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― Metamorphose ―

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スリーサイズ探偵部 ⑥ 最終話

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                  画像はこちらのサイトお借りしました。http://www.glitter-graphics.com/
  



   Pert.16 ついに真犯人登場か?

「彼女なら君たちの足元で眠っている」
 いつから、そこに居たのか。いきなり根岸先生の声がした。
「何だと!? どういうことだ!」
 語気も荒く、葛西先輩が噛みついた。
「死んでしまったんだよ。いや、殺す気はなかったけど……」
 まるで他人事のように、根岸先生は平然と殺人の告白をした。
「なぜ? どうして? 千夏を殺したんだ!?」
「わたし副業として、海外向けのAVを制作して売っているんだ」
 AVって? エロビデオ、それが教師の副業か!? 信じられない糞野郎だぜ。
「あの日、奥の部屋へ入ろうとしていたところに、彼女が戻って来てね。見られたらマズイんで口止めにAVのモデルにしようとこの部屋に連れ込んだんが、あんまり暴れるんでスタンガンを強めに当てたら、心臓麻痺を起してあっ気なく死んでしまった。まさか死ぬとは思わなかったので、わたしも驚いたよ。あはは……」
「千夏は小さい時から軽い心臓疾患があったんだ……それを……おまえは……チクショ……」
 最後の言葉は涙で絶句した葛西先輩――。
「事件が発覚すると困るんで彼女の遺体をコンクリートの床下に埋めさせて貰った」
「この糞野郎! 千夏を返せ―――!!」
 激昂した葛西先輩が飛び掛かろうとした瞬間!

『ダメ―――! そこを動いちゃダメ!!』
 突然、真美が大声で叫んだ。気を失っているとばかり思っていたのに……。
 その言葉に慌てて飛び退いた葛西先輩だったが、足元を見て驚いた。水で濡れたマットが敷かれ、その下に裸の電線が何本も通っていたのだ。この上に乗ったら確実に感電死させられる。
「チッ!」
 悔しそうな顔で根岸先生が舌打ちをした。
「田村教頭を殺したのもあんたか?」
 今度は俺が質問した。
「ああ、そいつは、わたしの副業のAVの儲けを半分よこせとか言ってきたからね。しかも女子高生とやらせろとか、奈津子先生みたいなビッチは飽きたとか贅沢いうんで、もうウンザリだ。さっき実験がてら、そこで感電させたら死んだよ」
 なんて乱れた教師たちだ! 俺は心底こいつらに嫌悪感を抱いた。
「こんな地下室まで造って何をするつもりだ?」
「ああ、この地下室は偶然見つけたんだ。以前、図書室の床工事をやった時に発見した。戦時中に防空壕として使われていたみたいだった。わたしは学校に内緒で工事をして、秘密の小部屋として使えるように改造したんだ」
「変態教師! 女生徒を連れ込んでイタズラするつもりだったんだな?」
「冗談じゃない! わたしは女には興味ないんだ。AVの撮影はしても触る気はさらさらない。男子生徒ならそそられるが……ね」
 ニヤリと嗤ったヒゲ面が気持ち悪くて鳥肌が立った。
「根岸はゲイだよ! 2ちゃんの書き込みにもそう書いていった奴が何人も居たし、ここを見ろと教えて貰ったURLに飛んだら、ゲイ専門の出会い系サイトだった。そこの掲示板に根岸と思われる人物が『セフレ募集中』と書いているのを僕は見た」
「おや、葛西君ずいぶん詳しいね。いや、正直に告白するとあんな小娘より、わたしは葛西君に興味があったんだよ。だから他校の女生徒と図書館を利用しても何も言わなかった。こっそり、君を見ていたかったからさ」
「ぶっ殺す!!」
 怒り心頭で、真っ赤に紅潮した葛西先輩が飛び掛かろうしたら、ビカッと光って床に倒れた。

「先輩! 大丈夫ですか!?」
 電気ショックで気を失ったようだ。
「ここは電気流れるって知ってたくせにトラップに引っ掛かるんだから……おまえたちには学習能力ってものがないのかね?」
「うるせいっ! この人殺し変態オカマ教師!!」
「大西君、今の教師に対する言動は内申書に響くから……」
 チクショウ! ここから早く逃げ出したいが、足元にそんな危険なトラップが仕掛けられているとなると、動くに動けない。――どうすりゃあいいんだ!


