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働かされすぎた人が「自殺」を選ぶ本当の理屈

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ニュースソース ↓

『働かされすぎた人が「自殺」を選ぶ本当の理屈
 長時間労働がトリガーとなり段階的に進む』
https://toyokeizai.net/articles/-/243003



「またか……」という思いでニュースを聞いた人も多かったことでしょう。

9月下旬に複数の大手新聞が報じた、三菱電機の社員2人の過労自殺。2014年から2017年にかけて、自殺した2人を含む技術職・研究職の社員5人が、長時間労働が原因で精神障害や脳疾患を発症して労災認定されたといいます。

大手広告代理店の電通に勤務していた高橋まつりさんが自殺したのが、2015年12月25日のことでしたが、その2カ月後にも、別の過労自殺が起きていたのです。

なぜ、日本からは過労自殺がなくならないのでしょうか?


 遺書には、必ず謝罪の言葉が残されている

拙著『残念な職場』でも触れていますが、「過労死」と「過労自殺」は同義ではありません。過労死等防止対策推進法で、“等”という文字が入っているのもこのためです。

過労死は長時間労働と直結していますが、過労自殺はその他のストレス要因の影響が大きく、長時間労働はあくまでも引き金です。

1.業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡

2.業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死
(※脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害も、死に至らなくとも「過労死等」に含まれる)

                    (過労死等防止対策推進法より)


過労死という言葉を最初に使ったのは医師の上畑鉄之丞氏(2017年没)ですが、「過労自殺」という言葉は過労死問題に長年取り組んできた川人博弁護士による発案で、1998年の著書『過労自殺』の中で初めて使われました。

1995年、川人弁護士の古くからの友人が突然失踪。3カ月後に自殺体となって発見されました。その後の調べで、友人の職場では同時期に3名もの男性社員が自殺していたことがわかり、これをきっかけに川人弁護士は「過労自殺」が疑われる事案に本格的に取り組むようになったそうです。

過労自殺をいろいろと調べていくと、「長時間労働、休日労働、深夜労働」などの過重労働による肉体的負荷に加え、納期の切迫やトラブルの発生などからくる精神的なストレスがかかっていたことが判明。

そこで川人弁護士は、

「仕事による過労・ストレスが原因となって自殺に至ること」

を過労自殺と定義し、過労自殺の多くは、うつ病などの精神障害に陥った末の自殺であるとしたのです。

また、過労自殺した人が残す遺書には、必ずといっていいほど謝罪の言葉が残されていると、川人弁護士は指摘します。

「もう何もやる気の出ない状況です。会社の人々には大変な心配、迷惑をかけている」

「すいません。何も感じない人だったら、このようなことはしなかったと思います」

「なさけないけどもうダメだ。ごめんなさい」

etc……。

彼らを苦しめているのは“職場”なのに。なんと悲しい言葉なのでしょう。

1996年3月には、高橋まつりさんと同じ電通の男性社員(24歳)が自殺しました。それが仕事の過労によるものと認められたことをきっかけに、“過労死110番”に自殺相談が相次いだため、97年10月18日に“過労自殺110番”を設置したところ、1日だけで146件も相談が殺到します。

それまでのストレス研究が、

・職場の心理社会的要因や長時間労働とストレス症状の関係(心臓疾患、脳疾患、精神障害)

・精神障害と自殺との関係


と分けていたのを、川人弁護士は「過労」という言葉で職場と自殺を結び付けました。


 長時間労働が直接「過労自殺」を生み出すわけではない

長時間労働は過労自殺の引き金になります。ただ、それ以外の要因、精神を病むようなストレスの影響が大きいので「長時間労働だけ」を規制しても過労自殺の撲滅にはつながりません。

過労自殺する人の多くはうつ傾向やうつ病などの精神障害を発症しているとされていますが、長時間労働と精神障害との直接的な関係は「ない」とする研究結果も、少なくありません(量的調査による統計的な分析)。ただし、“overwork ”、すなわち「自分の能力的、精神的許容量を超えた業務がある」という自覚と精神障害との関係性は多数報告されています(藤野善久ほか「労働時間と精神的負担との関連についての体系的文献レビュー」)。

そして、overwork には、実際の「長時間労働」が影響を与えることがわかっています。

つまり、

「長時間労働」⇒「overwork」⇒「精神障害」⇒「過労自殺」

という具合に、長時間労働は「過労自殺」のトリガーになる絶対的に悪しき要因なのです。


 「overwork」に苦しむ


「1日20時間とか会社にいると、もはや何のために生きてるのか分からなくなって笑けてくるな」(高橋まつりさんのツイート)

「今から帰宅だが、どう見積もっても時間が足りないぞ? 苦手なことがあると効率が悪くなりすぎるな…」(同上)

「体が痛いです。体がつらいです。気持ちが沈みます。早く動けません。どうか助けて下さい。誰か助けて下さい」(大手飲食店勤務の26歳の女性社員)

「家帰っても全力で仕事せないかんの辛い……でもそうせな終わらへんよな?」(英会話学校の22歳の女性講師)

彼女たちのつぶやきを振り返れば、いかに彼女たちが“overwork ”に苦しんでいたのかがわかるはずです。

新国立競技場の建設工事の現場監督だった男性社員(当時23歳)が、2017年3月に失踪し、遺体で発見された事件がありました。男性のひと月の残業時間は200時間を超え、ほぼ1日拘束(例:朝7時に出勤、翌日朝8時に退勤)が3回、休日は5日だけ、という過酷なものでした。友人に「もたない、やめたい」などと話していたそうです。

また、自殺した現場には、「突然このような形をとってしまい申し訳ございません。身も心も限界な私はこのような結果しか思い浮かびませんでした」と書いたメモも見つかっています。

重い責任、過重なノルマ、達成困難な目標設定などにより精神的に追いつめられ、長時間労働で肉体的にも極限状態に追い込まれる。過去10年で10倍も増えた過労自殺(未遂者も含める)をなくすには、「長時間労働」に加え、「職場のストレス要因」の軽減も必要なのです。


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by utakatarennka | 2018-10-26 19:58 | 健康

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