詩集 瑠璃色の翅 ⑤
【 DREAMER 】
夢想家のわたしは
月に見惚れて
昼間の太陽に
手を翳し目を瞑る
いろんな型の
夢に囚われて
現実の厳しさに
夢が砕けてしまった
禍々しい月日が
粉々に砕いていった
わたしの夢たち
アスファルトの上に落ちていた
水たまりに沈んでいた
誰かのポケットで
小さく固まっていた
そんな夢たちを
今日も集めて歩く
わたしは――DREAMER
夢追い人
【 夜の雫 】
天に向かって 翳した掌
ちっちゃな指の隙間から
見える夜空
月と星 天上を照らす
蒼白く磨ぎ澄まされた星々は
夜の静間に息ずいて
光年の刻(とき)を数える
彗星のように 駆け抜けて
やがて消えていく運命(さだめ)
きっと この星の光は
あなたには届いていない
朧げなる月よ
何故 わたしの心を見ない
もどかしさに身悶えて
星屑がひとつ消えていった
水面に広がる水紋
白く尖った新月のナイフが
心に突き刺さる
今宵の月は哀しくて
翳した掌も 指の隙間も
夜の雫に濡れている
【 針金の未来 】
針金の先端の尖った針が
心に突き刺さって血を流す
薄い膜に覆われた半透明の未来
触れると壊れそうで怖い
漠然と広がる未来は
わたしをいつも不安にさせる
指先に沁み込んだ漂白剤のにおい
こんなもので何も消せやしない
やじろ兵衛のバランスは
微妙な沈黙で保たれている
心はゆらゆら揺れながら
心地よいバランスを探している
進むのが未来なら止まっている
今も未来の断片なんだろうか
誰も知らない未知のステージ
未来は針金のように曲げられる
『 針金の未来 』 まだ構築されていない
その隙間を夢で埋めていくんだ
I demand it!
The future to hope sometime is made
いつか 希望する未来が創られる
【 三日月ナイフ 】
三日月ナイフで
心臓に小さな穴をあける
そこから噴きでた
真っ赤な血で朝焼けを染めたい
滔々と流れる雲も
燦々と輝く星も
形容詞ばかりで
ツマンナイ
刺激が欲しい
パッションが欲しい
三日月ナイフで斬り裂け
ハラワタを抉り出せ
きっと
きっと
きーっと、
待っていれば、
天からミューズが舞いおりて
ストンと、
「霊感」が落ちてくる
――ああ、こんなものかと、
次は、
頸動脈で
ナイフの切れ味を試すのです
【 夢の中へ…… 】
不条理な夢で目覚めた朝
もの憂い倦怠感で
頭の芯がズキズキ痛む
夢とか希望とかそんな言葉で
ちっぽけな人生を飾ってみても
掴めるものといえば
ほんのひと握りの砂だけ
現実をみろ
誰かの声が聴こえた
だから現実って な・に・さ
ここには必要なカードがない
湿った部屋はカビ臭くて
カーテンの色もくすんで見える
無風状態に慣れて心が荒んでい
ヘッドフォンを着けて
現実をシャットアウトする
もう誰の声も聴こえない
甘い砂糖菓子をひとつ
浅い眠りに誘われていく
いつか見た あのシャガールの
蒼い絵の中に溶けこんでしまいたい