   Pert.17 戦え! 我ら探偵部

「ちょっとでも、そこから動いたら電流のスイッチを入れるぞ!」
 手に持ったスイッチを見せて、俺たちを威嚇する。
「おまえたちはここからは出られない」
「コラ―――ッ! 逃げるなっ!」
「バカな探偵ごっこをした反省会でもやってろ。あははっ」
 笑いながら根岸先生は梯子段を上がっていく。もし、あの梯子を外されたら、俺たちはここから出られなくなってしまう。
 その時、壁に立て掛けてあった赤い自転車を草太が片手で持ち上げた。梯子段を登り切ろうとしていた根岸先生に、その自転車を投げつけたのだ。すごい怪力だ!
 ガンガラガチャ―――ンと、けたたましい騒音と共に根岸先生が落ちてきた。俺たちは、ソレ―――と、ばかりに根岸先生に飛びつき、逃げないように縛り上げた。
 その上、教師面して俺たちに説教たれないよう猿轡も噛ませて置いた。
「高校生を舐めんなよ。警察に通報してやる!」
 あれ? 携帯が圏外だ。 そうか四方をコンクリートで囲われているんもんなあ。これじゃあ、電波が届かないや。――待てよ。だったら葛西先輩へのメールを千夏さんはどこから送信したんだろう?
 草太は気を失っている先輩を担いでベッドに寝かせると、
「僕が外へ出て、警察と救急車を呼ぶよ」
 そう言って、梯子段を上がって行った。

 犯人と、死人と、気を失っている人と、真美と、俺が地下室に残された。
 草太のライトがないのでとても暗い。とにかく真美の元へ行った。
「真美、大丈夫か? ケガないか? 変態教師に何もされなかったか?」
 オロオロしながら、俺は矢継ぎ早に質問を浴びせた。
「絶対に死ぬなよ! おまえだけは失いたくないんだ。いなくなったら……なあ、俺はどうしたらいいんだ?」
「――大丈夫よ。ヒロシこそ血迷ってる感じじゃない」
「そ、そ、そんなことない!」
 たしかに血迷ってるけど、こんな状況だし、誰だって血迷うだろうが……。
「スタンガンで気絶させられて朦朧としている時に、誰かの声が聴こえた『アシモトニ、ワナヲ、シカケテルカラ、ウゴカナイデ……』そう言って教えてくれたのよ」
「へぇ? 声がしたって……」
「うん。まだ若い女の声だったよ」
「いったい誰だろう?」
「ぼんやり影が映ったけど、ツインテールみたい」
「ツ、ツ、ツインテール!?」
 葛西先輩が千夏さんのヘヤースタイルはツインテールだったと言ったよなー。草太が見た女子高生もツインテールだった。まさか、本当に出るのか、ここには幽霊が……。
 その時、白い影がコンクリートの壁に映った。
 倒れている葛西先輩に寄り添うように、ツインテールのセーラー服の女生徒がそこに居たのだ。――茫然と俺も真美もそれを見ていた。
『タクミ……』
 葛西拓巳――タクミって、先輩の名前か。
『ジケンニアッタノハ、タクミノセイジャナイト、ツタエテホシイ……』
 ツインテールの女生徒はそう告げると、スーッと姿がぼやけて消えいった。
「もしかして彼女が千夏さんか?」
「亡くなっていても……葛西先輩を心配して出てきたのね」
「罠を教えてくれた」
「守ろうとしてた」
「美しい愛の力だ!」
 俺と真美は手を握り合って感動していた――ら。

 凄い勢いで誰かが梯子段を駆け下りてきた。警察にはちょっと早過ぎるような……。それは保健室の奈津子先生だった。
 いきなり床に転がされていた根岸先生の髪の毛を掴んで、
「あんた! あたしと田村教頭のアレをネット配信したでしょう?」
「ウグ、ウググ……」
 猿轡されているので喋れない。
「生徒の父兄にバレて大変なことになったのよ。教師クビになったら、どうしてくれるの!?」
 凄い剣幕で奈津子先生が怒っている。てか、身から出た錆だと思うんだが……。
「絶対にAVにしない約束だったのに騙したのね? 何とか言いなさいよ! このオカマ教師がっ!!」
 そう言って、往復ビンタで顔をバシバシ叩いていた。
 殴られて、猿轡が外れた根岸先生が反論する。
「やめろ! この糞ビッチが!! 女教師物はAVでは需要が高いからな。だから盗撮してやったんだ」
 こんな屑に教育されて大人になっていく俺らが……可哀相すぎるぜぇー。
 ああ、そう言えば……体育準備室の窓から見えた、赤い光はビデオカメラを回していたからなんだ。謎がひとつ解けた!
「それより、早くわたしの縛めをほどくんだ」
「えっ?」
 興奮し過ぎて、状況が把握できてない奈津子先生は美人だけど、かなり天然女だ。
「このスイッチなぁ~に?」
 側に落ちていた電流スイッチを拾って、キョトンとしている。
「それを押すな―――!!」
 根岸先生が叫んだ瞬間! バリバリと落雷のような音がして、閃光が二人の教師を包んだ。――俺と真美はなす術もなく、その有様を見ていた。《不謹慎だが、俺は笑いを堪えていた……》これが自業自得ってことなんだと、しっかり学習させていただきました。


