愚詩 = 愚痴 ②
【標語】
カレンダーを捲ると標語が書いてある
『向上する意思があれば道は拓ける』
自信たっぷりのその言葉に釈然としない
テキトーに世間ではそう言うけど
さも正しい事みたいに言い切れる
その根拠は いったい何処にある?
スミマセン! 捻くれ者です
物事ナナメにしか見れません!
だいいち努力なんかしたって
ほとんどの場合が報われないまま
無駄に終って後悔するだけ……
スミマセン! 挫折者です
希望なんか持てません!
くだらない事にムキになって
自分を主張しないと気が済まない
それは器の小さい人間のやる事でしょう?
ハイ! ただの馬鹿です
放って置いてください!
【 凸凹 】
ちょっとしたことで
ああ、自分はダメな人間だなぁー
と 凹(へこ)んでしまうことがある
次々によぎっていく
失敗 恥 屈辱 凹(負)の記憶たち
どこかに 凹(あな)があったら入りたい!
おまけにトラウマスイッチが入って
心が 凹(へしゃげ)て絶望モードになる
部屋の隅っこで 頭を掻き毟りもがく
あああああぁ―――!!
なんとか立ち直ろうと
好きな音楽を聴く お菓子を摘まむ
少しはテンションが凸(あが)りそう
さらに、好きな人のことを想ったり
趣味のことなんか考えたりしていたら
凸凸(うきうき)した気分になってきた
なんて単純な人間なんだろう
わたしの心は振り子みたい
ゆらゆらと いつも揺れている
凹(下降) ⇔ 凸 (上昇)行ったり来たりして
心の振り子は揺れるよ 揺れる
凹(へこ)んだり 凸(ふく)らんだり
凸(躁)なったり 凹(欝)なったり
なんて単純な人間なんだろう
今日もわたしは
居心地の好い心の在り処を探して
心の振り子を揺らし たゆたう
凹(マイナス)から 凸(プラス)思考に
凹(ネガティブ)から 凸(ポジティブ)へ
よ――しっ
チューニングは出来た!
【 カマキリの災難 】
昼下がりの公園
子どもたちが四、五人集まって
わいわいやっている
何だろうかと覗きこんだら
身体が一番でかい男の子が
カマキリを手に持っている
青い立派なカマキリだ
「今から、このカマキリ空を飛ぶでぇー」
大きくかぶり振って
男の子は空高くカマキリを放り投げた
放物線状にクルクル回転しながら
フェンス越しの駐車場へ
落下していくカマキリ
そして見事な着地だ
「ウルトラC!」
何もなかったように
駐車場のアスファルトの上を
ヨチヨチと歩き出した
あんな目に合わされたのに
カマキリは平然としている
昆虫って感情とかなさそうだ
だけどカマキリの仲間に会ったら
「おれなあ、今日、大空飛んだんやでぇ」
「マジか? 俺らの仲間ではお前が初めてや」
「そや、凄いやろ」
カマを構えて自慢しているに違いない
*
華麗に飛べない昆虫カマキリが
初めて蝶々やとんぼのように空を舞った
これは進化の記録として録って置くべき事実だ
たぶん 今日からカマキリは
空を飛ぶための進化のスイッチが入った筈だから
300万年後の地球の空を
カマキリが優雅に舞っていることだろう
その頃 カラスは飛べなくなって
鶏みたいに地べたを這っている
そして 王蟲(オーム)のように
巨大化したダンゴ虫に踏み潰されるのだ
ざまあみろ!
無邪気な午後のひと時と
アホな妄想でした
※ カラスに関する記述は「カラスの勝手じゃない」を参照してください。
筆者のカラスへの恨みが込められています(笑)
ちなみにカマキリは飛ぶんだという意見を多く頂きましたが、
私は飛んでるカマキリを見たことないです。
【 基準 三詩 】
『物差し』
幸せとか、不幸とか
いったい誰の
基準で決めるのですか
その基準となる物差しを
いったい誰が
持っているのでしょうか
あなたですか
神さまですか?
『平行線』
君が唱える正しさと
私が考える正しさは
どこまでいっても平行線
交わらない思考と思想
たぶん 正解は
ひとつではないのだろう
『美人』
女は美人に生まれたら
貴族の称号を
与えられたと同じ
まさに特権階級なのだ
賛美の言葉や
貢物の数々で
男たちを下僕にして
我が世の春を謳歌する
同性に嫉妬されても
不敵な笑みを浮かべて
世の中 美人=正義
この図式がまかり通っている
だが私の知る限り(あくまで)
美人はあんがい
幸せになっていない
どこで人生間違えたのか
汚いボロアパートが
昔は美人だった女たちの
墓場になっているから
不思議だったりする
追記
ただ、
庭の花がきれいに咲いてる家は
それだけで
幸福そうにみえるね
【 蝉 三詩 】
『蝉大合唱』
夏空に響き渡る
蝉の大合唱
耳が汗かき
体感温度3 ℃上がる
『蝉爆弾』
マンションの外階段に
蝉が落ちていた
そっと跨いで通ろうとしたら
突然!
蝉爆弾がさく裂した
ジジジジジ――――!!
そのけたたましさといったら
耳をつんざく
むかっ腹が立つ
階段から蹴り落としてやった
私はテロには屈しない!
『蝉大往生』
腹返し大往生の
蝉の亡骸に
雌伏六年の大望を果たしたか
訊いてみたい
あー、それから……
うちのベランダで
勝手に死ぬのは
どうかやめてください