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詩集 瑠璃色の翅 ⑥

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 【 風の栞 】

夕暮れの窓辺
瑠璃色の切子硝子の一輪ざしに
梔子の白が映える
夕凪 無風状態になれて
心が弛んできたら
闇が迫る少し前 風が頬を渡る
どこからか声を運んできた

楽しい声 悲しい声
美しい歌声 断末魔の叫び
知らない街の言葉たち
風は旅人
世界中の空を彷徨っている

群青色に染まりゆく
今日という昨日に
新しい栞をそっと差し込む
瞬き 閉じてしまった頁たち
私は大事な思い出を
風の粒子に混ぜて飛ばしてしまった
螺旋を描いて舞い上がっていく

「サヨナラ」と言って
二度と還ってこなかった
大事だけど
忘れてしまいたい記憶もあった
風は知っていたんだ
感傷なんかで振り返らない
さようなら……

天空高く 地を這うように
縦横無尽に飛びまわる
心の頁を捲っていく風よ
その自由さに翻弄されながらも
背筋を伸ばして
立ち向かっていく

未来という栞を
挟む頁を私は探している



 【 メビウスの輪 】

メビウスの輪 
始まりも 終わりもない
時はループして 無限となる

愛することも 生きることも
この世は 何もかも笑える
追っているのは 幻想にすぎない

しょせん 人は独り
そう 完璧に孤独だから
ニヒリストは 絶対に泣かない

メビウスの輪 
喜びもない 悲しみもない
時空の魔女 年齢は永遠なのさ



 【 Empty Sky 】

鉛色の空に佇む
影法師がひとつ
アスファルトに落ちる
希薄な空気を呼吸をして
吐く血痰

地べたを這う風に
ゆらゆらと揺らめいて
逃げ込める隙間を探している

瑕疵な魂は
誰にも祝福されない
愛情の意味も知らずに
ちっぽけな存在を隠すように
隅っこで生きてきた
息を殺して……

灰色の孤独が
骨に滲み込んで
神経組織を浸食していく
すべての視界を遮る

わたしには
何処にも居場所なんかない

心に出来た
大きな洞には
時おり風が抜けて
ヒューヒューと
悲しい声で共鳴するから

この空の広さも
降りそそぐ陽の光も
小鳥の囀りさえ
実感できないままで
老いていく…… 

わたしの瞳には

Empty Sky

うつろな空しか
映らない


もう死んでもいいですか?

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イラスト素材屋「もずねこ」様よりお借りしました。http://mozneko.boo.jp/sozaiframe01.html

 【 手風琴 】

雲が流れて
空が澄み渡る
さわさわと街路樹が揺れて
葉っぱが一枚 宙を舞う
風の歌で季節が変わった

そんな時
優しい音に包まれてたい
晩夏のメランコリー

ぽろろん

音を奏でる
琴線を 掻き鳴らし
掻き鳴らして……
心の絃が揺れる度
美しい音が弾きだされる

ぽろろん

白いサンダル
街の風景が変わる
蛇腹の中に風を閉じ込めて
その鍵盤を指で触れると
柔らかな音を奏でる

手風琴
私は風に恋して楽器になった
過ぎ去る夏に さよならを


   ※ 手風琴(アコーディオン)



 【 レジリエンス 】

誰かの溜息で
紅く染まった紅葉
風に巻き散らされて
紅い絨毯が敷き詰められた
一歩 歩む度に
カサッ カサッ 
と、小さな悲鳴を上げる
その一枚を拾って
空に翳してみれば
紅い残像が
瞼の裏に焼きついた

季節を追うと
遠くへ 遠くへと
逃げていってしまうから
この寂しさは
何処へ捨てにいこうか

静謐な秋の日に
掌の中で光を放つ
朱色の実が甘く熟れてゆく
季節はいく度も再生しながら
真っ白に純化する
気持ちひとつで
寒い季節も越えていけると
折れない心
拳を握り
空を見上げて
雲の行方は風に訊けばいい


 【 楓 】

晩秋の頃
血を吐くように
楓は赫(あか)く染まる
握り拳ほどの肉塊
女は躯(からだ)に楓を孕(はら)んだ
命の蘇生
輪廻転生する魂
春になれば
再び芽吹いて
小さな掌を展(の)ばす


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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-06-27 10:39 | 詩集 瑠璃色の翅