   Pert.18 スリーサイズ探偵部+プラス

 
  電撃ショックシーンの直後、けたたましいパトカーと救急車のサイレンが轟いて、草太に案内された警察官たちが地下室に踏み込んできた。
 俺と真美、葛西先輩は無事に警察に保護された。先輩はあの後すぐに気が付いたので大したことはなかったようだ。
 地下室で死んでいる田村教頭を発見して、警察官たちは色めき立った。
 その後、鑑識班が到着した頃には、俺たちは警察で事情聴取されていた。こうなった経緯など詳しく聴かれたが、千夏さんの声については信じて貰えなかった。最後に、危険な事件に高校生が首を突っ込んだことで、お叱りを受けちゃった。体育倉庫で撮った写真も証拠写真として没収されたし。トホホ……。  
 そして、あの破廉恥教師二人はどうなったかというと、重体だが命には別条なく、病院に運ばれ、その後、警察に身柄を引き渡されたようだ。
 ちなみに、根岸先生の家からは学校の女子トイレや更衣室を盗撮したディスクが大量に出て来たらしい! 地獄に堕ちろ、人殺し変態オカマ教師めぇ!!
 根岸先生の供述通りに地下室のコンクリートの床下から、白骨化した西野千夏の遺体が発見された。やっと、千夏さんはみんなの元に還ることができたんだ。
 事件が明るみに出て、千夏さんの失踪事件も解決したので……残念な結果だったけど、やっと葛西先輩も踏ん切りが付いたようだ。登校拒否を止めて、今は登校するようになった。――そして新聞部にも時々顔を出してくれる。

「あん時のヒロシの血迷いっぷりはハンパじゃあなかったよね?」
 俺たち新聞部の部室で、イタズラっぽい目をして、ふいに真美が言い出した。
「そりゃあ、真美は俺のツレだし、生まれた時から一緒だったんだから心配くらいするさ」
「あんなに取り乱すくらい、わたしのことが好きなんだと分かって嬉しかったよん」
「ちゃうわい!」
 口では否定したが、真っ赤になった俺の顔がそれを認めていた。
「おまえに弱みを握られてるし、ホントはどっかへ消えて欲しいくらいだぜぇー」
「弱みって?」
 キョトンとした顔で真美が訊き返した。
「……ほら、そのう、五年生の時に俺がオネショした件だよ」
 俺は声を潜めて言う。ここは新聞部の部室だから――。
「オネショ!?」
 なのに、真美が大声を出した。
「シィィィ―――!」
「ああ、あれね。……思い出したわ。寝ぼけたマー君がトイレと間違えて、ヒロシの布団におしっこしちゃった件ね」
「ぬあにぃぃ―――!?」
「その後、目を覚ましたヒロシの慌てようったら笑える――。ずっと勘違いしてたんだ。急にあたしに対して卑屈な態度を取るようになったのはそのせいだったの? うふふっ」
「俺のトラウマだったんだぞぉー!」
 あれは弟のマサシがやったことか? 今まで弟に罪の意識を抱いていた俺はバカだった! 家に帰ったら、マサシを一発殴ろうと俺は決めた。

「お二人さん、なんの話?」
 草太がこっちを見て、笑いながら訊ねた。
「聞いてくれ! 俺は今まで真美と弟に騙されていたんだぜぇー」
「あらっ! 騙したなんて、人聴きの悪い! ヒロシが勝手に思い込んでいただけでしょう」
「俺の青春を返せ―――!」
「ヒロシのバーカ!」
「真美! おまえもマサシも許さねぇ―――!」
「お二人さん、ケンカはダメです!」
 時々大魔神に変身する、平和主義者の草太に言われた。
『ケンカ、デキルノハ、ウラヤマシーイ』
 新入部員のツインテールにも言われた。
 俺たちスリーサイズには西野千夏さんの姿が見えるんだけど、葛西先輩には気の毒なことに千夏さんが見えないんだ。
 幽霊の千夏さんはタクミが心配なので、まだ成仏したくないらしい。
 そいうことで、我が新聞部に席を置くことになった。新しい部員(幽霊部員)を迎えて、さらに変幻自在にパワーアップしたのだ。

 スリーサイズ探偵部+プラスの活躍に、乞うご期待だぜぇ!


― おわり ―




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   創作小説・詩 
by utakatarennka | 2013-09-25 13:26 | ミステリー小説

by 泡沫恋歌