成回数が秋元康(作詞)を抜いて単独でトップとなった。同曲はSoftbank「白戸家ミステリートレイン『事件のはじまり+リョウマの事情聴取』篇」のCMソングに起用された。

2020年応援ソングプロジェクトに参加。小学生5人によるユニット「Foorin」の楽曲「パプリカ」をプロデュースした。

7月15日、22日および8月5日の3回に渡り、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーがメイン・パーソナリティを務めるラジオ番組「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」(TOKYO FM)にゲスト出演。鈴木敏夫と共に宮崎駿監督について語り合った。

10月27日、28日に「米津玄師 2018 LIVE / Flamingo」を幕張メッセにて開催[48]。公演ではシングル「Lemon」及び、月末に発売を控える「Flamingo / TEENAGE RIOT」の収録曲が初披露された。

10月31日、9枚目のシングル「Flamingo/TEENAGE RIOT」をリリース。
本作はフィジカル発売初週におよそ22万枚を売り上げ、オリコン週間シングルランキングにて、初登場1位を記録した。
「Flamingo」はソニーワイヤレスイヤホン「WF-SP900」CM、「TEENAGE RIOT」はGATSBYのCMシリーズ「GATSBY COP」のテーマソングに起用された。
前者には楽曲だけでなく自身も出演、曲のミュージックビデオを手がけた山田智和が監督する映像内でダンスを披露した。

12月31日、第69回NHK紅白歌合戦に初出場。故郷である徳島県内の大塚国際美術館からの中継で「Lemon」を披露した。テレビ番組に生出演し歌を披露するのはこれが初めてだった。


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# by utakatarennka | 2019-02-18 18:11 | Youtube (ニコニコ動画)