― Metamorphose ―

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Bone of Eve [蒼白の焔]

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[Another blue rose by *snofs]http://snofs.deviantart.com/art/Another-blue-rose-210307406



   Bone of Eve [蒼白の焔]

『神は彼の肋骨を一本取り、そこを肉で塞いだ。
そして神はアダムから取った肋骨で女性を作り、彼女をアダムの元に遣わせた。』

                              ― 創世記2章21-22節 ―


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ミケランジェロ・ブオナローティによるイヴの創造



 この世で唯一、愛する女性である君が夫の僕を裏切っているなんて信じたくなかった。
 結婚した時、妻は処女だったんだ。男は僕しか知らない純粋無垢な身体だったのに……あの男が妻を汚した。浮気していたなんて、嘘だ! そんなこと信じられない。
 ああ、僕はいったいどうしたらいいんだ!?
 頭の中が錯乱して、感情の波が津波のように僕に襲いかかってくるが……ここは冷静にならなければいけない。
 怒りで君を激しく詰問してしまっては、二人の関係が取り返しのつかない事態になりそうだ。絶対に君を失いたくない! この期に及んでも、僕は君を深く愛している。きっと世間知らずの君は、あのチャラ男に騙されているのだ。
 この状況をよく考えろ! 頭の中でいろいろ思考を廻らし、やっと落ち着き取り戻した僕は、まず『河合幹也(かわい みきや)』という男を知るためにネットで検索してみた。
 なるほどタレントシャフなのでTwitterやFacebookなどに奴の情報がいっぱい載っている。FC2の河合幹也のブログも読みにいったし、2ちゃんねる掲示板での奴の噂も調べにいった。
  ウィキペディア(Wikipedia)にはプロフィールも載っている。

 河合幹也、三十二歳、離婚歴二回、現在独身。最初の妻との間に子どもが二人。
 板前だった父親と旅館で仲居をしていた母親、その夫婦の二男として生まれる。小学生の時に酒乱でDVだった父親と母親が離婚する。その後、母親に育てられるが、中学の時に母親が再婚したが、義父と折り合いが悪く高校の時に家を出て、料理店で働きながら卒業する。
 その後、容姿をいかしてバーテンダーやホストなどを経験するが、料理人の夢が捨てきれず、調理師専門学校でフランス料理を学ぶ。専門学校を卒業後、ホテルなどの厨房で三年ほど働くが、本場フランスで修業をすると退社して留学する。
 フランスに二年在住して、五つ星ホテルで修業したという本人の弁だが、そのホテルの所在は不明である。帰国後、財界人にパトロンがおり、銀座に『Rose bleue』というフランス料理のお店をオープン。女性客のクチコミなどで有名になる。現在はタレントシェフとして、奥様向きワイドショー番組で人気を博す。
 プライベートでは独身なので若手タレントとの交際で、二股三股と話題が尽きないプレイボーイだ。有名サッカー選手の妻との不倫報道で週刊誌の記事を賑わせたこともある。

  おおよそ、『河合幹也』という男の実像が見えてきた。
 これらの情報から分かったことは、彼が貧乏な生い立ちで小さい頃から苦労をしてきたこと。努力家だが、人を利用してのし上った成り上がり者で狡猾な男のようだ。女にだらしなく、モラルや倫理観もない外道!
 間違いない、この男に妻は騙されているんだ。夫が資産家だと知って、妻をたぶらかせて金を巻き上げようという魂胆だろう。
 この男を排除せねば……チラッと僕の頭にある男の顔が浮かんだ。
 政治家としての父の裏の仕事をずっと仕切ってきた男だ。やくざだが、父やこの僕にも忠誠を誓っている。最強の番犬である黒崎という裏秘書――。
 彼に相談しようかと思ったが、彼が絡んでは一滴の血も流さずには事が終息しないだろう。

 ところが、僕の背中を強く押す画像を河合幹也のFC2の日記で見てしまった。さすがに頭に血が上った!
[僕の愛車、プジョー208GTi カラド・ブルーの青いボディを『僕のRose bleue』って呼んでいる。]
 最近、購入した青い208GTiの前でポーズを取る、河合幹也の気障な写真が載っていた。208GTiといえば、うちの妻も最近購入したが、日記の日付を見るとほぼ同じ時期だ。もしかしたら、あのディラーもこの男の紹介なのかもしれない。
「あの車はRose rougeなのよ!」
 君は赤い208GTiをフランス語の赤い薔薇だと言って、譲らなかった。
 河合幹也の208GTiは青い薔薇で、君の208GTiは赤い薔薇ってことか? 
 青と赤の薔薇、なるほど、そうか……。君は河合幹也とお揃いの車を持ちたかったんだね。夫である僕以外の男と同じ物を持つことで親近感、いや愛情を深めたかった訳か……これには、心底、僕は傷ついたよ。
 背中から“蒼白の焔”がゆらゆらと立ち上る。

  今すぐ、河合幹也に消えて欲しい。――自分の携帯からある男に連絡を入れた。

 僕は家に帰って、妻から208GTiのキーと携帯電話を取り上げた。
 君と河合幹也の逢瀬と連絡に使われていると思われる二つのものを、ひと言の説明もなく、「今すぐ、渡しなさい!」と強い口調で言った。日頃、怒ったことのない僕が真剣に怒っている様子に君は驚き脅えて、しぶしぶ……二つのものを渡した。
 その後、大声で泣き出した。まるで狂ったように、子どもが駄々をこねるように泣き叫んで僕に抗議した。こんな取り乱した君を見たのは初めてだった。――そして、君もこんなに怒っている僕を見るのは初めてだろう。
 念のため、携帯の受信記録と送信記録を調べたが僕以外のものはなかった。オカシイと思うがあの男の記録は全削除しているのだろう。家の電話からでは履歴が残るので連絡し難いだろうし……たぶん、そっちは使っていないと思う。
 泣いて抗議しても、頑として僕が応じないので、君は怒って夫婦の寝室から自分の荷物を乱暴に運びだし、ゲストルームに運び入れて、そこを自室として使い始めた。しかも僕に入って来られないよう、部屋に鍵を掛けるようになった。
 まさか最愛の妻から、こんな邪険な仕打ちを受けるなんて思いもしなかった。
 深夜、ひとり寝のベッドの中で僕は涙を流した。あの男さえ現れなければ、僕たち夫婦は今でも仲睦まじく幸せに暮らしていたのに……悔しさと憎しみで歯軋りをした。――こうなったのは悪魔のような男、ぜんぶ河合幹也のせいだ! 
 とにかく、このままでは置かない……しばらく、会社を休んで君を監視していようと思う。

 そして河合幹也、彼にはとっておきのお仕置きを用意しておいた――。



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画像素材 Free Images 2.0 by:onigiri-kun様よりお借りしました。http://free.gatag.net/   




創作小説・詩

by utakatarennka | 2018-04-10 12:20 | 恋愛小説