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by 泡沫恋歌
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夢想家のショートストーリー集 第99話

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   第99話 子どもは天使か、モンスターか?

 子どもが天使なんて嘘!
 聞きわけのないモンスター、それが子ども。
 それを人にすることが育児なのだ。

 いつも仕事で帰宅が遅い俺は、子どもの寝顔を見てから就寝する毎日だった。
 今日も子どもが寝静まった頃に帰ってくると、ダイニングのテーブルで妻が待っていた。
 手に持ったはがきを見せて、「行ってもいいかしら?」と俺に訊く――。それは同窓会のはがきだった。
「一日くらいなら俺が子どもの面倒みるから行っておいでよ」
 優しい夫の顔で俺は答え、その言葉に妻は喜んだ。

 我が家には、五歳の息子と三歳の娘がいる。
 日頃から育児は妻に任せっぱなしで休日くらいしか、子どもの相手をしていない、この俺にできるのか? 
 そのとき深く考えもせず、いつも帰りが遅い罪滅ぼしのつもりに、一日くらいなら何とかやれるだろうと安請け合いしてしまった。

 いよいよ同窓会へ出掛ける日。
 前日にママが出掛けることを子どもたちに言い聞かせておいたが、やはり朝になると三歳の娘は「ママと行く――!!」と玄関で大声で泣き喚いた。五歳の息子も機嫌が悪く、乱暴に玩具に怒りをぶつけている。
 隙をみて、妻は自分の自動車で逃げるように出掛けていった。
 スケジュールの都合で妻は実家に一泊してから帰宅する予定である。ママのいない日、育児に不慣れなパパとやんちゃな子どもたちは無事に過ごせるだろうか? なんだか前途多難な始まりだった。

 忙しなく朝食を食べさせた後、子どもたちを連れて公園にいく。
 休日なので近所のママ友たちはいない、いろいろ話しかけられても面倒なので良かった。子どもたちを遊そばせながら、スマホのゲームに興じていたら、突然、泣き声がした。
 娘が転んでひざ小僧から血を流している。娘を抱きかかえ傷の手当てをするため家に帰ろうとしたら、どこにも息子の姿が見当たらない。
 さっきまで砂場で遊んでいたはずなのに……小さな子どもはちょっとでも目を離すとどこに行くか分からない。名前を呼びながら捜し回るが息子は見つからない。困り果てた俺は泣いている娘をおんぶして、交番にいくことにした。
 背中の娘は「ママー! ママー!」と泣き叫んでいる。すれ違う通行人たちに不審な目で見られるし、まるで俺が幼女誘拐犯みたいじゃないか。一向に泣きやむ気配がない娘にこっちが泣きたくなった。
 ――こういうとき、日頃のスキンシップ不足がたたるのだと肝に命じる。

 歩いていくと、小さな公園があり、そこから賑やかな子どもたちの声が聞えた。
 なんと、その中にうちの息子の姿があった! 公園の中を追いまわし、やっと息子の首根っこを捕まえて、「どうして勝手にいなくなったんだ!?」怒鳴ったら、脅えて泣きだした。
 息子は公園に友だちがいないので、退屈して別の公園に移動したらしい。やれやれ、こっちは誘拐されたんじゃないかと心配したんだから……。
 黙っていなくなった息子も悪いが、スマホを見ていて、子どもたちから目を離した俺も父親失格だろう。

 子どもたちの機嫌をとるために、お昼はハンバーガーショップにいくことに――。
 ここなら気楽に食事ができると思ったのに……甘かった! 娘はジュースをこぼすし、息子は店内を走り回り、お客とぶつかってトレイをひっくり反し、商品を弁償する破目に……。
 娘が急に「おしっこ、おしっこ!」と慌てだすし、息子はキッズセットに付いてる玩具が欲しいと駄々を捏ねる。
 ああ、もう胃が痛くなってきた。こんなことなら、家にいれば良かったと後悔する俺だった。
 頼むから、ちょっとでもいいからじっとしてくれっ!!

 家に帰ってからは、子どもたちの好きなアニメ番組を観せて、大人しくさせるつもりだった。その内、昼寝でもしてくれるだろうとたかをくくっていたら……いつまで経っても寝ないどころか、アニメ番組のことで兄妹喧嘩を始めた。
 まるで猫の喧嘩みたいにギャーギャー騒がしい。ああ~うるさい! こんな時、いつもなら妻がいるので丸投げできたが、今日はそうもいかない。なだめて、なだめて……なんとか静かにさせる。

 夕飯は妻が作っておいたシチューを温める。
 娘は母親を恋しがって「ママいつ帰るの?」そればかり訊いてくる。明日の朝だと答えたらメソメソ泣きだした。まるで妻に逃げられた父子家庭みたいで、俺まで切なくなってきた。
 風呂を沸して親子三人で入る。賑やかな入浴だけど、こうして子どもたちの成長をみるのは親として嬉しいもんだ。そういえば、子どもを風呂に入れるのは久しぶりだった。
 午後八時、絵本を読んで娘を寝かしつけた。息子は玩具で遊んでいたがやっと寝てくれた。
 今日は朝起きて寝つくまで育児という戦争だった。
 いつも帰宅の遅い俺は子どもの寝顔を見て、平穏な一日だと思い、育児の苦労なんて想像できなかった。今まで妻にぜんぶ背負い込ませていたのだと気づいた。そんな俺はまったくイクメンではなかった。
 今日一日、慣れない育児でへとへとに疲れてしまい、いつの間にかソファーで眠ってしまったようだ――。

 翌朝、玄関の方から子どもたちのはしゃぐ声がする。
 どうやら妻が帰ってきたようだ。軽い気持ちで引受けた育児だが、たった一日で妻の苦労がよく分かった。
 やっぱり子どもはモンスターだった。――けれどママに甘える、その姿は天使のように可愛らしく見えるから、子どもは不思議だ。

 子どもは天使か、モンスターか? それは育児する者によって変化する。



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創作小説・詩

by utakatarennka | 2017-09-17 16:35 | 夢想家のショートストーリー集